AIにできること、人にしかできないこと。その境界に価値を生み出す
株式会社kurogo works 代表取締役 西村 信行氏
株式会社kurogo worksは、オンライン学習プラットフォームでの動画コンテンツ提供を中心に、企業や自治体向けの研修、書籍の執筆などを行っています。プロジェクトマネジメントを軸に、リーダーシップや生成AIの実務活用など、働く人に役立つ実践的な学びを発信してきました。本記事では、代表の西村信行氏に会社設立の経緯や事業の強み、AI時代における人間の価値、今後の展望について伺いました。
実践知を学びに変える
――現在の事業内容や強みについて教えてください。
主な事業は、オンライン学習プラットフォームへの動画コンテンツの提供です。そこから派生して、企業や自治体に向けた研修も行っています。また、執筆活動にも取り組んでおり、2026年の初めに一冊目の書籍『仕事は計画が10割』を出し、現在は二冊目を執筆しています。
発信の軸は、もともと専門としていたプロジェクトマネジメントです。そこからリーダーシップや、生成AIを実務の中でどのように使っていくかといったテーマにも広げています。
強みは、実践に根ざした内容を体系立てて分かりやすく伝えられることです。最近は、生成AIそのものの使い方だけを教えるのではなく、AI時代に人間が持つべき価値やビジネススキルに重点を置いています。人間としての力があるからこそ、AIを使いこなせると考えているからです。
過去の経験を未来の力へ
――会社を立ち上げた経緯について教えてください。
もともとは、本業とは別に始めた副業が事業の原点です。2020年の年末頃から、オンライン学習のコンテンツ制作を始めました。
私はプロジェクトマネージャーとして仕事をしていたため、その経験をもとに情報発信を始めました。当時は、実践に根ざした内容や、現場の情報を体系的にまとめて発信している方がまだ少なかったと感じています。そこで、自分の経験を分かりやすく整理して届けることには価値があるのではないかと考えました。
始めてみると想像以上に受講生が増え、事業としても大きくなっていきました。そこで、会社として独立し、一人で事業を始めることを決めました。コロナ禍によって学習がオンラインへ移行した時期だったことも、事業を始めるきっかけの一つになっています。
――事業に込めている思いを教えてください。
私自身、20代の頃はかなりハードに働いていました。ただ、今振り返ると、知識があったり、勉強する機会があったりすれば、もっと効率よく仕事ができたのではないかと思うことがあります。だからこそ、先人の知識や実践で役立つ情報を発信し、若い方や自分と同世代の方の働く意欲や仕事の成果に貢献したいという思いがあります。目指しているのは、受講した方が「明日、会社に行くのが少し楽しみになる」「明日も働いてみよう」と思えるようなコンテンツです。そのため、学んだことをすぐに仕事で実践できる内容を届けることを意識しています。
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
受講される方にとって、本当に役に立つものになっているかを大切にしています。教科書的な知識をそのまま伝えるだけであれば、AIでもできる時代です。だからこそ、AIだけでは生み出せない価値や、人が介在する意味をどのように加えるかを考えています。
企業研修の場合は、経営やマネージャーが抱えている悩みと、現場で働く方が感じている悩みを結び付けることも重要です。経営側の考えだけでは現場に響かないことがありますし、現場の声だけでは会社が目指す方向と合わない場合もあります。会社と現場の双方が納得し、同じ方向へ動ける研修をつくることを意識しています。
人とAI、それぞれの強みを生かす
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在は社員を抱えず、一人社長として活動しています。そのため、AIを活用しながら、いかに効率的に経営するかを重視しています。自分の頭の中にあるものをAIエージェントに任せながら業務を効率化し、仕上がったものについては、自分自身で品質を確認し、自分らしい要素を加えています。自分の時間や能力を、どの部分に使うべきかを考えることが、今の経営における大切なポイントです。
また、過去に一緒に働いた信頼できる方々と、専門知識を持ち寄ってコンテンツを制作することもあります。社内ではAIを活用して効率化し、社外では信頼できる人との協働によって相乗効果を生み出していく。その両方を大切にしています。
――お客様とのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
お客様が本当に抱えている課題は何なのかを、しっかり理解することです。表面的な悩みだけではなく、その先で何を実現したいのか、何に困っているのかを聞いたうえでコンテンツをつくります。
また、何も考えずに質問するのではなく、あらかじめ仮説を持ってお話を伺うことも意識しています。こちらから仮説を提示することで、「確かにそこに悩んでいる」「実際に伝えたいことは少し違う」といった本音を引き出しやすくなるからです。
――今後、採用を行う場合の理想の人材像などはありますか?
ミッションを理解し、自分で考えて動ける方が良いと思っています。言われたことだけを行うのではなく、何を実現するための仕事なのかを考えながら自走できる方は、AI時代により大きな価値を発揮すると考えています。
AI時代に、人の価値を届ける
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
AIの台頭によって、講師という仕事は大きな転換点を迎えていると感じています。教科書的な説明や知識を並べるだけの内容であれば、AIで十分に対応できる時代になりつつあります。
だからこそ、誰に、何を、どのような順番や濃淡で伝えるのかという学習体験の設計が、これまで以上に重要になります。人間が方向性をコントロールしながら、受講する方にとって本当に役立つ形で情報を届けていきたいです。
今後も、過去の自分が仕事で困っていた経験を原点に、本当に役立つコンテンツを届けていきたいです。AIを活用する力と、人間にしか発揮できない価値の両方を伝えながら、一人でも多くの方が前向きに働ける学びをつくっていきます。
――今後、力を入れたい発信や研修の形はありますか。
オンライン講座は今後も継続していきます。一方で、動画を見てもらうだけでは、学んだことを実践する場が不足するという課題もあります。そのため、今後はハンズオン形式の研修や、リアルタイムで参加できる研修についても考えていきたいです。
また、これまで十分に取り組めていなかったSNSでの情報発信にも力を入れ、Xやnoteなど、発信できるチャンネルを増やしていきたいと思っています。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
毎日2時間ほどジムに行き、トレーニングをしています。運動習慣をつくり、体をメンテナンスすることは、仕事を続けるうえでも重要だと感じています。
また、あえて何もしない時間をつくることも大切にしています。私にとっては、運動している時間が、仕事から離れて何もしない時間にもなっています。休日も含め、毎日ジムに通いながら心身を整えています。