幅広い設計力と学び続ける姿勢で、建築とまちづくりの可能性を広げる――ダイス設計の挑戦

株式会社ダイス設計 代表取締役 谷口 充良氏

株式会社ダイス設計は、建築設計を中心に、施工段階のチェックを行う工事監理などを手がけています。2001年の創業以来、注文住宅から複合商業施設まで規模や用途を限定せず、幅広い建築に携わってきました。専門資格の取得を重ねる一方、都市計画やまちづくりへと視野を広げ、現在はAIの活用や地域に根差した新たな取り組みにも挑戦しています。代表取締役の谷口充良氏に、これまでの歩みや会社の強み、今後の展望について伺いました。

幅広い建築に対応する設計力と専門性

――現在の事業内容について教えてください。

主な仕事は建築の設計と、施工段階で内容を確認する工事監理です。創業したのは2001年で、それ以前はゼネコンで設計に携わっていました。

独立してからは物件を特定の種類に絞らず、注文住宅から複合商業施設まで、さまざまな規模の建築を手がけてきました。大きな組織ではないからこそ、機動力を持って対応できることも当社の特徴だと考えています。

――他社と比べた際の強みは、どのような点にありますか。

建築設計に関する資格を幅広く取得していることです。構造設計一級建築士、設備設計一級建築士に加え、都市計画を専門分野として技術士(建設部門)も取得しています。

また、電子機器などが発する電磁波や、外部から受ける電磁波の影響を試験するEMC(電磁両立性)試験施設(電波暗室)に関する設計を繰り返し経験してきたことも強みの一つです。この分野は経験できる物件自体が多くないため、継続して携わってきた実績は当社ならではの専門性につながっていると思います。ドン・キホーテの物販店舗設計など、長年継続してご依頼いただいている仕事もあります。また、基本的にはゼネコン経由ではなく、エンドユーザーである企業から直接ご依頼をいただいています。

必要に迫られた資格取得が、学び続ける原点に

――創業されたきっかけを教えてください。

ゼネコンで設計をしていた頃、先輩から一緒に独立しようと声をかけてもらったことがきっかけです。一度会社を辞め、その先輩と仕事を始めましたが、自分が思い描いていた建築設計の仕事とは少し方向性が違いました。

ちょうど同じ時期に、以前の会社で設備設計を担当していた人も退職していました。そこで「二人で創業しよう」という話になり、現在の会社を立ち上げました。

――多くの資格を取得するようになった背景には、何があったのでしょうか。

大きなきっかけは、2005年に発覚した構造計算書の偽装問題です。その後の法改正により、一定規模以上の建築物では、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士による設計や法適合確認が求められるようになりました。当社が扱う物件にも該当するものが多く、自分で資格を持っていなければ外部の有資格者に依頼する必要がありました。

それなら自分で取得しようと考え、構造と設備の両方を勉強しました。先輩方に教えてもらいながら資格を取得できたことで、「勉強すれば何とかなる」という感覚を持てるようになったんです。結果として、意匠だけでなく構造・設備まで含めて建築全体を横断的に考える力につながったと思っています。

その後、技術士という資格を知り、都市計画分野で受験しました。さらに都市計画を深く学びたいと思い、働きながら東京大学の大学院にも通いました。大学院では先生方だけでなく、大手デベロッパーや建設会社、金融、行政など、さまざまな分野の方々と接点を持つことができました。そこで築いた人とのつながりは、現在の仕事にも生きています。

経験と意欲を重視し、学び続けられる人と働く

――採用では、どのような方と一緒に働きたいと考えていますか。

以前は一級建築士の資格を持っている方を中心に考えていましたが、今は必ずしも資格だけに限定していません。実際に、社会人として働いた後、建築を学ぶために通信制の大学に通っている方を採用しました。

その方はもともと美術を学び、日本画の修復に関わる仕事も経験しています。絵を描く力やデザインへの感覚があり、現在も資格取得に向けて勉強しています。そうした姿勢を見て、資格を取得済みかどうかだけではなく、その人自身の経験や学ぶ意欲を見ることが大切だと感じるようになりました。

――社員の育成では、どのような取り組みをしていますか。

現在は週に一度、私自身が一級建築士の受験に向けた勉強を手伝う時間を設けています。私自身も働きながら大学院に通った経験がありますから、働きながら学び続けることは大切だと思っています。

一方で、建築の世界だけに閉じるのではなく、一人ひとりが自分の得意分野を持ちながら、ある程度オールマイティに仕事ができることも重要です。そのためには、さまざまな物件に挑戦し、経験を積める環境をつくっていきたいですね。

AIで定型業務を効率化し、人にしかできない仕事へ時間を使う

――今後、会社として取り組んでいきたいことを教えてください。

以前は人数を増やし、構造設計や設備設計など、それぞれの専門担当者をそろえていくことを考えていました。ただ、この3年ほどでAIが大きく進化し、考え方も変わってきています。

設計業務には、比較表を作ったり、提案書のための画像や文章を用意したりと、さまざまな作業があります。こうした部分はAIを活用することで効率化できるようになってきました。定型的な作業や資料作成に使う時間を減らし、その分を新しい物件への挑戦や、クリエイティブな仕事に使えるようにしたいと考えています。

一方で、どこまで自社で投資して仕組みをつくるのか、すでにあるサービスを活用するのかは模索しているところです。外部の専門家にも相談しながら、投資効果を見極めていきたいと思っています。

AIはあくまで道具です。AIによって情報整理や生成が容易になるほど、人間自身が現地へ行き、五感で感じ、自分自身の経験を蓄積することが重要になると思っています。山や川へ行くこともそうですし、いろいろな地域で仕事をすることも、新しい感覚を得る機会になります。AIを使いこなしながら、人にしかできない経験や発想を大切にできる人たちと仕事をしていきたいですね。

建築の枠を越え、地域に根差したまちづくりへ

――まちづくりの分野では、どのような展開を考えていますか。

現在、地元の和歌山市で、紀州東照宮の和歌祭をはじめとする地域文化を次世代へ継承するための拠点づくりをお手伝いしています。こうした地域での活動を続けながら、将来的には大学院で築いたネットワークも生かし、和歌山市で新たな地域活動や事業につなげていきたいと考えています。

地域で何かを始めるのであれば、外から提案するだけではなく、自分たち自身も場所を借りて活動し、地元の方々にも参加していただくことが大切です。その場所が地域の人の居場所になり、地域のことを理解しながら一緒に考えていける形をつくりたいと思っています。

仕事は、嫌だと思いながら続けていると苦しくなります。やりたい仕事を実現するためには、どうしても多くの定型的な作業も必要になりますが、そこをAIで少しでも効率化しながら、自分たちが面白いと思えることに時間を使っていきたいですね。

そして、この記事を読んだ方にも、「自分も新しいことに挑戦してみたい」、「自分の仕事をもっと面白くしてみたい」と感じてもらえたらうれしいです。これからも、建築単体だけでなく、それが建つ地域や、そこで活動する人まで含めて考える設計をしていきたいと思っています。

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