3代目経営者が論理的思考で挑む、老舗製麺所の売上チャンネル拡大と未来への挑戦

有限会社中橋製麵所 代表取締役 中橋 清貴氏

ラーメン、パスタをはじめとする多種多様な麺類の製造販売を手掛け、多くの飲食店や個人客から厚い信頼を寄せられている有限会社中橋製麺所。3代目として伝統を受け継いだ代表取締役の中橋清貴氏は、大学で学んだ食品工学の知識を活かした「論理的なモノづくり」を土台に、時代の変化に合わせた柔軟な経営を実践しています。コロナ禍や近年の原材料高騰という逆風のなかでも、決して品質を落とさず、新たな売上チャンネルの確立に挑む同氏に、製麺にかけるこだわりや組織運営、そして未来への展望についてお話を伺いました。

高いレベルでの満足と利益貢献を目指す

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

常に意識しているのは「お客様に満足してもらえる麺を届ける」という一点に尽きます。

私たちのメインのお客様は飲食店です。飲食店さんの利益になるような麺を提供すること。そして、その飲食店さんを通して麺を食べてくださる一般のお客様に、長く愛されるような麺づくりをすることです。

飲食店さんにどれだけ納得していただける品質を保てるか、そしてその先のお客様に喜んでもらえるような提案ができるか。この視点は、常に私たちのモノづくりの中心にあります。

店主さんが「このスープにはこういう麺が合うだろう」という固定概念を持たれているときに、私たちが毛色の違う麺を提案させていただく。そこから店主さんの中で新しいアイデアが生まれ、これまでにない新メニューの開発に繋がることも珍しくありません。

食品工学の学びを活かした「論理的なモノづくり」

――経営者になられた経緯を教えてください。

いずれは自分がこの会社を継ぐのだろうと、ごく自然に当たり前のこととして捉えていました。進路を選ぶ際もそれを前提に考えていました。大学卒業後はすぐに中橋製麺所に入社したのですが、当時は今ほど細かく分業されていなかったので、全て自分でやらなければならない状況でした。しかし、その多忙な日々のなかで、学校で学んだ食品工学の知識が非常に役に立ちました。

――おじい様やお父様から代々受け継いできたなかで、経営判断の軸となっている教えや価値観はありますか。

やはり「食べてくれるお客様にどれだけ良いものを届けられるか」という点ですね。これが私の経営における1番の軸であり、判断に迷ったときの道標になっています。

昨今は物価高騰が続いておりますが、その中でいかに高い品質を維持し、お客様にこれまで以上の満足を感じていただけるものを作り続けられるか。どれほど周囲の環境が変わろうとも、この一線だけは守り抜くという覚悟を持っています。

現場主義で仕掛けるフラットな関係性

――組織運営で意識していることを教えてください。

現在、当社のスタッフは10人ほどの規模です。すべてのスタッフの顔が見え、毎日お互いに声を掛け合いながら仕事ができる距離感にあります。私は基本的にずっと現場にいますし、外回りも自分でこなします。

トップダウンで押さえつけるような関係ではなく、スタッフが自分の目の前の仕事に100%集中できるように、周囲の環境を整えてアレンジメントしていくことこそが、私の役割だという意識で現場に立っています。

――もし今後、新しい方を採用されるとしたら、どういった点を重視されますか。

純粋に「人柄」ですね。素直に話しやすいと感じるか、自分とのフィーリングが合うかどうか。これまでもそうやって人柄を重視してメンバーを選んできたので、社内の雰囲気が良く、みんなが仕事をしやすい環境が維持できているのだと思います。

直販店舗の展開と通販の再構築で、新たな売上チャンネルを確立する

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

元々、中橋製麺所は売上の約8割を飲食店向けの「業務用卸し」が占めていました。業務用一本を軸に長年商売を続けてきたわけです。しかし、卸しの市場は競争が非常に激しく、未来に明るい展望を描くことはできません。

そこで、これまでの「業務用卸し」という一本の軸に依存する形から脱却し、複数の売上チャンネルを確立することを目指して動き出しています。売上の分母を伸ばすことができれば、製造にかかるコスト比率を全体的に抑えることができます。結果として、最も大切である「麺の品質」を高いレベルで維持したまま、お客様へ提供し続ける仕組みを守ることができると考えています。

工場の近くの、少し人通りのある通り沿いに良い物件が空いたため、思い切って新しく「直販専門の店舗」を出店しました。このリアル店舗での物販に力を入れ始めたところ、地域の方々から非常に大きな反響をいただくことができました。とても評判良くやらせていただいています。

子どもたちからの言葉がもたらす最高のモチベーション

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

小学生の息子と中学生の娘がいるのですが、休みの日になると息子からは「サッカーやろう!」と誘われ、娘からは「推し活に付き合って!」と言われます。そうやって家族と全力で向き合っている時間が、自分の中でのリフレッシュになっているのだと思います。

何より嬉しいのは、子どもたちが学校の友達から「中橋くんのところの麺食べたよ、すごく美味しかった!」と言われることがあるそうなんです。それを子どもたちが嬉しそうに私に報告してくれる。それはもう経営者としても父親としても、これ以上ないモチベーションになりますよね。

――これだけは絶対に譲れない、未来へ守り抜きたいという熱い想いをお聞かせください。

経営者としての戦略や数字のことも大切ですが、何よりも「一人の麺屋」として原点にあるのは、「中橋さんの麺は美味しいね」と言っていただける、その言葉の重みです。すべてはその一言に尽きます。

私は子どもの頃から、周囲の方々が「中橋製麺所の麺は本当に美味しい」と褒めてくださる声を聞くのが、本当に嬉しくて仕方がありませんでした。そして今、時代が流れて私の子供たちも、周りから同じ言葉をかけられて喜んでいる。

この「美味しいね」と認められるモノづくりの本質、そして私たちが作る麺がもたらす笑顔の連鎖だけは、どんなに時代が変わろうとも、どんな逆風が吹こうとも、絶対に絶やすことなく未来へ繋いでいきたいと思っています。

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