AIで給食の未来を支える――Well-Fedが挑む、献立作成と出数予測の社会実装

株式会社Well-Fed 代表取締役 太田 和希氏

株式会社Well-Fedは、給食領域に特化し、AIを活用した献立作成と出数予測に取り組む企業です。神奈川大学発ベンチャーとして研究で培った知見を現場に届け、栄養士の働き方や給食運営の課題解決を目指しています。本記事では、代表の太田和希氏に、事業の特徴や創業の背景、今後の展望などについて詳しく伺いました。

給食現場に寄り添い、AIで意思決定を支える

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、給食領域に特化した「出数予測」と「献立作成」を主軸に事業を展開しています。対象としているのは、学校給食をはじめ、社員食堂、学生寮・社員寮、病院、介護施設などの給食現場です。

献立作成では、栄養面や運営面を踏まえたAIエンジンを開発し、現場業務の効率化につなげています。一方の出数予測では、実際にどれだけ提供されるのかを予測することで、食材の発注や仕入れ計画の精度向上を支援しています。

給食運営における負担軽減と、より合理的な意思決定を後押ししている点が特徴です。

――出数予測では、具体的にどのような要素を考慮しているのでしょうか。

天候や曜日、祝日、学内イベントなど、利用者数に影響を与えるさまざまな要素を加味しています。

たとえば学食では、曜日ごとの履修状況によって来店傾向が変わるため、単純な過去実績だけでは精度の高い予測は難しくなります。そこで当社では、こうした外部要因に加え、メニューごとの「人気度」を独自に定量化し、予測モデルへ反映しています。

限られた選択肢のなかで「どの商品が選ばれやすいか」をデータとして捉えることで、より実態に近い需要予測を実現している点が当社の特徴です。

――他社にはない強みはどこにありますか。

一つは、メニューの「人気度」を定量化し、予測ロジックに組み込んでいる点です。給食は限られた選択肢の中から利用者がメニューを選ぶため、その選択傾向をデータとして捉えることで、より実態に即した予測につなげています。

もう一つは、神奈川大学発ベンチャーとして、研究を基盤に事業を展開している点です。研究成果を論文や検証だけで終わらせるのではなく、現場で実際に使われる形まで落とし込むことを重視しています。

加えて、栄養分野の学会や専門家とのネットワークを活かしながら、現場ごとの課題に向き合っていることも、当社ならではの強みだと考えています。

研究から社会実装へ――現場の声が起業を後押しした

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

もともとは、「研究室で取り組んでいた技術を、実際の給食現場で役立てられないか」と考えたことが出発点でした。そして展示会では、自治体や給食事業者、栄養士の方々から「早く使いたい」といった声をいただき、現場ニーズの大きさを実感しました。

こうした背景から、研究として終わらせるのではなく、社会実装までつなげていきたいという想いが強くなり、事業化と起業を決意しました。

――ご自身にとって、経営は身近なものだったのでしょうか。

両親をはじめ、祖父母も含めて家族が自営業を営んでいたため、経営は幼い頃から身近な存在でした。自身で事業をつくり、責任を持って進めていく働き方に自然と関心を持っていたと思います。ただ、Well-Fedについては、私一人で起業したというより、創業メンバーの一人として関わり始めた形です。その後、事業を進めていくなかで、現在は代表として経営を担う立場になっています。 

少人数だからこそ、自動化と信頼の積み重ねを大切にする

――現在の組織体制について教えてください。

現在は、7〜8名ほどの体制で事業を運営しています。営業専任の組織を置くというより、私と副社長、社員が案件ごとに現場へ伺い、お客様と直接向き合いながら進めるようなスタイルです。少人数体制だからこそ、現場との距離感を大切にしながら事業を進めています。

お問い合わせや学会でのつながりを通じてご相談をいただくケースも多く、現時点では新規拡大よりも、一件一件の案件に丁寧に対応しながら実績と信頼を積み重ねている段階です。

――現在、直面している課題は何ですか。

給食業界では、AIやDXの活用以前に、データ整備そのものが十分に進んでいないケースも多くあります。そのため、当社では単にシステムを導入するだけではなく、AI活用に耐えうるデータ環境を整えるところから支援することが少なくありません。

また、少人数体制で事業を展開しているため、いかに業務を自動化・省力化しながら対応力を高めていくかも重要なテーマです。現在は生成AIなども積極的に取り入れ、社内オペレーションの効率化と、より多くの案件に対応できる体制づくりを進めています。

――プロダクト面で意識していることはありますか。

給食領域は、栄養基準、原価、調理工程、提供体制、現場ごとのルールなど、考慮すべき条件が非常に多い領域です。だからこそ、単にAIを導入するだけではなく、現場の業務や制約を深く理解したうえで、実際に使い続けられるプロダクトにしていくことを重視しています。

今後、他社の参入が進む可能性もありますが、当社は給食に特化してきた知見と現場での検証を積み重ねることで、簡単には模倣できない価値を築いていきたいと考えています。常にプロダクトを進化させ、現場にとって本当に役立つ形へ磨き込んでいくことを、社内でも大切にしています。

給食をよりよいインフラに――海外展開も視野に入れて

――今後の展望について教えてください。

長期的には、海外展開も視野に入れています。日本の給食は、栄養バランスやコスト管理まで考えられた仕組みとして、世界的にも価値のあるモデルだと考えています。特に学校給食は、食を通じたインフラとして、貧困や格差といった社会課題への貢献も期待できる領域です。

一方で足元では、現在取り組んでいる献立作成と出数予測を軸に、給食運営全体の意思決定を支援できるサービスへと広げていきたいと考えています。現場の業務負担軽減だけでなく、経営や運営の最適化まで支えられる存在を目指していきたいです。

――最終的に、会社をどのような姿にしていきたいですか。

最終的には、当社のサービスを通じて、給食業界全体の価値向上に貢献できる存在になりたいと考えています。

現在の給食現場では、人手不足や業務負荷の高さが大きな課題となっており、栄養士の方々も限られた環境の中で多くの業務を担っています。そうしたなかで、定型的な業務や負担の大きい部分をAIで支援することで、人にしかできない創造的な業務へより注力できる環境をつくっていきたいです。

給食や栄養士という仕事が、社会インフラを支える専門職として、より魅力的で憧れられる業界になっていくことを目指しています。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

新しい事業や課題解決を考える際は、まず現場に足を運び、実際の声を聞くことが重要だと考えています。

頭の中だけで考えるよりも、まず動いてみることで見えてくる課題や可能性は多くあります。私自身も、研究や事業を進めるなかで、現場との対話を通じて多くの学びを得てきました。最初から完璧を求めるのではなく、走りながら改善を重ねていくことが、結果として事業やサービスを成長させることにつながるのではないかと思います。

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