AIと微生物で第一次産業の未来を変える――株式会社バイオテクノ産業が描く無農薬農業への挑戦

株式会社バイオテクノ産業 代表取締役 斎藤 一也氏

第一次産業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。後継者不足や収益性の低下により、農業の未来に不安を抱く地域も少なくありません。そんな中、株式会社バイオテクノ産業は微生物の力を活用し、農業を「儲かる産業」へと変えていくことを目指しています。同社が開発する商品は、土壌環境の改善や無農薬栽培の実現を後押しするものです。今回は代表取締役の斎藤一也氏に、事業への思いや微生物との出会い、そして今後の展望について伺いました。

第一次産業を元気にすることが会社の使命

――御社の事業内容について教えてください。

当社が掲げているテーマは「第一次産業をもっと元気に」です。

今、特に地方では後継者不足が深刻な問題になっています。農業に従事する若い人が減っている大きな理由は、やはり収益性にあると考えています。儲からない産業になってしまうと、どうしても担い手は減ってしまう。

だからこそ私たちは、農業を儲かる仕組みに変えていきたい。そのためのシステムや商品を提供することが一番の目的です。

食を支える第一次産業が衰退してしまえば、私たちの生活にも大きな影響が出ます。その流れに歯止めをかけたいという思いで事業を続けています。

――他社にはない強みを教えてください。

私たちが力を入れているのは土壌改良です。

現在の農業は、生産効率を高めるために化学肥料や農薬を使うスタイルが一般的になっています。ただ、その結果として土が痩せてしまい、さらに肥料を投入しなければ作物が育たない状態になっていると感じています。

当社の「バイオチャージャー 」は、苗八部論という農家さんが大切にして来た、農産物の最初の工程である苗作りに力を入れて取り組んでいます。土壌中の微生物環境を整えながら、苗の根に直接自家発酵のアミノ酸と低分子量の自然由来ミネラルを与える事で、昔の元気な土に近づけていく商品です。継続して使用することで、微生物が豊富な土壌環境へと変わっていきます。

土が健康になると、作物も本来の力を発揮しやすくなります。化学肥料に過度に頼らなくても育ちやすくなり、農業全体を良い循環へ導くことができると考えています。

微生物の力が農業の悪循環を断ち切る

――微生物の活用によってどのような変化が期待できるのでしょうか。

今の農業では、肥料を使うことで消化しきれなかった栄養分が残り、それに害虫が集まります。害虫が来るから農薬を使う。するとまた別の問題が生まれる。この繰り返しが悪循環になっています。

私たちは微生物の働きによって有機物の分解速度を高め、植物が吸収しやすい状態へ変えることを目指しています。そうすることで害虫が寄り付きにくくなり、結果として農薬の使用を減らすことにもつながります。

実際に鶏ふんへ微生物パウダーを散布した実験では、数日でウジやハエが大幅に減少した事例もあります。同じ鶏ふんでも状態が変わることで虫が寄り付きにくくなる。その変化は非常に印象的でした。

また、当社の商品は有機認定資材として活用できるため、有機栽培に取り組む農家の方にも利用していただいています。

偶然の連続が人生を変えた

――斎藤様ご自身が微生物の世界に入られたきっかけを教えてください。

もともと私は工業高校の電気科を卒業し、TDKに入社しました。

現場のオペレーターからスタートし、その後は技術職としてさまざまな実験や改善業務に携わりました。新工場立ち上げプロジェクトでは技術責任者として参加する機会もありました。

その後、中国向けの技術営業担当として香港へ赴任することになりました。英語も中国語もできませんでしたが、「現地に行けば覚えられる」と背中を押され、挑戦することになったんです。

実際に現地で生活する中で、中国語も自然と身につきました。気づけば通訳なしで商談できるようになっていましたね。

その後、日本食店の経営にも挑戦しましたが、当時の社会情勢の影響もあり半年で閉店することになりました。大きな損失を抱え、人生で一番苦しい時期だったかもしれません。

しかし、その経験が新たな出会いにつながりました。電子部品関連のビジネスを始め、その過程で現在の会社の商品と出会ったんです。最初は半信半疑でしたが、自分で試しながら興味を持つようになり、やがて事業に深く関わるようになりました。

振り返ると、本当に人との巡り合わせに恵まれてきたと思います。今の事業も、たくさんのご縁がつながった結果ですね。

事業承継と商品のリニューアル

――代表に就任された経緯について教えてください。

もともと私が社長になる予定だったわけではありません。

以前の社長が亡くなられた際、会社をどうするかという話になりました。そのとき周囲から「斎藤さんが引き継いでほしい」と言われ、そのまま代表を務めることになったんです。正直、自分でも予想していませんでした。

代表になってからは商品の見直しにも取り組みました。

従来の商品は飲みにくさや製造面での課題がありました。そこで製造方法やパッケージを見直し、より飲みやすい商品へリニューアルしました。

現在はシークヮーサーを活用した商品開発も進めており、より多くの方に親しんでもらえる形を目指しています。なお、発酵原料は約1年かけてじっくり熟成させています。時間をかけて作ることにも大きな意味があります。

無農薬農業の普及と健康意識の向上を目指して

――最後に、今後の展望を教えてください。

私が目指しているのは、利益だけを追求することではありません。

できるだけ多くの方に健康になってほしい。その思いから、商品も手に取りやすい価格を意識しています。利益を大きく取るよりも、まずは広く使っていただきたいという考えです。

そしてもう一つ大きな目標があります。それは若い人たちに第一次産業へ戻ってきてもらうことです。農業が魅力ある仕事になれば、地域も元気になります。そこに少しでも貢献したいと思っています。

また、私が本当に進めたいのは有機JASではなく無農薬栽培です。農薬に頼らない農業を広げ、農家の負担を減らしながら安全な作物づくりを支援していきたいと考えています。

最後にお伝えしたいのは、健康を守るための意識を高めてほしいということです。無農薬野菜や抗生物質を使わない畜産を応援することも大切ですし、日々の体づくりに目を向けることも大切だと思っています。健康への関心が広がることで、農業も社会もより良い方向へ進んでいくと信じています。

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