地球温暖化防止を見据え、日本製の水素発生機を追求する――M&Kテクノロジーが描く実用化への道
株式会社M&Kテクノロジー 代表取締役 矢田 直之 氏
M&Kテクノロジーは、水素発生機の製造と水素吸引サロンの運営を手がける会社です。代表の矢田氏は、大学で水素の研究に20年間取り組んできた経験をもとに、日本製の水素発生機づくりに挑戦してきました。その根底にあるのは、地球温暖化防止への強い思い。水素を「地球の環境を保全できる燃料」と捉え、その可能性を社会に広げようとする歩みには、一貫した信念があります。今回は、事業の背景や経営に対する考え方、今後の展望について伺いました。
地球温暖化防止を理念に据えた事業
——現在の事業内容について教えてください。
水素発生機を製造している大学発ベンチャー企業であり、現在は水素吸引のサロンも運営しています。
水素は燃えるガスですが、石油や石炭などの燃料と違って、燃焼してもCO2が出ないのが大きな特徴です。水素の場合、燃焼によってできるのは水蒸気ですので、地球温暖化に寄与しない燃料になります。そうした水素(水素・酸素燃焼)を実用化したいと考え、大学在職時代から研究を続けてきました。
実際に2008年には、ビニールハウスの暖房に使う実験も行っております。ただ、その規模の水素発生機を自分でつくるのは簡単ではありませんでした。
そこで国産の水素発生機を探して購入したのですが、国産と称して売られていた機械が海外製だったという経験を二度しました。それなら本当の日本製をつくろうということで、学生と一緒に開発したのが、今の水素発生機です。
——会社の理念やビジョンについてお聞かせください。
理念は地球温暖化防止です。地球上の生物を救うため、という思いでやっております。化石燃料の価格は情勢によって大きく変わりますが、水素は水と電気があればつくれます。
家庭でも水と電気があればつくれるものですし、しかも環境に優しい。こうしたものが世界中で実用化されるべきではないか、というのが私の根本にある考え方です。
研究から事業へ――経営者になった理由
——経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは神奈川工科大学で34年間教育・研究活動に従事していました。日本製の水素発生機をつくろうということで、研究室で実際に装置を開発したのですが、「せっかく作ったのだから売りたいよね」という意見が学生から挙がったのです。
とはいえ、大学が商売をするわけにはいきません。そこで学生にベンチャー企業を立ち上げてもらい、開発した機械を販売する形にしたのが今の株式会社M&Kテクノロジーです。
——経営判断をするうえで、大切にしている軸は何でしょうか。
やはり、地球を何とかしたいという思いです。昨今の異常気象を顧みても分かるように、本当に「地球の環境を何とかしたい!」と思っております。国のプロジェクトにも数年前から応募していますが、なかなか採択されないのが現状です。
本来であれば、こういう研究・開発にこそ、お金を投じてほしいという思いがあります。経営判断の軸は、事業がこの「地球を何とかしたい」という目的に沿っているかどうかです。
——この事業で譲れないこだわりはありますか。
水素に関しては、水素・酸素発生機であって、水素と酸素の混合ガスは絶対につくらない、ということです。なぜなら、混合ガスは危険だからです。
水素は小さな火花でも着火することがあり、混合ガスだとそれが着火源になって、装置の爆発につながる恐れがあります。だから私は、必ず水素と酸素が別々に発生する機械をつくることにこだわっております。
小さな組織だからこそ、共有したい思いがある
——現在の組織体制について教えてください。
今のM&Kテクノロジーに、従業員はいません。代表取締役である私と、もう一人の元学生の役員の2人で運営している会社です。
協力会社として、製造を担ってもらっている会社はありますし、北海道や群馬県の大学で試作した機械を使って実験をしてもらっているところもあります。ただ、会社としてはまだ規模が小さいので、従業員はいないという形です。
——今後、どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
地球を何とかしたいという気持ちのある人と一緒に働きたいです。お金の話だけではなく、うちの会社の仕事のやりがいや、目的を理解してくれる人がよいと思っています。
そして、これは国内に限りません。国内外を問わず、そうした思いを共有できる人と一緒に進めていきたいです。
——組織運営において重視していることは何でしょうか。
今は少人数ですので、大きな組織のような形ではありませんが、事業の目的をわかってもらうことが重要だと思っております。
何のためにこの仕事をするのか、その意味を共有できることが大事です。今後、従業員を増やしていく必要はあると思いますが、まずは事業、すなわち水素や水素・酸素燃焼の普及を、もっと伸ばしていかなければならないと考えております。
日本製の品質を守りながら、次の展開へ
——今後取り組んでいきたいことを教えてください。
大学時代に暖房用実験で扱っていたものと、現在市販している小型水素発生機のaqpia(アクピア)は用途が異なります。aqpiaは小型ですので、暖房を意図した燃焼用ではありません。
そのため、今後は燃焼用として使える、より大きな水素・酸素発生機のラインアップを確立していきたいと思っております。展示会では「スーパーアクピア」という名前で水電解を原理とした水素・酸素発生機も出しているのですが、今後はこちらをしっかり展開していきたいです。
——その実現に向けた課題は何でしょうか。
国産で、日本国内だけでつくっておりますので、どうしても価格が高くなります。中国製や台湾製と比べると、価格は5割増しくらいになってしまうのが現状です。
なので、品質を落とさずに値段を下げることが課題です。重要な部分は国内生産にこだわるつもりですが、たとえばケーシングなど、あまり重要ではない部分については海外から安いものを入れて組み込むことも考えています。
——将来に向けて、どのような姿を思い描いていますか。
安全性を確保しながら、水素と酸素が別々に出る発生機、そしてそれを用いた水素・酸素燃焼を普及させていきたいです。危険な混合ガスではなく、安心して使える仕組みを形にしていくことが大事だと思っています。日本製としての信頼と品質を守りながら、より実用的なものとして展開していきたいです。
追いかけているのは、仕事の先にある目的
——仕事を続けるうえで、ご自身を支えているものは何でしょうか。
「地球を何とかしたい」という一貫した思いです。次の世代の人々や地球に暮らす生物のためにも、地球の環境を守りたい。環境に優しい燃料としての水素が、もっと社会で活用されるようになってほしい。その気持ちが根底にあります。
事業として成り立たせることはもちろん大事ですが、その先にある目的を見失わないことが重要だと思っております。
——リフレッシュ方法について教えてください。
ドライブや旅行が好きで、以前はよくこれらを楽しんでいました。また動物も大好きで、動物を使った「地震予知」などにもNPO法人の代表として携わっています。