五感で味わう「真の創作」――80種以上のレシピと生米シフォンが拓く、人生を創る挑戦
株式会社KONAYUKI 代表取締役 前川直子 氏
離婚、借金、貯金ゼロからの再出発。そこから生まれたのが、グルテンフリー・ノンオイルの「粉雪シフォン」でした。自身の人生を立て直すために始めた挑戦は、やがて多くの女性の自立を後押しする事業へと発展しています。本記事では、株式会社KONAYUKI代表の前川直子氏に、事業の原点や理念、組織づくり、そしてこれからの展望について伺いました。
粉雪シフォンという事業の現在地
――現在の事業内容について教えてください。
私は、米粉を中心に、そして2024年に開発した「生米や玄米から直接作る」革新的なお米シフォンを軸として、講座運営とブランド展開を行っています。最大の特徴は、ノンオイル・グルテンフリーでありながらも、驚きと感動を生む“ふわじゅわ”な食感にあります。
この配合は、誰かの模倣ではなく、数えきれない失敗と実験から生まれた「感覚の結晶」です。現在、メニューは80種類以上に広がり、季節の野菜やフルーツを活かした創作レシピを次々と生み出しています。単なるお菓子作りではなく、五感で味わう「作品」として、食べる方の記憶に残る体験を届けています。
――他のスイーツとの違いはどこにあるのでしょうか。
単なる機能的な健康スイーツではない点です。粉雪シフォンを学んだ方々は、「こんなシフォンは食べたことがない」「人生の鍵になる」とおっしゃってくださいます。私が大切にしているのは「真の創作」です。レシピの数字を真似ることはできても、そこに込められた記憶や願いといった「目に見えない部分」こそが、誰にも奪えない価値になります。この技術と哲学を広めることで、生徒さん自身が誇りとやりがいを持てるスイーツビジネスを築けるよう導いています。
――現在の運営体制について教えてください。
現在は、技術を伝えるだけでなく、共に成長する「本部制」へと移行しました。本部認定講師とともに、全国、そして海外の受講生を育てる体制を整えています。かつては「自分が我慢すれば丸く収まる」という間違った平和主義で失敗したこともありましたが、今は顧問弁護士と共に規約を整備し、プロとしての責任の所在を明確にしています。技術だけでなく、ウェブ集客や写真講座、動画制作などのコンサルティングも含め、トータルで自立をサポートしています。
離婚・借金から経営者へ──転機と再構築
――これまでのキャリアの原点を教えてください。
原点は、2013年の離婚と貯金ゼロからの再出発です。20年間続けた保育士の仕事には誇りがありましたが、経済的な不安は常にありました。そんな中、子育てをしながら夢中になった「手で作る楽しさ」が私を救ってくれました。
2014年、自宅でパン教室をスタートし、その後、より奥深いシフォンケーキの世界へとシフトしていきました。2019年には米粉に特化し、2020年にはオンライン教室を開始。
そして2023年12月8日、株式会社konayukiを設立しました。この歩みのすべてが、今の私の原動力です。
――米粉シフォンに特化したきっかけは何だったのでしょうか。
多くの方が取り組んでいる教室業のままでは、自分自身を立て直すことはできないと感じ、方向転換を決意しました。もともと趣味でシフォンケーキを作っており、生地に柄を入れるなど試作を重ねていました。
差別化を図る中で、「世の中にまだないものをやろう」と決めたのが米粉シフォンです。小麦ではなく米粉、グルテンフリー、ノンオイルという形に挑戦し、独自配合を確立しました。
2019年に米粉へ特化してからは、活動が一気に広がりを感じました。「こんなシフォンは初めて」と言っていただけるようになり、商品に手応えを感じました。ただ、その広がりと同時に、経営者として向き合うべき課題も見えてきました。
――経営者として大きな転機はありましたか。
大きな課題となったのは、認定制度の崩れでした。信頼して育成した方が独立し、粉雪の名を使わず活動されるケースもありました。規約の甘さと、自分の未熟さを痛感しました。
そこで顧問弁護士を迎え、規約を整備し、本部制へと再構築しました。仕組みを整えることの重要性を学び、経営者としての覚悟も生まれました。
離婚と借金が出発点でしたが、その出来事があったからこそ、自分の人生を自分で切り開く決意ができました。転機の積み重ねが、今の私のキャリアを形づくっています。
「一人で背負わない」組織づくりへ
――組織運営で大切にしていることは何ですか。
組織運営で重視しているのは、感情ではなく「仕組み」で支えることです。苦労や失敗も含めて共有できる関係性を土台にしながら、それぞれが個性を活かせる役割を明確にしています。
認定講師たちとは、本部制のもとで責任と権限を分担し、「一人で背負わなくていい」本部制を整えました。
誰か一人の頑張りに依存するのではなく、全員が同士として価値を届けていく組織を目指しています。
――メンバーとの関わりで意識していることはありますか。
