子どもと社会をつなぐ、起業家精神教育で問題発見力と協働力を育てる

合同会社アルボル 代表 福井 朋子氏

合同会社アルボルは、小学生から高校生を主な対象に、起業家精神教育と金融教育を軸とした独自の教育プログラムを展開しています。目指すのは、問題を発見し、自ら考えて判断し、周囲と協働しながら新しい価値を生み出していく力を、子どもの頃から育むことです。「子どもと社会をつなぐ」という理念のもと、学校教育と社会で求められる力との間にある隔たりを埋めるための教育に取り組んでいます。

受験の先にある「社会で生きる力」を育てる

――現在の事業内容について教えてください。

当社には、大きく3つの事業があります。1つ目は、小学生から高校生を対象としたスクール形式の教育事業です。起業家精神教育や金融教育を、年齢に応じた独自のプログラムとして開発し、提供しています。

2つ目が研修事業です。学校に出向いて授業を行うほか、企業の従業員向けには、成果や業績に対して当事者意識を持ち、主体的に行動できる人材を育てる研修を実施しています。

3つ目は教材販売です。当社が独自に開発した教材やプログラムを、起業家精神教育のスクールを始めたい方や学校に提供しており、探究学習やキャリア学習で活用していただくケースもあります。

――教育で特に重視している力は何でしょうか。

当社が見据えているのは、受験の先にある社会です。高校や大学への進学がゴールではなく、社会に出たときに、自分の力で稼ぎ、生きていけることが大切だと考えています。

そのために重視しているのが、いわゆる非認知能力です。問題を発見する力、解決する力、周囲と協働する力、判断力や決断力、そして失敗から学び、前に進むレジリエンス力を育てています。

私にとって、学歴よりも重要なのは、社会に出たときに「今、何ができるのか」です。学ぶ力そのものは一生必要だと考えています。一方で、偏差値や学校名だけではなく、目に見えない力を育てることが大切です。

「人と違うは褒め言葉」一人ひとりの価値を見つける教育

――教育事業に込めている思いを教えてください。

私は、自分に自信を持てる子どもを育てたいと思っています。スクールで特に大切にしている言葉が、「人と違うは褒め言葉」です。

人と同じである必要はありません。むしろ、人と違うからこそ新しい価値が生まれ、イノベーションにつながると考えています。自分にはどのような価値があるのかに気づき、その価値を世のなかにどう提供していけるのかを考えてほしいです。

企業人として抱いた危機感から「教育を変えれば社会は変わる」へ

――教育事業を始めたきっかけを教えてください。

私は大学卒業後、液晶や半導体関連のメーカーに勤めてきました。勤務歴は約25年になります。現在もその企業に役員として籍を置いており、5年前に子どもの教育事業を立ち上げました。

きっかけは、企業で人材に向き合うなかで感じた課題でした。言われたことはきっちりやるものの、それ以上はやらない人と、自分で考えて主体的に動ける人に二極化していると感じていたのです。

1on1の面談などを通じて働きかけても、仕事を生活や収入のための手段として捉え、仕事を通じて何を実現したいのかという目標を持っていない人も多くいました。このままでは、企業や日本社会そのものが変わっていかないのではないかという危機感を持ったことが原点です。

――そこから、なぜ子どもの教育に取り組もうと思ったのでしょうか。

私は、もっと若いときから「自分が主体的に動けば未来を変えられる」ということに触れる必要があると考えました。

同じような課題を抱える経営者の方も多く、「教育を変えれば社会は変わる」と考えるようになったのです。働くことにワクワクしたり、大人になったときに成し遂げたいことを描いたりできる子どもが増えれば、社会も変わっていくと思っています。

私が掲げている経営理念は「子どもと社会をつなぐ」です。学校で教わることと、実際に社会で必要になる力には大きな隔たりがあると感じています。一企業人として社会の第一線で働いてきたからこそ、社会で求められる力を子どもたちに伝え、その間をつなぐことが私の役割です。

一人で抱え込まず、同じ志を持つ人と「協働」する

――事業を進める上で、人との関係で大切にしていることは何ですか。

私は「協働」を大切にしており、一人でできることもあれば、一人では解決できないこともあると考えています。そのときには仲間を巻き込み、複数人で力を合わせながら目標を達成していくことが必要です。

これは子どもたちにも伝えています。私自身が事業を進める上でも同じです。すべてを一人でできる必要はなく、自分にない専門性を持つ方と協力しながら実現していけばいいと考えています。

現在も、今後の事業に必要なノウハウを持ち、私と同じ志を持ってくださる方との関係づくりを進めているところです。

高校生の進路を「大学合格」で終わらせず、その先の社会までつなぐ

――今後、特に力を入れていきたいことを教えてください。

当社はこれまで、特に小学生向けのプログラムを強化してきました。小学生は経験や知識がまだ少ない分、頭が柔らかく、大人では思いつかないような発想やひらめきが生まれるため、イノベーションを生み出す力を育てる上で、とても面白い時期だと感じています。

一方で、これから力を入れたいのが、高校生を対象とした大学進学を見据えたキャリア教育です。高校生は大学進学を考えるなかで、自分の将来と向き合う時期だと考えています。「将来何をしたいのか」「そのために何を学ぶのか」を1本につなげて考えられるようにしたいです。

――高校生には、具体的にどのような支援を考えていますか。

当社では、総合型選抜入試も意識しつつ、大学合格だけをゴールにはしたくないと考えています。

私は企業人でもあるので、高校生のうちからインターンシップや職場体験を通じて企業や社会人と接し、実際の社会を見る機会をつくりたいです。その経験をもとに、将来どのような職業に就きたいのか、どのような業界で自分の価値を発揮したいのかを考えてもらいます。

その上で、目指す将来を実現するためにどの大学で何を学ぶべきなのかまで一緒に考えていきたいです。大学の先にある社会まで見据えて支援できることが、当社の強みだと考えています。

好奇心を原動力に、やったことのない世界へ踏み出す

――仕事から離れる時間は、どのように過ごしていますか。

私にとって、いい仕事でいいパフォーマンスを出すために欠かせないのが、いい休息です。仕事自体は大好きですが、休みの日はできる限り外に出て体を動かし、頭をリフレッシュさせています。

また、やったことのないことへの挑戦も大切です。私はマラソンが苦手なのですが、現在はランニングをしていて、5年後にフルマラソンを走ることを目標にしています。42.195キロを走った人が「世界が変わる」と言う、その感覚を自分でも知りたいという探究心からです。

これからも、探究心や好奇心、ワクワクする感覚を人生のなかで大切にしながら、事業ともしっかり向き合っていきたいです。

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