無人運営×AIで切り拓く新しい教育モデル──エイゴル代表・藤井哲志氏が描く「100年先を見据えたビジネス」の道
エイゴル 代表 藤井 哲志氏
オンライン英会話スクールを“無人で運営する”──そんな独自のモデルで注目を集めるエイゴル。立ち上げたのは、大手コンサルティングファーム出身で、長年にわたり事業企画・新規事業の専門家として活躍してきた藤井哲志氏です。ビジネスを「人を助けるための役割分担」と捉え、フィリピンの講師支援やAI化への挑戦など、常に未来の市場を見据えながら歩んできた藤井氏に、現在の事業、経営観、そしてこれからの展望を伺いました。
目次
フィリピンの優秀な人材が“家族と暮らしながら働ける場”をつくりたかった
――現在の事業を始められた背景や理念を教えてください。
英会話スクールを作りたいというより、フィリピンの優秀な人たちが出稼ぎに行かなくても生きていける仕組みをつくりたいというのが原点です。交流のあるフィリピンの先生から「今の働き方では家族と離れて暮らさざるを得ない」と聞き、それなら自分で環境を作ろうと思いました。
当時はオンライン英会話がほとんどなかった時代です。私はもともとコンサルとして事業企画が趣味のようなものだったので、「じゃあ作るか」とサイトを手打ちで構築し、テストしながら無人で回る仕組みまで持っていきました。今も理念は変わらず、**“困っている人が、家で働ける仕組みをつくる”**が中心にあります。
大手がまねできない“無人・高原価率モデル”が強み
――エイゴルならではの強みはどこにありますか?
最初から “大手が絶対に価格で勝てない構造をつくる” ことを目的にしました。
他社のように待機講師を抱えず、受講されたレッスンの70%を講師に還元しています。普通は原価率30%台が限界ですが、私は70%返す仕組みにした。結果的に講師の収入は高く、固定時間拘束もないので人気の講師だけが残り、自然とクオリティが上がります。
さらに、私自身が手をかけなくても回るように自動化しており、集客から決済、予約管理まで完全オンライン。こうした構造が、大手が価格で攻めてきても揺るがないポイントです。
経営者としての原点は「倒産した父の会社」──失敗しても立ち直れる準備が重要
――経営者としての原体験や大切にしている価値観を教えてください。
大学時代に、父の会社が倒産したことが大きな転機になりました。その経験から「困っている経営者を助けたい」という思いが生まれ、経営支援の資格を取得して、長年にわたり企業の事業企画や経営改善に携わってきました。
私が大切にしている価値観は、“失敗しても立ち直れる状態を常に保つこと” です。大きな先行投資はせず、必ず小さくテストし、市場の反応を見てから本格的に取り組む。エイゴルも同じで、最初はネットオークションで「体験チケット」を販売し、きちんと需要があると分かってからサイトを構築しました。
どんな事業も、仕組みとして成り立つかどうかは描けても、実際にどれだけ利用されるかはやってみないと分かりません。だからこそ、最初のリスクを徹底的に小さく抑えることを何より重視しています。
未来は“完全AI化”──英会話さえ不要になる時代を前提に動く
――今後挑戦していきたいことはなんでしょうか?
AIの進化で、英会話スクールの需要は確実に変わります。将来は同時通訳が当たり前になり、学習そのものがなくなる可能性すらある。だからこそ私は、AIスタッフの常駐化や、コード生成AIを使った完全自動化 に挑戦しています。
もともと無人運営だったものを、今後はフルAI化して「24時間途切れないサービス」へ進化させたい。ビジネスは100年後の姿から逆算して考えるべきで、私は常にその視点で動いています。
仕事そのものが最大の“趣味”──AIの探求と新規ビジネスの妄想
――仕事以外で情熱を注いでいることはありますか?
趣味と言えるか分かりませんが、AIでコードを書き、動かない理由を考え続ける時間が楽しくて仕方ない です。気づけば15日間家から出ないこともあり、完全に“ものづくり”に没頭しています。
また、年の半分はフィリピンで過ごしていた時期もあり、海外の友人と英語で会話する時間は良いリフレッシュになります。健康面の事情で移住は控えましたが、海外に行き、新しい文化やビジネスを眺めることは、今も大切な刺激です。
これから起業する人へのメッセージ
――最後に、これから事業に挑戦する方へメッセージをお願いします。
とにかく、ビジネスアイデアを考える癖をつけてみてください。思いついたアイデアが、どうすればビジネスとして形になるのか。後から参入してくる競合に対して、どのような差別化や参入障壁を築けるのか。そういったことを考える習慣を持ちましょう。
考えること自体は無料で、リスクもありません。ここで思考を惜しむ理由はないはずです。そして、実際に試してみたくなったら、ぜひ行動に移してください。ただし、その際に重要なのは、「大きな先行投資をせずに、ビジネスの可能性を検証すること」です。大きな先行投資をしなければ、失敗という概念そのものが希薄になります。
何度でも新たなことに挑戦し続けられる態勢を維持することが大切です。そのためには、ビジネスそのものの構想だけでなく、いかに少ないコストで可能性を検証できる仕組みを考えることにも、時間をかけてください。