薪ストーブと森を未来へつなぐ――自然と共生するものづくりへの挑戦
有限会社曽和製作所 代表取締役 曽和 靖夫氏
埼玉県で長年にわたり、ものづくりに携わってきた有限会社曽和製作所。創業当初は金属加工業として事業を展開していましたが、現在は薪ストーブ事業を中心に取り組んでいます。また、自然環境の保全を目的としたキャンプ場の運営も行っています。本記事では、代表の曽和靖夫氏に、事業への想いやこれまでの歩み、自然へのこだわり、今後の取り組みについて伺いました。
自然エネルギーの可能性を追求する事業へ
――現在の事業内容について教えてください。
現在は薪ストーブ事業を中心に取り組んでいます。当社は昭和38年の創業以来、一般的な金属加工を手がけてきました。私自身も20代前半で会社に入り、それ以来60年近くこの仕事に携わっています。
実は最初から薪ストーブを製造していたわけではありません。長年にわたって金属加工業を続ける中で、社会や環境の変化を見ながら事業を展開してきました。しかし、後継者がいなかったこともあり、70歳を迎えた頃に会社を閉じることになったんです。
その時点ですでに薪ストーブ事業は行っていましたが、自治体から「この事業は続けてほしい」という要望がありました。環境問題やSDGsへの関心が高まる中で、事業の継続を望む声をいただき、事業承継という形で現在まで続けています。
――事業に込めている理念やビジョンを教えてください。
もともと私は長年、金属加工の仕事をしてきました。ただ、時代が変わる中で、地球温暖化や環境問題が世界的な課題として取り上げられるようになったんです。
当時は私自身も何が原因なのかよく分かりませんでした。しかし、さまざまな情報に触れる中で、消費型の経済活動が現在の環境問題につながっていることを知り、自然エネルギーの活用が大切だと感じるようになりました。
自然エネルギーには風力や水力、太陽光発電などさまざまなものがありますが、その中でも薪ストーブは私たちの暮らしに最も身近な自然エネルギーの一つです。
薪ストーブを復活させることが、一番身近なところから自然エネルギーを広げることにつながるのではないか。そうした考えから、この事業に取り組んできました。
薪ストーブを通じて、身近な自然エネルギーを活かしていきたい。その想いで今日まで続けています。
先代の想いを受け継ぎ、会社を守る決意
――経営者として会社を引き継がれたきっかけを教えてください。
以前は家族で経営していた会社でした。ところが兄弟たちはそれぞれ自分のやりたいことを見つけて、次々と別の道へ進んでいきました。
私は末っ子だったものですから、兄弟がそれぞれの道へ進んだ結果、会社を守る立場になったんです。正直なところ、自分から積極的に経営者を目指したというよりも、取り残されたような形で会社を引き継ぐことになったという感覚のほうが近いかもしれません。
ただ、長年築き上げてきた先代の努力や歴史を考えると、このまま終わらせてしまうわけにはいきませんでした。そうした想いから、会社を引き継ぐことになりました。
――経営判断の軸となっている価値観はありますか。
長年、下請け企業として仕事をしてきました。自分たちから何かを発信していくというよりも、メーカーからいただいた仕事にしっかり応えていく立場だったんです。
その中でも、比較的精度の高いものを求められることが多く、そうした製品づくりに携わってきました。求められる品質に応えながら、一つひとつ積み重ねてきたのが私たちの仕事です。
メーカーの求める品質に応え続けてきたこと。それが今でも私たちの誇りとして残っています。
共感でつながる仲間たちとの活動
――現在の組織体制について教えてください。
会社を閉じた際に、それまで行っていた一般の製造業の仕事や、防衛関連、科学技術関連の仕事は終了しました。
その中で残したのが薪ストーブ事業です。当時は3~4人ほどで取り組んでいましたが、私自身も年齢を重ねる中で会社を維持していくことが難しくなり、現在は製造の仕事を二人で続けています。
また、もう一つの取り組みとしてキャンプ場の運営も行っています。近隣の農家の方から森をお借りし、その自然を守ることを目的に始めたものです。自然環境を大切にしたいという想いにも通じる取り組みで、今はその活動にも力を入れています。
――人と関わる上で大切にしていることは何でしょうか。
キャンプ場の運営には、多くのボランティアや協力者の方々が関わってくださっています。皆さんが自然環境を守りたいという想いに共感し、力を貸してくださっていることは本当にありがたいですね。
現在も20人から30人ほどの方々に協力していただいています。同じ想いや目的を共有しながら、一緒に活動できることを大切にしています。
また、人に言われて動くのではなく、自分の信念を持って行動できる方は信頼できます。自ら考え、自ら動ける方となら、同じ方向を向いて取り組んでいけると思っています。
森を守るための新たな挑戦
――今後取り組みたいことを教えてください。
薪ストーブ事業については、ご依頼がある限り続けていくつもりです。
一方で、今は新しいキャンプ場の開拓にも力を入れています。現在のキャンプ場とは別に新しい森の整備を進めていて、多くの協力者の皆さんと一緒に開拓を行っているところです。
近隣の森を守りたいというのが最大の理由ですね。多くの協力者の皆さんに支えていただきながら、新しいキャンプ場の開拓を進めています。
――現在感じている課題や目指していることはありますか。
正直なところ、大きな目標や課題を掲げているわけではありません。私の中では、とにかく自然を大事にしたいという気持ちがあります。
そのため、キャンプ場の開発についても必要以上の整備はしていません。安全管理は行いますが、集客のために森を切り開いたり、施設を増やしたりするつもりはありません。自然の中で過ごしていただけるキャンプ場にしたいと思っています。
また、薪ストーブづくりにおいても長く使えることを大切にしています。最低でも100年、それ以上使い続けられるものを目標に、一台一台製作しています。
仕事そのものが人生の楽しみ
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
実は休みがほとんどないんです。薪ストーブ事業に加えて、キャンプ場の運営や管理、新しいキャンプ場の開拓などもあり、365日何かしらの活動を続けています。
私も年齢を重ねていますから、今やっていることをしっかり後継者へつないでいきたいんです。そのためにも、今できることに取り組んでいるところです。
ただ、キャンプ場づくりは私にとって楽しみでもあります。自然の中で活動しながら仕事ができるので、それが唯一の心の休みかもしれませんね。