「緩やかな成長」で挑む持続可能な未来。麺屋武蔵二代目が語る、関わる全員が幸せになる経営道
株式会社麺屋武蔵 代表取締役 矢都木二郎氏
創業から四半世紀を超え、ラーメン業界に革新をもたらし続ける「麺屋武蔵」その看板を守り、さらなる高みへと導くのは、二代目社長の矢都木二郎氏です。店ごとの味を認め、個性を活かす独自の経営スタイルと、「緩やかな成長」を掲げる真意とは何か。創業者からバトンを受け継ぎ、顧客、従業員、取引先、そして株主という全てのステークホルダーの幸福を追求する矢都木氏の経営哲学と、業界全体の地位向上にかける熱い想いに迫ります。
独自の「ダブルブランド」と緩やかな成長戦略
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
弊社はラーメン店に特化して事業を展開しており、現在は国内に15店舗を構えています。「麺屋武蔵 〇〇」というダブルブランド店として展開し、各店舗に独自の味や個性を持たせているのが大きな特徴です。
経営方針としては、「緩やかに成長する」ことを掲げています。急激な拡大は急降下のリスクもあると考えています。私たちは1店舗1店舗、お客様に喜んでいただけるお店をしっかりと作り上げていくことを重視しています。年間3〜5店舗と急いで出すのではなく、年に1店舗くらいのペースで、ブランドクオリティを保ちながら着実に成長していきたいと考えています。特に私たちは店舗ごとに異なる味で勝負しており、金太郎飴のように同じものを大量生産するわけではないので、このペースが重要なんです。
また、コロナ禍が明けてお客様が戻ってきている今、改めて「一杯にして一杯にあらず」の精神で、お客様体験の向上に注力しています。
二代目としての覚悟と、業界地位向上への夢
――経営者になられた経緯と、仕事における夢や目標について教えてください。
私は創業者のご子息ではなく、社員からの抜擢で2014年に社長に就任しました。創業者の二人が同族経営にしないという方針を持っていたため、そこからバトンを受け継いだ形です。社長就任時は、自分だけでなく多くのステークホルダーを幸せにしていかなければならないという責任を強く感じました。
私の夢は、飲食業界、特にラーメン店で働くという職種の地位をもっと向上させることです。まだまだ職種的な地位が低いのが現状ですが、待遇改善などを進め、もっと人気のある、誇れる職種にしていきたいという強い思いがあります。
経営判断の軸にしているのは、「お客様に喜んでいただけるか」です。そして、お客様だけでなく、従業員、取引先、株主を含めた4社すべてが喜べる状態を目指しています。誰かの利益のために誰かが損をするような判断はしない、ということを心掛けています。
個性を尊重し、自律を促す組織運営
――社員の方々との関係性や、組織運営で大切にされていることはありますか。
基本的には「店のことは店に任せる」というスタンスです。私は商品の試食もしませんし、店主がOKなら出していいとしています。私好みの15店舗にしても意味がないので、各店の個性が際立つようにしています。もちろん、店主同士での試食や社内SNSを通じたコミュニケーションは活発に行っています。
コミュニケーションにおいては、命令にならないように注意しています。「社長が言ったからやる」ではなく、納得して動いてもらいたい。だからこそ、反対意見や新しいアイデアが出しやすい雰囲気作りを心掛け、「こういうのはどう?」と提案ベースで話すようにしています。
採用や育成においては「誠実であること」を重視しており、社内文化を一言で表すなら「多様性がある組織」です。最近ではワンオペで営業する店舗もオープンさせ、店主が一人で切り盛りするなど、一人ひとりの個性を最大限に活かせる環境作りに取り組んでいます。
自動化が進む未来と、人間が作る価値
――今後の展望と、業界の未来についてどのようにお考えですか。
ラーメンに限らず、様々な麺料理にチャレンジしてみたいですね。業界全体としては、今後二極化が進むと考えています。ロボット化や自動化が進み、リーズナブルでそこそこの味を提供するお店が増える一方で、人間にしか作れない、職人が作る価値を提供する高付加価値なお店。その間の中途半端なお店は淘汰されていくのではないでしょうか。
弊社としては、昨今の人材不足や原材料の高騰といった課題に対し、外国人材の採用や社内紹介制度(リファラル採用)の強化などで優秀な人材を確保しつつ、しっかりと値上げもしながら、それに見合うサービスを提供していくことで、結果にコミットしていきたいと考えています。目指すのは「持続可能な会社」です。次世代へ良い形でバトンタッチできるよう、体制を整えていきます。
走り続ける経営者としての横顔
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
趣味はランニングで、かなり真剣に取り組んでいます。マラソン大会にも出場していますよ。