三﨑智弘氏が描く“必要とされ続ける存在”になる経営――事業開発アウトソーシングの本質
ビーディーラボ株式会社 代表取締役 三﨑 智弘氏
ビーディーラボ株式会社は、事業開発・営業・人事企画や採用業務をアウトソーシングで支援する会社です。三﨑氏は新卒以来一貫して事業開発に携わり、独立後は“必要な期間だけ必要とされる”契約形態で企業の成長を支えてきました。本記事では、独立の経緯や経営判断の軸、時代のトレンドとの向き合い方、そして今後の展望について伺います。
目次
事業開発を外部から支えるという選択肢
――現在の事業内容と、支援している領域について教えてください。
当社は、事業開発のアウトソーシングを行っています。全国的にもあまり多くない形態だと思います。
企業が成長していく過程では、「新規事業に挑戦したい」「海外に進出したい」「今の業務が忙しくて新しいことに手が回らない」といった課題が出てきますよね。そうした場面で、社内に任せられる人材がいないケースは少なくありません。
私はその部分を、クライアントの一員としてハンズオンで担います。テストマーケティングを行い、係数を取り、事業計画を引き、採算が合わないなら撤退を提案する。軌道に乗るなら投資や組織化のフェーズへ進める。必要に応じて採用や仕組み化まで関わります。
全体を丸ごと担当することもあれば、営業企画だけ、採用だけといった部分支援もあります。創業7年で、およそ20社ほど支援してきました。
――どのような業界・テーマのご相談が多いのでしょうか?
現在は6社の事業開発を支援しています。最近多いのはサイバーセキュリティや医療DX関連です。「AI」に紐づく案件も増えています。
時代のトレンドと重なる領域が中心になっている印象ですね。結果として、変化のスピードが速い分野に関わる機会が多いと感じています。
偶然の連続が導いた独立という道
――独立に至った経緯を教えてください。
もともと独立願望はありませんでした。
40歳のときに、事業開発以外のことをやってみようと思い、AIが話題になり始めたタイミングでデータサイエンス分野に転向したんです。ただ、それが肌に合わなかった。「転職は失敗だったな」と感じていました。
そんなとき、以前お世話になった会社から「戻らないか」と声をかけてもらったのですが、同じことを繰り返す気がして踏み切れなかったんです。すると「仕事を振るから独立したらどうか」と提案されました。
やりたいことが見つかるまでフラフラしようと思い、2020年にフリーランスとして独立したというのが独立の経緯です。その2年後には法人化もしましたが、今もほぼ一人でやっています。
――経営者になることに対して、当初はどのように考えていましたか?
正直に言うと、自分は向いていないと思っていました。
「世の中をこう変えたい」という強いビジョンがあるタイプでもないですし、理想のプロダクトを作りたいという情熱型でもありません。ただ、誰かのやりたいことを形にするのは昔から得意でした。
新卒から一貫して事業開発を任せてもらい、それが楽しかった。今振り返ると、「誰かの夢を実現すること」を仕事にするのもひとつの在り方だったのだと感じています。
「必要とされるかどうか」で測る経営判断
――経営判断の軸になっている価値観は何ですか?
私の契約は、クライアント側が「必要なくなったらいつでも切れる」という前提で成り立っています。いわば、価値がなくなれば即終了という世界です。
人は基本的に、必要なものにしかお金を払いません。だからこそ、売上や契約継続は「自分が必要とされているかどうか」の結果だと受け止めています。
もし売上が落ちたり、契約が減ったりすれば、それは提供価値と需要がずれているサインになります。そのときに「この事業を続ける意味はあるのか」「自分は何を変えるべきか」「そこまでしてやるべきことなのか」と自問する。
常に“必要とされているかどうか”と向き合うこと。それが経営判断の軸になっています。
――成果を出し続けるために意識していることはありますか?
まず前提として、すべての契約は3カ月更新です。結果が出なかったり、見通しが立たなければ終了するという条件を最初から提示しています。緊張感のある関係性の中で仕事をしています。
だからこそ、相談を受けた段階で「この順番で進めれば実現できる」という具体的なイメージが湧く案件しか引き受けません。新卒以来ずっと事業開発をやってきたので、勝ち筋が見えるかどうかは比較的早い段階で判断できます。
結果として、契約を打ち切られることはほとんどありません。独立当初は以前の上司や同僚が仕事を紹介してくれましたが、その後は支援先からの紹介が広がり、7年間ほぼ増収増益で続けてこられました。
成果を出すことが信頼を生み、その信頼が次の仕事につながる。その循環を崩さないことを常に意識しています。
ご縁がつないだキャリアのターニングポイント
――これまでのキャリアで転機になった出来事を教えてください。
一番大きなターニングポイントは、新卒で入った会社で事業開発のポジションに配属されたことです。
キャリアの最初から事業開発に携われたことで、ある種のスタートダッシュが切れました。そこで経験を積めたことが、その後の仕事の土台になっています。
もうひとつは、エムスリー時代にお世話になった方から「仕事を出すから独立したらどうか」と言っていただけたことです。あの一言がなければ、今の形にはなっていなかったと思います。
自分の強い意志というより、与えられた機会が転機になってきました。
――周囲との関係性は現在の仕事にどう影響していますか?
