英語を「学ぶ」から「使う」へ 自分の言葉で伝える力を育てる英語教育

Thomas English株式会社 代表 トーマス 麻衣子氏

北海道旭川を拠点とするThomas English株式会社は、英語教室や体験型宿泊研修、オンラインでの言語教育を展開しています。代表のトーマス氏は、約20年にわたるアメリカでの生活や教育経験を活かし、英語を実際に使いながら考え、自分の意見を伝える力を育てています。法人化を機に、個人向け教育に加え、企業研修や英語講師の養成にも取り組もうとしています。

学んだ英語を実際に使える環境をつくる

――現在の事業内容について教えてください。

当社は3月に法人化し、北海道旭川を拠点に英語教室を運営しています。教室で英語を教えるほか、学んだ英語を実際に使う体験型宿泊研修を4月から始めました。以前から教室の生徒を対象に試験的な研修を行っており、今後は企業向けの研修にもつなげたいと考えています。

YouTuberラファエルさんが主宰するオンラインサロン「エシュロンビレッジ」では、コミュニケーション分野の講師を務めています。日本特有の「察する文化」を背景に、世代や価値観の違いから生じるすれ違いをテーマに、意図が正しく伝わる伝え方や、信頼関係を築くためのコミュニケーションについてお伝えしています。 

また、私が主宰する英語オンラインコミュニティ「English Output Lab」は、エシュロンビレッジとパートナーシップを結び、英語を通して「伝える力」「聴く力」「考える力」を育み、実践的なコミュニケーション力を身につける場を提供しています。 

また、アメリカ空軍専属の日本語講師として、オンラインで兵士に日本語を教える仕事も続けています。幼稚園で英語を教える機会もあり、現在は英語と日本語の両面から言語教育に関わっています。

――英語教育で大切にしていることは何ですか。

私は、「英語を学ぶ」のではなく、「英語を使って何かを学ぶ」ことを大切にしています。日本では、英検などの試験によって到達度を確認する機会は多い一方、実際に英語を話す場が十分ではありません。

会話で心に残るのは、必ずしも流暢な言葉ではありません。話す人の熱意や内容が相手に届くからこそ、記憶に残ります。そのため、英語力だけでなく、「自分は何が好きなのか」「なぜそう思うのか」を考え、自分の言葉で説明できる力を育てたいです。

7月からは、大人のための英語を学ぶためではなく、使うためのオンラインコミュニティ「English Output Lab」をスタートしました。ネイティブスピーカーとのフリートーク、テーマに沿ったディスカッション、朝活、学習方法を考えるグループコーチングを月4回行います。まず話してみること、自分の考えを言葉にすることを重視しています。

そして9月から大人と同じカリキュラムの「English Output Lab for TEENS」という、中、高校生のためのオンラインコミュニティを開始します。

アメリカで得た視点を日本の教育に活かす

――英語教育の仕事を始めたきっかけを教えてください。

私は長くアメリカに住んでいましたが、家族の事情で日本へ戻ることになりました。そのとき、日本社会に対して自分ができることは何かを考え、以前にも経験していた英語教室を再び始めました。それが約6年前です。

長期間アメリカで暮らし、アメリカ人に日本語を教える立場になったことで、以前とは異なる視点から日本の英語教育を見るようになりました。日本とアメリカの両方を知る私だからこそ見える違いを、英語教育に活かしたいと思ったことが事業の出発点です。

――アメリカで特に印象に残った学びは何ですか。

アメリカの大学で、学生たちのプレゼンテーション力の高さに驚きました。自分の考えを伝えるには、テーマを深く理解し、自分で調べ、内容を整理しなければなりません。私も大学でプレゼンテーションの方法を学び、その経験は現在の仕事や評価につながっています。

インターンを通して、アメリカでは小学校の頃から調査や発表を重ねていることも知りました。自分の意見を持ち、それを伝えることが、日常的な学びのなかに組み込まれています。英語教育でも、考えることと伝えることの両方を育てる必要があると考えています。

