取材の力で地域の魅力を可視化する。いろえんぴつ・大田原氏が描く、旭川発の挑戦
いろえんぴつ株式会社 代表取締役 大田原 裕希 氏
広報代行、インタビューメディア「カラキャン」の運営、そして旭川市と連携したキャリアセミナー事業。いろえんぴつ株式会社は「取材」を軸に、企業や地域に眠る魅力を引き出し、発信している会社です。その根底にあるのは、大田原氏の「地元を良くしたい」という強い思いでした。会社の現在地から創業の背景、組織づくり、そしてこれから挑みたい未来まで、お話を伺いました。
目次
隠れた魅力を見つけ、これまでにない新たな体験を届ける
——現在の事業内容について教えてください。
事業は大きく三つあります。一つ目が広報の代行、二つ目が自社で運営しているインタビューメディア「カラキャン」、三つ目が北海道旭川市からの委託事業であるキャリアセミナーです。
キャリアセミナーでは、これから在宅ワークや副業に挑戦したい方に向けて、Canvaの使い方や営業活動の考え方など、本当に最初の一歩になる内容をお伝えしています。
——会社の強みはどこにあるとお考えですか。
一番の強みはインタビューです。ライティング自体はAIでもできる時代になっていますし、実際に私たちもAIを使うことはあります。ただ、人の話を聞いて、その人の心を動かす一次情報を引き出すのは、やはりインタビューだからこそできることだと思っています。
これまで前職も含めて300社以上の経営者の方にインタビューしてきた経験があるので、広報やPRというよりも、まずはその人や企業の本音や魅力を聞き出すことを大事にしています。
——理念やミッションについて教えてください。
掲げているのは「隠れた魅力を見つけ、これまでにない新たな体験を」という言葉です。企業の皆さんが当たり前だと思っていることの中に、実は大きな魅力が隠れていることがよくあります。
そうした魅力を発信することで、転職や就職のきっかけになったり、「こういう働き方があるんだ」と新しい気づきにつながったりする。それも一つの新たな体験だと思っています。
地元の子どもたちにも、いろいろな企業や働き方があることを知ってもらいたいという思いを込めています。
地元への思いと、会社に頼りきれないと知った経験が原点になった
——この仕事を始めたきっかけを教えてください。
きっかけは、二つあります。一つは、新卒で入った一社目がコロナ禍で倒産したことです。そのときに、会社はずっと守ってくれる存在ではないのだと痛感しました。
もう一つは、前職でメディアの立ち上げに関わり、インタビューをしていく中で、企業や経営者の方が自分たちでは当たり前だと思っていることこそ、本当は大きな魅力なのだと感じたことです。
アットホームな雰囲気や意思決定の速さなど、本人たちにとっては普通でも、他の会社にはない価値であることがたくさんありました。その魅力をきちんと伝えられていないことが、入社後のミスマッチにもつながるのではないかと思ったんです。
——なぜ起業しようと思われたのですか。
もともと地元を盛り上げたいという気持ちが強くありました。大学でも地方創生を学べる学部に進み、いろいろな地域を見てきた中で、個人事業主ではできることに限界がある、やるなら法人として取り組まなければいけないと感じたのが起業のきっかけです。
特に地方ではキャリアの選択肢が少なく、地域の中にある会社や業種にも偏りがあります。自分に合わないかもしれないけれど、その地域に住んでいるからそこに入るしかない、という状況もあると思います。
だからこそ、まずは選択肢があることを知ってもらいたい。そのためにインタビューを通じて、いろいろな会社や働き方を届けていきたいと思いました。
——社名「いろえんぴつ」に込めた意味は何でしょうか。
企業を白いキャンバスにたとえたときに、私たちが取材という手段を使って、いろいろな色に変えていきたいという思いがあります。その色は、チラシになったり、バナーになったり、記事になったりします。
そうした発信の広がりを「色」で表現して、いろえんぴつという社名にしました。もともとは英語の社名も考えていたのですが、前職までずっと一緒に仕事をしていた同期から「親しみやすくて柔らかい感じが合っているから、日本語の方がいい」と意見を貰いました。
そういった周囲の意見や、自分なりの考えなどをふまえ、最終的にひらがなの「いろえんぴつ」になりました。
インタビュー1000件達成と、地域に人が集まる場づくりを目指す
——今後の課題について教えてください。
直近の課題は、自社メディア「カラキャン」のインタビューを1000件達成することです。ただ、今は運営をほぼ一人で担っていて、インタビューして、記事を作って、確認してもらって、バナーを作って、掲載して、お知らせしてと、かなり工程が多いので、一人では限界があります。
そこで今、地元の大学と連携し、学生に地元企業へのインタビューに関わってもらえないかという話を進めています。4月から新しく地方創生系の学部ができる学校で、インターンなのか授業なのかという形で、一緒に取り組めればと考えています。
——これから挑戦したいことは何ですか。
長期的には社員を入れていきたいですし、旭川市でコワーキングスペース兼イベントスペースのような場をつくりたいと思っています。小さい子どもがいても利用しやすく、仕事もしやすい、地域の皆さんが集まれる場所をつくりたいです。
さらに、5年以内にアイス屋さんもやりたいと思っています。妹夫婦が北海道の幌延町で酪農をしていることもあり、一次産業の人手不足や若手不足も身近な課題として感じています。
北海道は食がおいしいと言われる一方で、牛乳や野菜などの廃棄も多いので、その課題解決につながる形で、自分の好きなアイスを仕事にしたいと思っています。
散歩と御朱印集め、一人カラオケで気持ちを整える
——リフレッシュ方法や趣味について教えてください。
毎日30分から1時間くらい散歩をしています。インタビューの仕事は体が疲れるというより、いろいろな方の話を受け取るので脳が疲れる感覚があります。だから散歩をしてリフレッシュするようにしています。
趣味は御朱印集めです。出張先でも、時間があれば神社に行って御朱印をいただいています。また、一人カラオケも好きです。人と行くのではなく、一人で3時間歌いっぱなしにするのがリフレッシュになっています。
経営者の皆さまへ、自分の思いを伝えるきっかけとして
——最後に、読者へのメッセージをお願いします。
経営者の方は仕事を依頼する機会は多いと思いますが、改めて自分の思いや今の考えを伝える機会は意外と少ないのではないでしょうか。従業員への感謝の言葉も、恥ずかしくて伝えられていないことがあると思います。
そういう思いを持っているのに、うまく言葉にできない、伝えるのが苦手だという方こそ、ぜひ声をかけていただけたらうれしいです。フラットにお話しいただきながら、その企業さんの魅力を一緒に発信するお手伝いをしていきたいと思っています。