「伝えたから終わり」にせず、苦労や悩みといった過程を共有し合える関係性を大切にしています。Zoomでの様子から少しでも不安を感じれば個別に連絡を取りますが、それは単なるフォローではありません。共に痛みを分かち合い、知恵を出し合うためです。
かつての私は、トラブルを恐れて本音を隠し、自分さえ我慢すればいいという「間違った平和主義」の中にいました。しかし、それでは真の信頼は築けず、組織も成長しないと痛感しました。だからこそ今は、綺麗な部分だけでなく葛藤も含めてさらけ出し、対話を通じて互いの本質を理解することを何より大切にしています。
私たちは、「誰が一番か」を競う「陣地合戦」のような組織ではありません。それぞれが自分の役割で輝きながら、同志として価値を届けていくチームでありたいと考えています。私が本当に伝えたいのは、「一人で背負わなくていい」ということです。それはメンバーへのエールであり、かつてすべてを抱え込んでいた私自身への誓いでもあります。
本部認定講師という頼もしい仲間と共に、支え合い、共に青春できる環境を広げていくこと。それが、今の私が果たすべき経営者としての使命だと考えています。
実店舗という“象徴”をつくりたい
――今後の展望について教えてください。
粉雪シフォンに関わると、こんな未来があるんだと実感できる場所をつくりたいと思っています。それが実店舗です。
オンラインで学び、開業研修を受けるだけで終わるのではなく、実際に店舗運営を体験できる場を持ちたい。学べるだけでなく、体験でき、夢を具体的に描ける場所です。画面越しではなく、シフォンの香りや空気感を感じながら、「自分にもできるかもしれない」と思ってもらえる空間にしたいと思っています。
大きな店舗ではありません。一人で運営できる規模のシフォン専門店です。豪華な設備や大資本がなくても、自分の手でここまで形にできる。その姿を示すことが、これから独立を目指す人たちの希望になると信じています。私自身が実践者として立ち続けることに意味があると考えています。
――その夢を実現するための課題は何ですか。
最大の課題は、粉雪シフォンが持つ「真の価値」を、より多くの方に正しく届けるための認知拡大です。
80種類以上のレシピ、生米・玄米から直接作る技術といった目に見える強みはもちろん、その根底にある「人生を創る」という哲学まで含めて発信していく必要があります。
一過性のブームで終わらせるのではなく、健康と感動が共存する新しいスイーツ文化を、本部制という仕組みで広げていくことが今の挑戦です。
――最終的に目指している未来は何でしょうか。
粉雪シフォンという名のもとに、この「ふわじゅわ」な感動体験を世界中に届けたい。しかし、目指しているのは、商品が広まることだけではありません。
この技術を学んだパートナーたちが自立し、それぞれの地域で輝きながら「信頼の連鎖」を生み出していくこと。その循環が広がっていく未来です。
今後は、地域資源を活かした第6次産業型の店舗展開や、就労支援の場づくりにも取り組んでいきます。シフォンケーキ作りを通じて、「自分の人生は自分で創っていける」と確信できる人を増やしたい。
そしてその先にあるのは、世界中に「豊かな人生の波紋」を広げていくこと。それが、私の最終的な願いです。
プロとして「自分を整える」という仕事
――リフレッシュ方法について教えてください。
法人化の手続きを後回しにしてしまうほど自分を追い込み、体が悲鳴をあげるまで働いていた時期がありました。首が固まり限界を感じたとき、「私が止まっては、この価値を待っている人に届けられない」と気づいたのです。
今では、ジムでの筋力トレーニングやヨガを、経営者としての大切な仕事の一部と捉えています。汗を流して思考をリセットすることで、また純粋な心で創作に向き合えるようになります。
雑貨屋巡りで“余白”を楽しむ時間も、新しいレシピのインスピレーションにつながる大切なひとときにです。
――「人生を創る場所」であり続けるために大切にしている価値観や原動力は何ですか。
私を支え続けてくれた両親への感謝は、今も変わらない原動力です。そしてもう一つは、受講生たちの未来が変わる瞬間に立ち会えること。
「焼き上げるのはシフォン。でも育てているのは人の未来」この想いが、私の軸です。
離婚、貯金ゼロ、人間不信――多くの挫折を経験しました。それでもゼロから挑戦を形にできたからこそ、誰かの背中を押せる存在になれたのだと思っています。
この「人生を創作する喜び」を、これからも粉雪シフォンという一皿に乗せて、届け続けていきたいです。
――最後に、「粉雪シフォン」を通じて、社会に最も伝えたいメッセージは何ですか。
私たちが提供しているのは、単なるおいしいシフォンケーキではありません。本当に届けたいのは、創ることの喜びです。
レシピを真似ることはできます。しかし、その裏にある試行錯誤の時間や、誰かを想う気持ちは、誰にも奪うことのできない価値です。
シフォンケーキ作りという表現を通じて、一人ひとりが自分の人生を自由に、そして力強く創っていける社会を目指しています。
粉雪シフォンという一皿から、世界中に豊かな人生の波紋を広げていく。それが、私がこれからの人生をかけて果たしていく使命です。