顧客と技術者の信頼を積み重ね、特注ソフトウェアをゼロからつくる

株式会社星進エンジニアリング 代表取締役 星見 定広氏

通信、計測制御、データ管理システム、マイクロコンピューター応用システム、組み込みソフトウェアなどの設計・開発を手がけています。顧客ごとの要望を丁寧にくみ取り、既存のパッケージを土台に改造したり、必要ならゼロから形にすることが事業の中心です。また、自社又は他社が作成したシステムの老朽更新も行います。ソフトの「特注」にこだわる星見氏に、開発で大切にしていることや経営者になったきっかけ、リフレッシュ方法などについて伺いました。

顧客の要望に向き合い、ゼロから最適なシステムをつくる

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、お客様の要望に合わせた特注ソフトウェアを開発しています。最初に詳しくお話を伺い、要望や業務内容を理解した上で見積もりを行います。内容に合意いただいてから、開発を進める流れです。

既存のパッケージを修正して行く場合や既存システムの老朽更新、ゼロからのつくり込みも行います。そのため、時間も費用も必要です。最初の段階では、当社にもお客様にも、完成形がすべて見えているわけではありません。

――特注ソフトウェアの開発で大切にしていることは何ですか。

仕様書だけでは表現しきれないニュアンスがあります。装置を実際に動かしたときの手順やタイミングが正しいかどうかも、完成したシステムを使っていただかなければわからないケースは少なくありません。

開発前には綿密に仕様を検討し、開発後も確認や微調整を重ねます。お客様に安心して依頼していただくため、納品後1年間、当社の瑕疵によるトラブルについては無償で対応させていただいています。

現場でソフトウェアをつくり続けるために選んだ経営の道

――経営者になったきっかけを教えてください。

私は、もともとソフトウェアエンジニアとして、現場で仕事を続けたいと考えていました。以前勤めていた企業で管理職を任されることになり、現場を離れて人を動かす立場になることに違和感を覚えたことがきっかけです。

転職を考えましたが、同じチームで働いていた仲間も一緒に退職することになり、最終的に5人になりました。5人全員を受け入れてくれる企業はなかなか見つかりません。それなら自分たちで企業を設立しようということになりました。

言い出した私が社長を務めることになりましたが、経営者になること自体が目的ではありません。現場でソフトウェアをつくり続けるための手段として設立しました。現在も、私自身がプログラムを組んでいます。

――これまでで特に印象に残っている仕事はありますか。

半導体製造装置メーカーの新規開発に、試作段階からソフトウェア部門として参加した案件です。お客様にとっても初めての取り組みで、社内のリソースをあまり使わず、外部の力を活用して進めたいという案件でした。

新規開発では、最初から予算や工程を正確に見通すことは難しいものです。実際に取り組むメンバーも必死で、当社も試行錯誤を重ねながら進めました。現在は同じ進め方はできませんが、未知のものをお客様と一緒につくり上げた経験として、強く印象に残っています。

否定せず、細かく管理せず、技術者一人ひとりに任せる

――企業として一番大切にしていることは何ですか。

一番大切なのは社員です。新しいものをつくる仕事には、心理面、納期、費用の面で厳しさがあります。だからこそ、各自が自分の仕事を自分でコントロールし、納得しながら進められる環境が必要です。

当社の社員は、最低でも10年以上、長い者では20年以上この仕事に携わっています。技術だけでなく、お客様の考えや要望をくみ取りながら進める力も必要です。人がいてこその企業ですから、長く働ける環境を整えることを経営の中心に置いています。

――社員とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。

まず、相手を否定しないことです。同じ企業で同じような仕事をしていても、社員それぞれで価値観は異なります。生活の基盤も違えば、見ている世界や物事への感じ方も変わるものです。

実際、経理や営業など、業務の進め方にもそれぞれの考えがあります。ただ、基本的には、やりたい人が自分のやり方で進めればよいというのが根本的な考え方です。問題が起きたときに話し合いますが、最初から細かく管理することはしていません。私のやり方が常に最善とは限らないため、各自の判断を尊重しています。

事業の柱を増やし、安定して仕事を続けられる企業へ

――現在、経営上の課題となっていることは何ですか。

仕事の相談は複数いただいていますが、実際の案件としてなかなか始まらないことが課題です。老朽更新の相談では、現在の設備を使い続ければ、あと1年、2年は動く可能性があります。一方、壊れたときには交換できるハードウェアがなく、一気に困ることも考えられます。

開始時期が2か月、3か月、半年と延びる一方で、複数の案件が同時に始まれば、8人の企業では対応しきれないかもしれません。先々の相談はあっても、実作業がいつ、どの程度発生するのかが見えにくい状況です。

――今後の展望について教えてください。

大きく事業を広げるというより、継続して取引できるお客様を増やし、事業の柱を複数持つことを目指しています。コロナ禍を経験し、売り上げに占める割合が大きい取引先の仕事が止まると、小さな企業は大きな影響を受けることを実感しました。

そこで、今年はホームページを新しくしたり、過去に接点を持った企業へ電話やメールで改めて連絡したりするなど、地道な活動を続けています。新しいお客様と接点を持ち、まず一度仕事をして、お互いを知る機会を増やすことが必要だからです。

投資の中心は人です。当社の費用の多くは人件費であり、無理をしてでも毎年ベースアップを行うなど、まず社員に還元することを大切にしています。

秋の山を1人で歩き、自分のペースを取り戻す

――休日はどのようにリフレッシュしていますか。

アウトドアが好きで、可能なら山歩きをしています。暑い時期は厳しいため、秋から冬の入り口くらいが一番好きです。木々の葉が落ちてくると遠くまで景色が見えるようになり、空気も澄みます。風も涼しく、歩いて汗をかくとちょうどよいくらいの気候です。

基本的には1人で歩きます。自分のペースで進み、好きなときに休めるからです。1日で7~8時間ほど歩くこともあります。自宅から少し歩けば緑のある場所に行けるので、歩ける範囲を自分のペースで回っています。

――これから経営を始める方へ、伝えたいことはありますか。

まずは、やってみなければわからないということです。準備を始めればきりがありません。最初からすべてを整えようとせず、少しずつ進めることが大切だと思います。

また、一緒に取り組める仲間がいるに越したことはありません。私自身も、仲間と一緒に企業を設立しました。そして、事業を続けるためには資金も重要です。挑戦する気持ちを大切にしながら、必要な資金を考え、仲間とともに無理のない形で一歩ずつ進めることが大切です。

当社も、仲間とともにさまざまな課題と向き合いながら、現在の事業をより良くしていきたいと思っています。

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