保護者と職員、子どもたちが幸せになれる園へ――手厚い保育から広げる地域支援のかたち
一般社団法人あやとり 代表 坂本 光氏
一般社団法人あやとりは、0~2歳児を預かる定員12名の小規模保育園「あやとり保育園」を運営しています。保護者の負担軽減や手厚い人員配置を大切にしながら職員が無理なく働ける環境づくりにも注力し、さらに子ども食堂や赤ちゃん食堂など、園の枠を越えた取り組みにも力を入れているのが特徴です。本記事では、代表の坂本光氏に、保育への想いや組織づくり、今後の展望などについて伺いました。
保護者にも職員にも余裕を生む、手厚い保育体制
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
0~2歳児のお子様を対象とした、定員12名の小規模保育園を運営しています。小規模ならではの環境を生かし、お子様一人ひとりに目が届く保育と、保護者の方に寄り添ったきめ細かな対応を強みとしています。
なかでも特に注力しているのは、保護者の方の支援です。日々の負担をできる限り軽減するための工夫に加え、子育てや園選びに関する相談にも丁寧に対応しています。当園の利用者に限らず、問い合わせをいただいた方と一緒に園を探すようなケースもあるなど、保育サービスの提供だけにとどまらない支援を大切にしています。
――保育の体制で特に力を入れていることは何でしょうか。
人員を手厚く配置することです。必要とされる配置基準以上の保育士を置き、お子様方を細かく見守れる環境を整備しています。
職員の人数に余裕があれば、保護者の方にも安心して預けていただけますし、保育士一人ひとりの負担も抑えられます。その結果、子どもの小さな変化まで目を配りながら、ゆとりを持って保育に向き合えると考えています。
現場監督から保育士へ――理想の環境を自らつくる
――保育の道へ進んだ経緯を教えてください。
工業高校を卒業後、ハウスメーカーに入社し、現場監督として働いていました。その一方で、小さい頃から保育園の先生になりたいという夢を抱いていたんです。団地で育ち、年上の子が年下の子を見るような環境が身近にあったこともあり、子どもと関わることが好きでした。
現場監督として4年ほど働いた頃、上司との会話をきっかけに、改めて保育の道に進むことを考えるようになりました。そこで夢にもう一度向き合うことを決め、地元へ戻って保育園で働いたのち、短大に通って保育士資格を取得しました。
――法人を立ち上げたきっかけは何でしたか。
保育士として現場で働くなかで、人手不足や残業、持ち帰り仕事など、保育現場が抱える課題を目の当たりにしたことがきっかけです。そうした環境に疑問を感じ、「子どもに手厚く関わりながら、職員にも十分な人員を配置できる保育園をつくれないか」と考えるようになりました。
既存の環境のなかで理想の保育を実現することに難しさを感じたからこそ、自分で環境そのものをつくろうと決意し、法人を立ち上げました。
――経営判断では、何を大切にしていますか。
私は非常に慎重なタイプですので、直感だけで物事を決めることはほとんどありません。徹底して調査し、計画を立て、客観的に実現できるかを判断します。
園を立ち上げる際にも、人口や候補地について調べ、交通量まで確認しました。判断が必要なときほど情報を集め、ロジックに基づいて考える――それが私の基本的なスタイルです。
業務の可視化と人間性を重視した組織づくり
――職員が働きやすい環境をつくるために、どのようなことを意識していますか。
定時退勤や有給休暇の取得を実態として定着させることです。制度を掲げるだけで終わらせないために、職員一人ひとりの業務量や進捗を細かく管理しています。
具体的には、誰がどの業務を担当し、どこまで進んでいるのか、期限内に完了できるかを日常的に確認しています。業務が集中している場合には、ほかの職員へ再配分するなど、組織全体で負荷を調整する仕組みです。こうした進捗管理には、現場監督時代の経験も生かされています。
さらに、業務効率化の手段としてAIも積極的に活用している点もポイントです。保育に関する書類作成などに取り入れ、手書き業務を減らすことで作業時間を短縮し、職員が本来の業務により多くの時間を充てられる環境づくりを進めています。
――どのような人と一緒に働きたいとお考えですか。
最も重視するのは、人間性です。スキルや得意不得意以上に、相手の立場を考え、周囲に自然と気を配れる人と一緒に働きたいと考えています。
例えば、保護者の方が疲れていれば声をかけ、職員が悩んでいる様子であればさりげなく気遣えるような人です。特に保育は、子どもの小さな変化にも気づくことが求められる仕事ですので、自分の都合だけを優先せず、相手の状況を捉えて行動できる姿勢が重要だと思っています。
園の枠を超え、地域や家庭を支える存在へ
――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
子ども食堂を始め、今後は赤ちゃん食堂にも挑戦したいです。離乳食づくりや、「子どもが食べてくれない」といった悩みを抱える保護者の方に対して、食事について相談できる環境をつくっていきたいと考えています。
また、YouTubeやSNSを通じた発信も、さらに強化していく考えです。さらに、今後は
少子化によって保育園の運営そのものが難しくなる可能性も感じているため、保育園とは別の事業を展開し、そこで生まれた収益を保育にも還元できる仕組みも構想しています。
――これからの経営で実現したいことは何ですか。
目指しているのは、お子様、保護者、職員、そして経営する側も含め、関わる人すべてが幸せになれる環境をつくることです。誰かに利益や価値を還元することで、それが巡り巡って自分たちにも返ってくる、さらに生まれたものを周囲へ還元していく – そういった好循環を生み出したいと考えています。
今後、新たな事業を展開する際にも、単に収益を得るだけではなく、職員や保護者にとって福利厚生のような価値を提供できる形にしたいです。保育園という枠にとどまらず、さまざまな事業や地域支援をつなげることで、関わる人たちに還元できる仕組みを広げていきたいと思っています。
そうした循環を一つずつ形にしながら、これからもみんなが幸せになれる経営を追求していきたいです。