子どもたちに誇れる食を未来へ――地域の食の循環を目指すゆめプロの挑戦
NPO法人ゆめプロ 代表理事 小笹 霞氏
NPO法人ゆめプロは、休耕地を再生し、農薬や化学肥料を使わない農業を通じて子どもたちの給食へ食材を届ける活動を行っています。農産物を活用した加工品の開発や企業との連携、コミュニティづくりにも取り組みながら、地域全体で食を支える仕組みづくりを目指しているのが特徴です。本記事では、代表の小笹 霞氏に、事業への想いや経営の考え方、今後の展望について伺いました。
食を通じて、子どもたちの未来を育む
――現在の事業内容について教えてください。
事業は大きく分けて3つあります。
1つ目は、休耕地を再生し、農薬や化学肥料を使わずに育てたお米や野菜を子どもたちの給食へ届ける農業です。連携する保育園と年間契約を結び、地域で育てた食材を提供しています。
2つ目は、加工品事業です。お米や野菜、お豆を使った「豆っとベジもっちー」を製造しており、パンというよりも栄養バーに近い商品です。素材を活かした新しい食の選択肢として展開しています。
3つ目は、コミュニティ運営です。企業とのオリジナル商品の開発などにも取り組み、人と地域をつなぐ活動を進めています。
――ほかにはない強みはどのような点にありますか。
私たちの強みは、「子どもたちに本当に届けたい食」を基準に事業を展開している点です。野菜を作ること自体が目的ではなく、母親として、自分の子どもに安心して食べさせたいと思える食を社会に増やしたいという想いが出発点となっています。
利益を優先するのではなく、子どもたちの未来を見据えながら事業を進めていることが、私たちならではの特徴だと思っています。
――「子どもたちがワクワク意欲的に生きられる社会をつくる」という理念には、どのような想いが込められていますか。
人は、食べたもので心と身体がつくられます。精神と肉体が意欲的でいられる土台を作る「身近な食」が整っていなければ、大人がどれだけ夢や目標を語っても子どもたちには届きません。
まずは地域の大人が食の土台を整えること――その環境があれば、子どもたちは自然と夢や志を持ち、自ら意欲的に生きていけると考えています。
「給食を変えたい」という決意が活動の原点
――この活動を始めたきっかけを教えてください。
祖母の認知症をきっかけに医療や食について学び始め、食が健康や人生に大きな影響を与えることを実感しました。自身の食生活を見直したことで体調の変化も経験し、食の重要性を改めて認識したんです。
ちょうど長女が生まれた時期でもあり、「子どもが何を食べるかで人生の質が変わる」という想いから、自分が納得できる食を届けたいと考え、畑づくりを始めました。
――活動を続ける決め手となった出来事はありましたか。
娘が保育園へ通い始め、給食の現状を知ったことが大きな転機でした。まだ自分で選択できない子どもたちの食がコストを優先したものになっている現実に衝撃を受け、「給食を変えたい」と強く決意しました。
そのとき、この課題に人生をかけて取り組もうと覚悟を決め、現在の活動へと踏み出しました。
ボランティアから事業型NPOへ
――事業化の転機となった出来事を教えてください。
活動を始めて2年ほどが経ったころから、地域のなかだけでは活動の広がりに限界があると感じるようになりました。社会へ展開していくには、持続可能な仕組みとして事業化が必要だと考えたんです。
ちょうどそのころ、当団体を取材で訪れた現在のスタッフから「ここで働きたい」と声をかけてもらい、その想いに背中を押される形で、事業として本格的に歩み始めました。
――現在の組織づくりで大切にしていることは何でしょうか。
現在はボランティアを含め約15名で活動していますが、一緒に活動するうえで大切にしているのは「人間力」です。知識や経験以上に、自分自身の軸を持ち、信念をぶらさず行動できる人と歩んでいきたいと思っています。また、関わってくださる皆さんが、ゆめプロは自分の居場所、そして自分を含めた家族の第二の家と思ってもらえるゆめプロで在りたいです。
――今後、組織として必要だと感じていることはありますか。
私は外へ出て人とつながる役割が多いため、活動の意図を理解し、プロジェクト全体を任せられるマネジメント人材が必要だと感じています。理念を共有しながら組織を支えてくれる存在が加われば、さらに活動の幅を広げられると考えています。
地域の食のインフラを再構築したい
――今後取り組みたいことについてお聞かせください。
一番の目標は、地域の食のインフラを再構築することです。私たちが目指しているのは、オーガニック給食だけではありません。地域で育てたものを地域で消費し、生産者と子どもたちがつながる循環をつくることも目標の一つです。
――その実現に向けて、どのような取り組みを行っていますか。
農家や企業、地域住民が同じ未来を描けるよう、人と人とのつながりを少しずつ広げていく活動をしています。まずは奈良でモデルをつくり、地域の食が循環する仕組みを形にしたうえで、全国へ横展開していきたいと考えています。
また、NPO法人の価値を社会へ伝えていくことも私たちにとって重要な取り組みです。NPOはボランティアという印象を持たれがちですが、社会課題を継続して解決するには高い事業性や発信力が欠かせません。活動を積み重ねることで、その価値を社会に示していきたいと思っています。
子どもたちに誇れる未来のために
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
子どもたちと海外へ行くことです。特に印象に残っているのは、モンゴルで遊牧民の暮らしを体験したことでした。自然のなかで過ごす時間を通じて、「幸せとは何か」を改めて考える機会になり、人間本来の豊かさを実感しました。
――これからも譲れない想いはありますか。
どんな場面でも判断基準になるのは、「子どもたちに誇れる選択をしているかどうか」です。活動を始めたころの初心を忘れず、お金や効率だけに左右されない選択を積み重ねていきたいと思っています。
食は、子どもたちの心と体を育み、地域の未来を支える大切な基盤です。だからこそ、一人でも多くの仲間とともに地域の食の循環を育み、子どもたちに誇れる社会をつくっていきたい――その想いを胸に、ゆめプロの挑戦はこれからも続いていきます。