振り返ると、自分で道を決めてきたというより、ご縁に導かれてきた感覚が強いです。
私は「これをやりたい」と強く主張するタイプではありません。ただ、目の前に降ってきた仕事には全力で向き合う。その姿勢を続けてきた結果、周囲の方々が次の機会を用意してくれました。
独立後も、昔お世話になった方や、その方の紹介でつながった方から仕事が広がっています。今の事業が続いているのも、人との関係性の延長線上にあるものだと感じています。
「組織を持たない」という経営スタイル
――採用や人材育成についてはどのように考えていますか?
今の時点で、人を増やす必要性は感じていません。
事業開発ができる方であれば、自分で独立できると考えています。そのため、構造的に大きな組織を持つモデルではないのかもしれません。
仮に、支援先の事業を引き継ぐなど明確なテーマがあれば、組織を考えることもあるでしょう。ただ、「何をやるか」が決まらない状態で「どんな人と働きたいか」を語るのは難しいですね。
トレンドとどう向き合うか――次の産業への視点
――今後の展望や目標について教えてください。
これまで20年以上、朝から晩まで仕事中心の生活を続けてきました。土日も含めて働くこと自体が好きなので、今後も生涯現役でいたいと考えています。
そのためには、継続的に仕事をいただき続ける必要があります。結局のところ、それは結果を出し続けることに尽きます。信頼や信用は一度得たら終わりではなく、成果によって更新されていくものだと思っています。
ですから目標はシンプルで、これから20年、30年と、必要とされ続ける存在でいること。派手な拡大よりも、信頼を土台に結果を出し続ける人間でありたいと考えています。
――これからの課題と、その対策についてどのように考えていますか?
これまで7年間続けてこられたのは、お世話になった方々が仕事を振ってくださったことに加えて、関わってきた領域がDXやAI、サイバーセキュリティといった時代の流れに乗っていたことも大きいと感じています。
ただ、そのトレンドはこれから確実に変わっていきます。同じ場所にとどまっていれば、必要とされなくなる可能性もある。そこが一番の課題です。
これからは、次に事業開発が求められる産業や領域との接点をどう作るかが重要になります。そのためには、新しい分野で挑戦している企業や人とのネットワークを意識的に広げていく必要があります。
例えばインバウンド領域などはコロナ後に観光客が戻り投資も進んでいる一方で、実行できる人材が不足しているという話を聞きます。興味はありますが、今の自分にはそのルートや人脈がありません。
だからこそ、これからは「次のブーム」が生まれる場所との関係性をどう築くか。その土台づくりに取り組まなければならないと考えています。
人から学び、仕事に活かす――価値観とリフレッシュの源泉
――尊敬している方や、影響を受けたことを教えてください。
特定の一人を挙げるというより、これまで一緒に働いてきた方々それぞれから影響を受けています。
どんな人にも「すごいな」と思える部分があると感じています。私は、その“すごい部分”を見つけるのがわりと得意なんです。そして、それを自分の中に取り込む。いわば、良いところを盗む感覚ですね。
経営の仕方や意思決定のスピード、交渉の進め方など、場面ごとに学ぶポイントがあります。それを自分の仕事に応用してきました。
特定のカリスマに憧れるというより、関わる人全員から少しずつ吸収する。その積み重ねが、今の自分を形づくっているのだと思います。
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
時間に追われずに仕事をすることが一番のリフレッシュです。
平日の日中は予定がほぼ隙間なく入っています。予定に追われる感覚が強いので、休みの日に自分のペースで提案書を作ったり、整理を進めたりする時間はむしろ心地いいですね。
やりたくない仕事は受けないという前提もありますし、必要とされなくなれば身を引けばいい。その自由さがあるからこそ、大きなストレスを感じることはありません。
静かな時間の中で仕事を片付け、「全部終わった」と思えた瞬間に、すっと気持ちが軽くなります。それが私にとってのリフレッシュです。