“めんどくさい”を技術で解決する――株式会社あぐてくが描くフィジカルAIの未来
株式会社あぐてく 代表取締役 新井陽介氏
AI技術の進化が加速する中、株式会社あぐてくは「フィジカルAI」という領域に着目し、スマート農業や食品産業への導入支援を進めています。代表を務める新井陽介氏は、学生起業家として組織づくりにも挑戦しながら、AI顧問事業やDX支援など複数の事業を展開。根底にあるのは、「人のめんどくさいをなくしたい」というシンプルな想いです。本記事では、新井氏に現在の事業内容や創業の背景、組織づくり、今後の展望について伺いました。
フィジカルAIで“物理世界の自動化”に挑む
――現在取り組まれている事業について教えてください。
現在は大きく3つの事業を展開しています。1つ目は、フィジカルAIをスマート農業や食品工場など、食産業に導入する支援事業です。2つ目はAI顧問事業で、中小企業経営者や一人経営者に対して、AIの活用支援やDX導入支援を行っています。さらに、AI秘書のような形で、営業タスクやスケジュール管理、バックオフィス業務などをAIで効率化する提案もしています。3つ目は学生向けの就活イベントなど、人材に関する取り組みです。
特に現在の主力はAI顧問やAIコンサルティング事業です。中小企業ではDX推進が進む一方で、外注費が数百万円規模になることも少なくありません。そこで、AIツールを活用し、自社で業務改善やシステム構築ができる環境づくりを支援しています。
――フィジカルAIとはどのような技術なのでしょうか。
簡単に言うと、物理世界をAIで自動化する技術です。例えば自動運転では、カメラやセンサーで周囲を認識し、AIが分析した結果をハンドルやタイヤに反映させて車を動かします。そうしたセンシング技術とAI、IoTを組み合わせたものがフィジカルAIです。
現在は、こうした技術をスマート農業や食品産業に導入しています。農業は環境条件が複雑で、導入難易度が非常に高い分野ですが、だからこそ挑戦する価値があると考えています。
“めんどくさい”から始まったAIへの没頭
――AIに強く興味を持ったきっかけを教えてください。
もともとかなりの“めんどくさがり”なんです。学生時代からChatGPTをかなり早い段階で使い始めていて、大学の課題や事業計画などもAIを活用していました。いろいろなAIツールを試していく中で、パソコン上の作業はかなり自動化できるようになったんです。
ただ、途中で「パソコン作業だけじゃなく、物理世界のめんどくささも全部なくせないか」と考えるようになりました。料理を作ることも、移動することも含めて、生活のあらゆる面を自動化したいと思ったんです。そこでIoT技術やセンサー技術に触れ、フィジカルAIという領域にたどり着きました。
――会社の理念やビジョンについても教えてください。
日本を支える基幹産業の“めんどくさい”をフィジカルAIでなくしていきたいと考えています。特に人手不足の解決は大きなテーマです。
まずはスマート農業から挑戦しています。農業は導入難易度が非常に高く、乱数も多い業界ですが、そこを解決できれば建設業や製造業など、他業界にも展開できると思っています。自分自身、農学と工学を融合する分野を学んできた背景もあり、そこに強い可能性を感じています。
“自由”を求めて選んだ起業という道
――経営の道に進もうと思った理由は何だったのでしょうか。
自分の中で大きかったのは、「自由に生きたい」という感覚です。ただ、単純な自由というより、自分が学びたいことを自由に学べる環境を持ち続けたいという想いが強かったんです。
大学に入ればもっと自由になれると思っていましたが、実際には授業や単位、人間関係など、さまざまな秩序が存在していました。その中で、自分は会社に所属する働き方よりも、自分で事業をつくり、自分の意思で動ける生き方の方が合っていると感じました。起業は“キラキラした経営者になりたい”からではなく、自分に合った生き方だったんです。
――組織づくりではどのようなことを意識していますか。
現在は19人ほどのメンバーがいますが、全員が同じ理由で集まっているわけではありません。エンジニアは技術への興味が強く、営業メンバーは事業の成長性や可能性に惹かれているなど、それぞれ視点が違います。だからこそ、「なぜこの事業をやるのか」を伝え続けることを大切にしています。
実際、エンジニアメンバーから「代表という肩書きが欲しいだけじゃないのか」と言われたこともありました。ただ、自分の中には“ものづくり”への想いも、社会課題を解決したいという想いも本気であります。組織づくり自体も、一つのものづくりだと考えています。そうした想いを正直に伝え続けた結果、メンバーの離脱なくここまで来ることができました。
AI時代の先に描く“テーマパーク”という夢
――今後の展望について教えてください。
短中期的には、AIやDX支援でキャッシュポイントをつくりながら、将来的なフィジカルAI事業につなげていきたいと考えています。今はAI導入支援が市場ニーズとして非常に大きいですが、いずれ競争が激化し、淘汰も進むと思っています。その中で、より難易度の高いフィジカルAI領域に早くから取り組んでいることが、将来的な強みになると考えています。
組織面では、自分がいなくても事業が回る体制づくりが課題です。営業や技術部門が自走できるよう、仕組み化を進めています。現在は営業メンバー4人が交流会や展示会、「LinkedIn」などを活用しながらリード獲得を進めていますが、今後はより再現性の高い営業体制を構築したいと考えています。
そして、長期的には“テーマパークを作りたい”という夢があります。テーマパークには、人を楽しませること、人とのつながり、歴史に残る場所をつくることなど、自分が求めている幸福感が詰まっていると感じています。
AIが発達していく時代だからこそ、最後に価値を持つのは人と人とのつながりだと思っています。将来的には、そうした幸福を肌で感じられる事業をつくっていきたいですね。