下町の価値を未来へつなぐ――人と街に寄り添う不動産経営

株式会社日本不動産販売 代表取締役 村田 和忠氏

東京都足立区・北千住を拠点に、店舗付き住宅やビルなど“下町ならでは”の物件に特化した買い取り・再生事業を展開している株式会社日本不動産販売。街の歴史や暮らしに寄り添い、建物の価値を丁寧に引き出す姿勢には、代表・村田和忠氏の独自の哲学が息づいています。今回は、事業への想いから社員の方々との向き合い方、そして未来への展望についてお話をうかがいました。

下町に根ざした不動産事業のこだわり

――貴社の事業内容について教えてください。

当社は足立区・北千住を中心に、店舗付き住宅やビル、下町エリアの物件をメインに取り扱っています。自社で買い取り、リノベーションを施して再販するのが主軸ですが、賃貸仲介や管理なども依頼があれば対応します。特徴として、マンションのリノベーションを中心にする会社が多い業界の中で、当社は商店街の店舗付き住宅や長く地域に根付いた建物を主に引き受けている点が強みです。

高齢化により店を閉じざるを得ない方も多く、そうした方の「最後のバトン」を引き継ぐような気持ちで取り組んでいます。買い取った物件には、地域に合う商売をされる方に入っていただいたり、時には私自身が食事に伺って関係を深めたりと、売った後も長くつながるケースが多いですね。

――そのスタイルならではのやりがいや価値はどこにありますか。

建物だけでなく、人の歴史ごと引き受ける仕事だと感じています。その街に馴染む業態を考えたり、再生後の店舗に通い続けたり、物件を通して「人の人生」に関わる面白さがあります。私自身、不動産業は誠実に向き合えば必ず評価される仕事だと思っていますし、長く続く紹介の多さもその証だと感じています。

経営者になった理由と、転機となった出来事

――不動産業界で独立されるまでの経緯を教えてください。

もともとは野球を続けてきて、大学卒業後は指導者を目指しましたが、当時は採用が極端に少なく断念しました。その後スポーツ関係の仕事に就いたのですが、周囲が大舞台で活躍する姿を見て「自分も稼ぎたい」と思うようになり、不動産業界へ飛び込みました。

数社で経験を積む中で、「この仕事は自分でやるからこそ面白い」と強く思い、独立を決意。そこから約17年間、不動産一筋でやってきました。

――経営の中で特に印象に残っている出来事は何ですか。

良いことも悪いこともありましたが、忘れられないのは独立して最初にご購入いただいたお客様です。イタリア料理店を営む方で、今でも年に数回通い続けています。売却も任せていただき、長くご縁が続いていることが本当に嬉しいですね。

反対に、創業当初は従業員の裏切りや金銭トラブルなど苦い経験もしました。それを経て、お金を追うのではなく「お客様のために正しい仕事をする」ことが最終的に売上につながると実感しました。

社員との向き合い方と組織づくり

――5〜10名規模の組織と伺いました。社員の主体性をどう育てていますか。

今は必要以上の指示は出さず、「自分で考えて動け、失敗しても責任は取る」と伝えています。特に不動産の買い取りは、最初の一手の判断がすべてを左右します。最後は人間性や熱量が勝負なので、自分で判断し、相手から信頼を得られるような人に育ってほしいと思っています。

採用においても「紹介が自然と集まる人材かどうか」を重視します。地元の中小不動産業者さんに毎日顔を出し続けるなど、泥臭い営業ができるかどうかもポイントですね。

未来への展望――“下町の価値”を守りながら広げる

――今後の展開についてどのように考えていますか。

最近は世田谷や目黒などのおしゃれなエリアからも仕事の依頼がありますが、やはり自分が守りたいのは下町の景色です。外国人観光客が日本らしさを感じるのも、浅草のような下町だと思います。

だからこそ、古い建物をただ壊して新築にするのではなく、使える部分はできる限り残したい。街並みや空気感を守りながら、次の世代につないでいける再生を続けていきたいと思っています。また、スポーツ振興など地域密着型の活動も広げ、関わる人たちが笑顔になれる輪を大きくしていきたいです。売上至上主義ではなく、「関わる人が幸せでいられる会社」であることが私にとって何より大切です。

仕事を続けるためのリフレッシュと視野の広げ方

――趣味やリフレッシュ方法はありますか。

どうしても全部仕事につながってしまうんですが……ただ、その“仕事につながる時間”が、自分にとっては一番のリフレッシュになっているのかもしれません。

うちのような中小企業の社長って、完全に休むという感覚があまりなくて、365日なにかしら考えていると思うんです。でも、それが苦ではないんですよね。自然と、仕事につながる人と会ったり、話したりしている時間が楽しいというか。

それと、最近は“地域を知る旅”が自分の中で大きな楽しみになっています。採用では東北や関西、沖縄など、いろんな地域の出身者が来てくれるんですが、土地柄や県民性って本当に違うんですよ。

例えば東北の子は真面目で責任感が強い、関西の子は人との距離の詰め方がすごくうまい、沖縄の子はのんびり穏やかなタイプが多い、など。それぞれの良さがあります。

だからこそ、その地域を深く知っておきたいと思うようになりました。旅行といっても、観光でサッと行くのではなく、最低でも一週間くらい滞在して現地の人と話します。「この地域はこういう空気があるんだな」と肌で感じることが大事だと私は思います。

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