開発者に寄り添う音声AIで、日本語技術の可能性を広げる

株式会社DolphinAI 代表取締役 朝倉 匡廣氏

株式会社DolphinAIは、音声認識、音声合成、発音評価などの自社技術を活用し、クラウドAPIや関連プロダクトを提供しています。教育、コールセンター、AI議事録、翻訳など幅広い領域で活用され、現在は翻訳会議システムをはじめとするハードウェア製品にも事業を広げています。代表の朝倉匡廣氏は、技術者としてキャリアをスタートし、音声AIの技術営業や事業開発を経験してきました。今回は、開発者に特化したサービスづくりへの思い、起業の背景、顧客との向き合い方、今後の展望について伺いました。

開発者とともに、声の未来をつくる

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社は、音声対話AIのプラットフォーム事業を行っています。音声認識、音声合成、発音評価といったコア技術を活用したクラウドAPIと、関連するプロダクトを提供しています。

最初にリリースしたのは教育分野向けのサービスです。英語の発音を評価する機能に加え、日本語の発音評価にも取り組んでいます。日本語の発音を評価できるサービスはまだ多くありません。外国人材の採用が増える中で、日本語教育の分野にも技術を生かせると考えています。

そのほか、コールセンターやAI議事録、翻訳などの分野でも利用されています。現在は、音声AIのAPIだけでなく、翻訳会議システムなどのハードウェア製品にも事業を広げています。

――貴社のサービスの特徴を教えてください。

音声AIに関する技術は、基本的にすべて自社で開発しています。開発部隊は海外にあり、日本では市場開拓を進めながら、日本語に関するコア技術を国内の大学と共同で研究開発しています。

また、当社のサービスでは、お客様の重要な音声情報を扱います。コールセンターや会議の音声には個人情報や機密情報が含まれるため、セキュリティを非常に重視しています。ISO 27001やSOC 2などの認証を取得し、暗号化を含め、企業からの確認に対応できる体制を整えています。

――世界的な企業も参入する中で、どのように差別化していますか。

音声AIのAPIは、欧米の大手企業からも数多く提供されています。その中で、当社がどのように違いをつくるかは大きな課題です。

私たちが重視しているのはまずコストパフォーマンスです。私たち自社開発の音声AIエンジンをCPU推論に最適化することで、GPU推論を前提とする競合サービスに比べ、チューニングコストおよびランニングコストを大幅に削減できます。これにより、リアルタイム音声認識APIを1時間あたり72円で提供可能です。一般的な音声認識APIが1時間あたり約1USD前後で提供されるケースが多い中、弊社は高精度・低遅延を維持しながら、より導入しやすい価格を実現しています。

また、実際に利用しているお客様の課題を深く理解し、プロダクトの進化に反映することです。例えば、リアルタイム音声認識で複数人の声を分離したり、日本語と中国語など複数の言語が使われる会議を文字起こしし、要約できるようにしたりと、細かなニーズを掘り下げています。

大手企業が力を入れにくい細かな領域でも、お客様が困っているのであれば、私たちは丁寧に取り組みます。お客様の課題を解決し続けることが、当社の優位性につながると考えています。

経験を力に、起業の道へ

――これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

私は中国の大学を卒業後、日本文化が好きだったこともあり、日本企業への就職を選びました。新卒で富士通に入り、プログラミングを担当しました。その後、ベルシステム24でプロジェクトマネージャーとして案件管理などを経験し、アドバンスト・メディアで音声AIの技術営業と事業開発に携わりました。

アドバンスト・メディアに入るまでは、純粋な技術者としてキャリアを積んでいましたが、同社では日本の音声AI技術やソリューションを海外へ販売する仕事を経験しました。音声AIの領域には長く関わり、技術だけでなく、営業や事業開発、お客様への提案まで経験できたことが、現在の会社につながっています。

日本の音声AIを海外へ展開する事業が難しくなる中でも、私はこの業界が好きで、これまで培ったノウハウもありました。それなら自分で起業し、日本市場で音声AIの事業を続けようと考えたことが、会社を立ち上げたきっかけです。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

嘘をつかないことです。お客様に対して、できないことはできない、できることはできると正直に伝えます。ただし、現時点ではできなくても、実現できる可能性がある場合は、詳しく話を聞いて挑戦し、改めて提案します。事業では信頼関係が最も大切です。一度信頼を壊してしまえば、その後の関係は続きません。目の前の要望に安易に「できます」と答えるのではなく、誠実に向き合う姿勢を大切にしています。

進化を続け、声の未来を拓く

――今後、会社としてどのような姿を目指していますか。

まずは会社を継続させ、長くお客様へ価値を提供することが大切です。技術は常に進化しているため、私たち自身も進化し続けなければなりません。

当社のお客様は、技術開発に携わる方が中心です。そのため、開発者が音声AIのベンダーを選ぶ際に、品質とコストパフォーマンスの両面で選んでもらえるサービスを継続して提供したいと考えています。

社内では、日本語の音声AIでナンバーワンを目指すと話しています。現時点では強く言える段階ではありませんが、実績と市場での認知度を積み重ね、日本でトップレベルの音声AI企業だと言える存在になりたいです。

――現在、課題として捉えていることはございますか?

大きな課題の一つが、AIが実際には話していない内容を生成してしまうハルシネーションです。会議中に誰も話していない場面や、騒音が大きい場面で、AIが存在しない発言を文字としてつくってしまうことがあります。一般的な利用では大きな問題にならない場合もありますが、企業の重要な情報を扱う場面では深刻です。そのため当社では、話していない内容を勝手に生成しない音声AIを目指しています。精度の高いラベル付きデータへの継続的な投資や、音声認識の細かな機能の研究開発を進めています。

――これから挑戦していきたいことを教えてください。

音声認識、音声合成、発音評価といった技術をさらに磨き、さまざまな業界の課題を解決していきたいです。特に、日本語の発音評価は、外国人材の日本語教育に役立てられる可能性があります。英語の発音評価も含め、教育分野でできることはまだ多くあります。

また、多言語の会議を文字起こしし、要約できる技術や、翻訳会議システムなどのプロダクトも進化させていきます。開発者の使いにくさや、お客様の困りごとを一つずつ解決しながら、日本語の音声AIを支える基盤をつくっていきたいです。

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