少人数で役割を分担し事業を支える

――現在の組織体制について教えてください。

現在は、私と取締役の2人を中心に、業務委託の方を含めた3人で運営しています。私は講師として授業や研修を担当し、問い合わせへの説明から契約まで対応しています。

取締役は、Instagramの運用や広告、経理、会計など、事業を支える業務全般を担当しています。講師業務と運営業務の役割を分け、少人数で事業を進めています。

――集客のために取り組んでいることはありますか。

現在の大きな課題は集客です。当社や私の活動を知ってもらうため、取材や登壇の依頼は、できるだけ受けるようにしています。

Instagramでは、朝活として毎朝6時半から15分間、英語を交えながら文化の違いなどについて話しています。オンライン広告も試し、複数の方法を組み合わせながら認知を広げています。

企業研修と講師養成を新たな柱にする

――今後、特に力を入れたい事業は何ですか。

1つは、英語を実際に使う2つのオンラインコミュニティを定着させることです。もう1つは、企業向けの研修や講座、講義を増やすことです。

企業向けには、英語だけでなく、異なる文化や世代の間で意図を正確に伝えるためのコミュニケーション研修にも取り組みたいです。将来的には、海外の投資家やパートナーと関わる企業に対し、交渉力や発信力を高める研修を提供することも視野に入れています。

――英語講師の養成にも取り組む予定ですか。

私は国際的な英語教授資格TESOLとアメリカの教員免許を取得しており、その経験を活かして英語講師の育成にも力を入れています。現在は養成講座の一期生を迎え、すでに講師として活躍する卒業生も誕生しています。 

日本では、特別な資格がなくても英語を教えることができます。しかし私は、心理学・教育学・英語教授法といった確かな土台を身につけた講師を育てることが、子どもたちの未来につながると考えています。現在は英語講師養成講座の一期生が学びを進め、すでに講師として活躍する人材も誕生しました。今後も、質の高い英語教育を担う講師の育成に力を注いでいきます。

――3年後の姿をどのように描いていますか。

売り上げについては、現在の3倍から5倍を目指しています。現状維持ではなく、個人向けの教育を深めながら、企業研修と講師養成を新たな柱として育てたいです。

経営や教育において大切にしたいのは、「Think Outside the Box」という考え方です。既存の枠にとらわれず、別の視点から物事を見る姿勢を意味します。

日本にいれば日本の考え方が、北海道にいれば北海道の考え方が当たり前に見えます。しかし、外から見ることで、異なる選択肢や価値観に気づくことができます。これからも英語を使う機会をつくりながら、一人ひとりが自分の考えを持ち、自分の言葉で伝えられるようになるための道をつくっていきます。

手を動かして1つのものを形にする

――休日はどのようにリフレッシュしていますか。

アメリカにいた頃は、犬のアジリティに力を入れていました。犬が障害物を跳んだり、ポールの間を通ったりする競技で、国際大会に出場した経験もあります。今年は仕事が忙しく、犬も年齢を重ねたため休んでいますが、長く続けてきた大切な活動です。

家で過ごすときは、サイコスリラーやミステリーの洋書を読んでいます。また、ジュエリーづくりも好きです。以前は火を使ってシルバージュエリーをつくっていましたが、現在は細い紐を編み、石を組み合わせるマイクロマクラメの技法で、ブレスレットやネックレスをつくっています。

手間をかけることは、相手を思いやることにつながると考えています。

英語も同じです。流暢に話すことだけを目指すのではなく、相手を理解し、自分の思いを伝えようとする姿勢が、本当のコミュニケーションを生み出します。

だからこそ私は、完成したものだけではなく、その背景にある思いや、形になるまでの過程を大切にしています。英語教育でもものづくりでも、時間をかけて育まれたものには、人の心を動かす力があります。

これからも教育とものづくりの両方を通して、人と人をつなぎ、思いが伝わるコミュニケーションを育むことを大切にしながら、価値あるものを届けていきます。

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