合同会社アカンパニー代表 渥美祐次郎 氏
メーカーの設計者から実業団のコーチ、さらにはコンサルタントという異色のキャリアを経て、栃木県に移住し、地域密着型の陸上イベント事業を立ち上げた渥美祐次郎さん。
誰もが気軽に「走る楽しさ」を体験できる機会を提供しながら、教育事業やテクノロジーの活用にも取り組んでいます。
今回は、キャリアの転機や事業への想い、そして今後の展望についてお話を伺いました。
地域に根ざした、気軽に楽しめる陸上イベントを
合同会社アカンパニーの現在の事業内容を教えてください。
陸上競技のイベント運営と、個別指導や教室といった教育事業を展開しています。栃木に移住後、「地方でも気軽に陸上を楽しめる場を作りたい」と考えて設立しました。
地域の陸上協会の方々や現役選手の協力を得て、参加しやすく、継続的に関われるイベントを意識しています。
企業として掲げる理念や大切にしている価値観はありますか?
明文化している理念はありませんが、「やりたいこと」「求められていること」「できること」という3つの軸を大事にしています。自分の経験や陸上への情熱を、地域のニーズに沿ったかたちで活かすこと。それが、地域活性化や人材育成にもつながると信じています。
異色のキャリアが今につながっている
設計者、実業団コーチ、コンサルタントという経歴は非常にユニークですね。
大学では機械工学を専攻し、ショベルカーの設計者として社会人をスタートしました。その後、東京メトロ陸上部から声をかけていただき、実業団コーチに転身。東大とトレーニングの共同研究も経験しました。結婚を機にライフスタイルを見直し、コンサルタントとして業務改善プロジェクトにも携わった経歴があります。
その多彩な経験が現在の事業にどう活きていますか?
課題発見と解決、プロジェクト運営のスキルは、事業運営に欠かせません。また、競技者・指導者・企画者という複数の視点があることで、単なるイベント運営にとどまらず、地域と人をつなぐ事業設計ができていると感じます。多様な現場を経験したからこそ、柔軟な対応力も培われました。
支えてくれる人と、信頼でつながる
現在は「一人会社」と伺いましたが、協力体制について教えてください。
社員はいませんが、地域の方々や選手が「仲間」として運営を支えてくれています。信頼関係を大切にし、任せる部分は任せる。貢献に対してはきちんと感謝を伝えるようにしています。主従関係ではなく、フラットな関係性を築くことで、皆が気持ちよく関われる環境を目指しています。
印象に残っているエピソードはありますか?
一度来てくれたお子さんが、次のイベントに友達を連れて来てくれた時ですね。参加者の笑顔や「楽しかった」という言葉が、事業継続の原動力です。赤字で悩んだ時期もありましたが、その言葉が背中を押してくれました。
陸上の裾野を広げる、新たな挑戦へ
今後の事業展開や挑戦について教えてください。
イベントの質を高めるために開催頻度を見直しつつ、教育事業の拡大を進めています。また、AIによる動作解析アプリの開発も進行中です。全国どこからでも指導を受けられる環境を整え、オンラインとオフラインを融合させた新たな事業モデルを構築したいと考えています。
最終的に目指すビジョンは?
私が現場にいなくても事業が回る、持続可能な仕組みを築くこと。そして、陸上をもっと身近な存在にし、地域の人たちが走ることを通じて元気になれる場をつくっていきたいです。地方発の小さな試みが、やがて全国に広がるような未来を描いています。
「3つの軸」で、自分の可能性を切り拓く
キャリアや起業に関心のある方へ、メッセージをお願いします。
「やりたいこと」だけでなく、「求められていること」と「できること」を見つめ直すことで、自分にしかできないことが見えてきます。強みに気づき、それを誰かのために活かせたとき、仕事はもっと楽しく、意味のあるものになるはずです。自分を信じて、一歩踏み出してみてください。