国産原料と伝統製法を軸に、食の価値を問い直す――遠忠食品が守り育てるもの

遠忠食品株式会社 代表取締役 宮島 一晃氏

遠忠食品株式会社は、佃煮や惣菜などの商品作りをしている老舗で、15年前から直営店も展開している企業です。代表取締役の宮島 一晃氏は3代目として事業を担い、現在は4代目も加わる中で、国産原料を幅広く使い、添加物や化学調味料をできるだけ抑えた商品づくりに力を注いでいます。本記事では、事業の特徴や経営の考え方、組織運営、そして今後の挑戦について伺いました。

伝統を受け継ぎながら、現在の食に向き合うものづくり

――現在の事業内容について教えてください。

弊社はメーカーとして佃煮や惣菜などをつくっており、約15年前から直営店も運営しています。直営店はオーガニック関係の物販店です。私の代になってからは、国産の原料を幅広く使い、添加物や化学調味料をなるべく抑えた形の商品づくりを進めてきました。創業から今年で113年目を迎え、代を重ねながらも、いまの時代に求められる食のあり方に向き合っているところです。

――他社にはない強みはどこにあるのでしょうか。

佃煮業界の中で見ると、昔ながらの製法を残していることが大きな特徴です。たとえば弊社では、釜に直接火を当てる直火炊き製法を守っています。一般的には蒸気釜を使う工場も多いですが、直火で高い温度をかけられることは、味づくりの面でも特徴になると考えています。もちろん効率は良いとはいえませんし、焦がせば無駄にもなりますが、それでも会社として残すべき製法だと思っています。

また、使う調味料にも強いこだわりがあります。醤油一つとっても、じっくり常温で一年以上かけて発酵させたものを使い、水飴や砂糖、みりんについても、国産原料で伝統的な製法のものを選んでいます。自社の商品づくりであると同時に、そうした調味料メーカーを応援することにもつながると考えています。

――理念やビジョンにはどのような思いがありますか。

根底にあるのは、やはり「おいしいものを作りたい」という思いです。一方で、佃煮だけにこだわる必要はないとも考えています。実際、売上を見ると国産を使った商品が伸びており、農家にお願いして畑ごと買い取る形で取り組んできたものが、少しずつ形になってきました。来年度には、その原料を使った新しい商品も考えています。おいしさを追求しながら、国産原料や生産者との関係を広げていくことも、これからの大切な方向性だと感じています。

継ぐことの重みと、変わりゆく事業への視点

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

正直に言えば、私自身は「自分の意思で経営者になった」という感覚ではありません。長男なのだから継ぐのが当たり前、という環境の中で大阪へ行き、東京へ戻ってからも営業の仕事などを経験してきました。ある意味で、やらされてきたという思いもあります。

だからこそ、自分の息子には同じようなことは言いませんでした。ところが息子は、自分から「やる」と言ってきたんです。そこで外の工場でも経験を積ませてから、会社に戻る形になりました。無理に継がせるのではなく、自分の意思で関わろうとしたことは、私にとっても大きかったと思います。

――事業を続ける中で大切にしている視点は何でしょうか。

一次産業を応援したいという思いは強くあります。日本の食料の問題を考えたとき、何か起きれば食料が入ってこなくなる可能性もあります。だからこそ、自分たちの国で食べるものを自分たちでつくることが重要だと思っています。弊社としても、ただ安い原料を使って添加物を多く入れ、作るという方向ではなく、きちんとした原料を見つけ、きちんとした形で売っていく流れをつくりたい。その入口になる原料選びが非常に大事だと考えています。

社内の対話を重ね、長く働ける組織をつくる

――社内のコミュニケーションで大切にしていることはありますか。

社内ではチャットを活用していて、店舗のこと、工場のこと、全体で共有すべきことなどを、それぞれきちんと伝えられるようにしています。重要なポイントは皆が書き込めるような形にしていて、情報共有は以前よりかなり進んでいると思います。

加えて、息子が入ってからは会議も増えました。私たちの頃はそこまで会議を重ねる文化ではありませんでしたが、より整理しながら会社を動かそうという流れが出てきています。世代が変わることで、組織の動き方にも変化が生まれていると感じます。

――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

現場の仕事は決して楽ではありません。暑い時期もありますし、毎日の作業も大変です。それでも、自分たちが作ったものが世の中に出ていくことに喜びを感じてくれる人がいいですね。嫌々やるのではなく、ものづくりそのものに意味を感じてくれる人です。

店舗についても、時間はかかりますが、少しずつ売上が上がってきていて、継続することの大切さを感じています。だからこそ、長く勤めてもらえる人と一緒にやっていけたらと思っています。

国産原料の可能性を広げ、次の時代へつなぐ挑戦

――今後取り組んでいきたい新しい挑戦を教えてください。

これからも国産原料をどう見つけていくかが大きなポイントだと思っています。東京湾に関わる業者さんも含め、これまでも応援してきましたが、東京に限らず、国内の原料を活かせる余地はまだあるはずです。最近では調味料関係の動きも良く、コチュジャンなども伸びています。柚子胡椒についても、東京産の原料を組み合わせてつくっているものがあり、シンプルな素材でできる可能性を感じています。国産で、かつ無理のない形で広げていける商品は、今後もまだまだあると思っています。

――現在向き合っている課題についてはいかがでしょうか。

大きいのは工場の老朽化です。工場は50年以上が経っており、今後は改修を考えなければいけません。ただ、当然ながら大きな資金が必要になります。越谷の土地は半分ほどしか使っていないため、建てる余地はあるのですが、そこに踏み込むかどうかは簡単には決められません。続けていくのであれば、今までの形を残しつつ、より衛生的でコンパクトな工場にしていくことが理想です。大手になる必要はなく、良いものをしっかりつくり、それをきちんと売ってくれる先と組んでいく。その方向で考えています。

――今後の想いや大切にしていきたいことをお聞かせください。

食べ物は皆さんの体をつくるものです。だからこそ、大事に食べてほしいと思います。少し高く見えるものでも、国内の原料を使い、添加物を抑え、きちんと作られたものには意味があります。毎日の食事を少し見直すことが、健康にもつながっていくのではないでしょうか。自分たちの食べるものを、自分たちの国でつくる。その大切さを多くの人に考えてもらえたらありがたいです。そうした価値を理解してくれる人が増えることが、結果として生産者やつくり手を支えることにもつながるのだと思います。

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