救える命を、技術でつなぐ――AI・XR・ドローンで再設計する捜索救難の未来

株式会社AEROSALVA 代表取締役社長 CEO 澤谷 範之氏

株式会社AEROSALVAは、AI・XR・ドローンなどを統合し、海上での迅速な捜索救難を支えるシステムを開発しています。その原点にあるのは、海上自衛隊で数多くの救難任務に携わった澤谷氏の「技術があれば救えた命がある」という実感です。本記事では、事業の特徴や創業の背景、経営の軸、今後の展望について伺いました。

AI・XR・ドローンを統合した新たな捜索救難システム

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、AI・XR・LTE・低軌道衛星通信・ドローンなどを組み合わせた、統合的な捜索救難システム「AEROSALVA SAR SYSTEM」の研究開発や運用、支援を行っています。SARは「サーチ・アンド・レスキュー」、つまり捜索救難を意味します。

まずは海上での活用を想定しており、事故発生後に要救助者をできるだけ早く発見し、救助につなげる仕組みをつくろうとしています。複数の技術を情報融合によって結び、一つの仕組みとして機能させます。

――AEROSALVA SAR SYSTEMの特徴や強みはどのような点にありますか?

救助率を左右するのは、事故が起きてから官公庁が本格的に動き出すまでの時間です。海上保安庁や自衛隊の本格的な出動には、最低でも1時間、場合によっては1時間半ほどかかります。

私がこだわっているのは、この時間を空白のままにしないことです。その間を自助で補えれば、救える命は増やせます。現場で得た知見と、AIや通信、ドローンなどの技術をつなぎ、実際に使える形へ落とし込んでいる。それが当社の強みです。 

海上自衛隊での35年が生んだ「救える命」への使命

――海上自衛隊に入隊したきっかけを教えてください。

父方はかつて自動車整備工場を営んでおり、母方も商売をする家系でした。その流れで、私も不本意なまま、家業につながる進路を選びました。転機になったのは、父と進む道をめぐって考えが大きく違ったことです。それをきっかけに、その道を離れました。

もともと航空・宇宙分野や福祉活動に関心があったこともあり、自分に合う道を調べていく中で、自衛隊が最も適していると感じたんです。私にとっては前向きな決断でした。 

――海上自衛隊での経験は、現在の事業にどのように生かされていますか?

海上自衛隊では、P-3CやP-1哨戒機の搭乗員を務めました。

監視任務のほか、海難救助や大規模地震への対応にも携わり、東日本大震災の際にも飛行しています。

また、航空機搭載電子システムや関連システムなどの研究開発、捜索救難計画も経験しました。退官後は、民間や政府系の衛星システムの運用や研究開発にも関わっています。現場、計画、研究開発という複数の経験をつなげられたことが、現在の事業に生きています。 

――起業や経営につながった背景には、どのような経験がありましたか?

幼い頃から経営を身近に見ていたことは、大きな背景の一つです。

自衛隊では、防衛産業との関わりや研究開発などを通じて、組織全体を見渡す機会もありました。経営そのものではありませんが、「組織はどうあるべきか」と考え続けてきたことが、今の判断軸につながっています。

会社は2026年3月に設立し、現在は一人で事業を進めています。 

年齢や社歴ではなく「何を生み出したか」を重視

――経営の軸となっている価値観を教えてください。

私は、年齢や社歴の長さ、声の大きさには価値を置いていません。大切なのは、何を生み出したのかという点です。

どのように新しい発想を持ち込み、それを正しく具現化したのか。そこを重視しています。昔ながらの日本的な考え方とは合わない部分もありますが、肩書きや形式よりも成果と実行を見ることが、私の経営の軸です。 

――今後、一緒に働きたいのはどのような人材ですか?

まず、捜索救難という活動に理解がある方です。そのうえで、私に代わっていつでもCEOを務められるほどの覚悟と力を持つ人を求めています。

扱う分野が多いため、一定の知識やスキルは欠かせません。同時に、創業期には気持ちや信念も重要です。私の考えに賛同し、事業を任せられるほど信用できる方と働きたいですね。

候補者は4名ほどおり、資金調達が進み次第、順次採用する予定です。

海上救難から大規模災害、宇宙開発へ広がる構想

――今後目指しているゴールや、新たに挑戦したいことを教えてください。

現在開発を進めるAEROSALVA SAR SYSTEMは、あくまでも最初の一歩です。日本では海難事故が年間約1,800件発生し、その多くが沿岸から約24km以内で起きています。年間約200名が命を落としており、冬の海では、人が耐えられるのは15分から20分ほどということもあります。

まずは発見までの時間を短縮し、一人でも多く救助につなげたいと考えています。将来的には大規模地震や津波への対応にも広げていく方針です。

さらに、危険地帯でのドローン活用や、海洋開発、宇宙開発への応用も見据えています。最初の1年は海上のシステムに注力し、2、3年先から展開を広げる計画です。 

――事業を進める上で、現在どのような課題を感じていますか?

大きな課題は資金調達です。日本では、一定の成果が見え始めた事業には資金が集まりやすい一方、立ち上げ初期の段階では支援を得にくいと感じています。

良いアイデアがあっても、最初の一歩を後押しする資金がなければ形になりません。当社も事業を前進させる資金を必要としており、国内に加えて米国のVCとも接点を持ちながら可能性を探っています。 

利益より人命を優先する実直な経営

――経営を続ける中で、これだけは譲れないという想いを教えてください。

何事にも実直であることです。端的に言えば、嘘や偽りは絶対にあってはならないと思っています。

この事業で最も大切なのは、利益よりも人命です。人としてあるべき姿を守り、正しい対応を続ける。それを貫けば、結果は後からついてきます。ここだけは譲れません。 

――仕事から離れた時間は、どのようにリフレッシュしていますか?

ジムでランニングをするなど、体を動かしています。近くの公園を散歩することもありますし、読書も好きですね。

現在は海に比較的近い場所に住んでいることもあり、海岸線を歩くこともよくあります。体を動かす時間が、気持ちの切り替えになっています。 

――読者や社会に向けて、伝えたいことはありますか?

東日本大震災の直後は、多くの人が危機管理について考えました。しかし十数年が経つと、当時の感覚は少しずつ薄れていきます。次の災害が起きたとき、また準備不足を悔やむことになりかねません。

喉元を過ぎれば熱さを忘れるのではなく、日頃から危機管理について考え続けることが大切です。行政に任せきりにせず、民間の立場からも備えや意識を継続的に伝えていく必要があります。

私もその一端を担い続けたいと考えています。同じ想いを持つ方と、一緒に取り組んでいければと思います。 

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。