相続の不安に寄り添い、地域で支える仕組みをつくる――行政書士AFPしゅくわ事務所が描く資産承継のかたち
行政書士AFPしゅくわ事務所 代表 宿輪徳幸氏
行政書士AFPしゅくわ事務所は、相続分野に特化して相談や手続きを行う事務所です。行政書士としての専門性に加え、お金に関する知識も備えながら、単なる手続きにとどまらず「相続の設計」に力を入れている点に特徴があります。代表の宿輪徳幸氏は、異業種で長年働いたのち、50歳を過ぎてから資格取得に挑戦し、独立を果たしました。現在は個人事務所として相続支援に取り組む一方で、「信託ながさき」という団体の代表も務め、地域に根ざした資産承継の仕組みづくりを進めています。本記事では、宿輪氏に事業への思いや創業の経緯、今後の展望について伺いました。
相続に特化し、手続きだけでなく“設計”まで支える
――現在の事業内容について教えてください。
事業としては、相続に関する分野を専門に取り組んでいます。行政書士の仕事は幅広く、許認可を中心に手がける方も多いのですが、自分自身は行政書士になる段階から「相続をやろう」と決めて資格を取ったため、その分野に特化した形です。
相続の相談では、お金の問題が非常に大切になります。ただ、その部分は行政書士の勉強だけでは十分ではないため、別の資格も取得し、二つの資格を活かしながら対応しています。単なる手続きだけではなく、相続全体をどう組み立てていくかという設計の部分に力を入れているのが特徴です。
――どのような方に相談してほしいと考えていますか。
相続税が発生するような大きな資産を持つ方は、もともと税理士とのつながりがあることが多いと思います。一方で、実際には相続税が関係しないケースのほうが多く、そうした方々にとっては、まず最初に相談できる窓口が必要です。
また、相続で問題になるのは、必ずしも金額だけではありません。親子間の関係性や、それまでの経緯が大きく影響することも多いものです。税金の計算だけではなく、そうした事情も踏まえながら全体をまとめていく必要があるため、これまで専門家との付き合いがなかった方にとって、相談しやすい存在でありたいと考えています。
会社員生活を経て、50歳から挑んだ新たな道
――独立に至るまでの経緯を教えてください。
もともとは工業系の学校を卒業し、最初は工場に勤めていました。ただ、大きな会社の中で自分の仕事が全体に与える影響が見えにくく、もっと自分の好きな道で働きたいという思いが強くなり、趣味でもあったオートバイの業界に入りました。
オートバイの会社は本社としては規模が大きくても、個々の店舗は5、6人で運営します。店長の裁量によって店の業績も大きく変わるため、そこに大きなやりがいを感じていました。本来であれば定年までその道で働きたかったのですが、50歳を過ぎても単身赴任が続き、家族と一緒に暮らしたいという思いが強くなりました。年齢的に一般的な転職は難しいと考え、自分で手に職をつけるしかないと判断したのです。
――なぜ相続分野を選ばれたのでしょうか。
少子高齢化が進む社会の中で、これから相続を手がける人がもっと必要になると感じたことが大きな理由です。実際に勉強を始めたのは50歳になってからでした。もともと理系寄りの学びをしてきたので、法律分野は決して得意な土台があったわけではありません。それでも、これから必要とされる分野だと考え、行政書士の資格を取得し、相続を扱うための準備を進めて独立しました。
信託の普及を通じて、認知症や空き家の課題解決へ
――現在、特に力を入れている取り組みについて教えてください。
今は「信託ながさき」の活動に力を入れています。相続の対策には遺言や生前贈与、保険の活用などさまざまな方法がありますが、その中で「信託」は知っておくべき制度だと考えています。ところが長崎では、その仕組みを知る人や扱える人がまだ少ない状況です。そこで、地域の専門家と一緒に団体をつくり、普及に取り組んでいます。
この取り組みの背景には、高齢化と認知症の問題があります。本人が元気なうちに契約を整えておけば、その後に認知機能の低下があっても、家族の中で財産管理を進めやすくなります。不動産の管理や資産承継の面でも有効であり、社会的な課題の解決につながる仕組みだと感じています。
――今後の事業展開や課題についてはいかがですか。
事業展開としては、長崎県内にこだわって取り組んでいきたいと考えています。相続や財産管理は、やはり近くの専門家が近くの人を支えることに意味があります。そのため、県内の専門家が連携しながら、地域の中で仕組みを浸透させていく方針です。
現在の大きな課題は、この分野を担える人材を増やすことです。団体では毎月勉強会を開き、参加者に学んでもらう場を設けています。自分自身、始めた年齢が遅く、長く続けられる時間にも限りがあります。だからこそ、同じ考え方を持って地域で支えてくれる人を増やし、安心して託せる仕組みをつくっていきたいと思っています。
50歳からの挑戦が示す、仕事の意義と向き合う大切さ
――仕事以外でのリフレッシュ方法について教えてください。
以前はマラソンが好きで、50歳から本格的に走り始めました。フルマラソンにも取り組み、最長では100キロのレースに出た経験もあります。ただ、現在は膝を痛めて人工関節を入れており、以前のようには走れていません。今後は回復の状況を見ながら、自転車に挑戦したいです。
――最後に、経営者やこれから起業を目指す方へメッセージをお願いします。
仕事である以上、利益を追求することはもちろん大切です。ただ、それだけではなく、社会的な意義のある仕事を見つけることができれば、やりがいは大きく変わってきます。自分が社会にどう貢献できるのかを考えながら仕事を組み立てていくことで、単なる利益追求ではない面白さが生まれるのではないでしょうか。