地域の学校と社会をつなぐ、放課後スポーツの新しいかたち――NPO法人arcsportsの挑戦

NPO法人arcsports 代表 松本 遊生氏

地域の子どもたちが、授業を終えたあとも安全に、そしてのびのびと体を動かせる場所は十分にあるのだろうか――。教師として長く現場に立ち、放課後スポーツの縮小を目の当たりにしてきた松本遊生氏は、その疑問と課題感からNPO法人arcsportsを立ち上げました。学校・企業・大学・地域が協力し合い、子どもたちを中心に据えた新しいスポーツ環境をつくる取り組みは、前例の少ないチャレンジでありながら、確かな広がりを見せています。今回は、立ち上げの背景や事業の強み、価値観、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。

放課後の「空白の時間」をスポーツで支える事業内容

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私は神戸市の小学校で約12年間教員をしてきました。しかし、業務削減の流れの中で、かつて盛んだった放課後のスポーツ活動が次々と減っていく現状を見てきました。その影響を一番受けているのは子どもたちです。そこで、授業後にそのまま学校でスポーツを学べる放課後スポーツ教室を立ち上げ、安全に体を動かせる場をつくっています。

――事業の強みはどんな点にあるのでしょうか。

現在は神戸市内の3校で活動しています。元教員として教育委員会や校長先生方との信頼関係があるからこそ、前例の少ない取り組みでありながら委員会の許可を得て学校現場に入り込めていることが大きな強みです。

地域の企業や大学にも協力いただき、子どもたちの利用料を抑えつつ、社会貢献や学生の学びの場にもなる仕組みを目指しています。

教育現場の「かゆいところ」に手を伸ばして描くビジョン

――立ち上げの経緯や、経営判断の軸について教えてください。

前例がなかったため、当初は教育委員会や行政に提案しても「分からない」と言われることが多く、不安は大きかったです。ただ、学校現場の「この時間帯は誰も見られていない」というグレーゾーンを知っていたからこそ、そこを支える活動は必ず必要だと感じていました。

現場の「かゆいところに手を届かせる」存在として、疲弊している先生たちや子どもたちの力になりたいという思いが軸になっています。

子どもと大人の声を柔軟に支える組織づくり

――チーム体制や、コーチとの関わり方を教えてください。

常勤職員はまだほとんどおらず、種目ごとの専門コーチに業務委託で関わってもらっています。安全管理は元教員や教員免許を持つメンバーが担い、コーチは技術指導に集中する二人体制です。レッスン後には必ずフィードバックをもらい、子どもたちの特性に合わせてメニューを調整しています。

――子どもや大人とのコミュニケーションで意識していることは何でしょうか。

子どもには、学校とは違う「好きなことをのびのびできる場」であることを大切にしています。「どんな練習がしたい?」といった声を拾い、柔軟にメニューを変えています。大人との対話では、一方的に決めず、建設的な意見を拾い上げ、より良い形を一緒に考える姿勢を大切にしています。

部活動の地域移行を支え、学校を開いていく今後の挑戦

――今後の展望や、直近の取り組みについて教えてください。

「うちでもやってほしい」という声を多くいただく一方、人材が不足しており、同時に3校までしか開講できないのが課題です。そこで、教員を目指す大学生をアルバイトとして迎え、研修しながら育成していく体制づくりを進めています。認知度向上のため、体育館を借りた大規模イベントも企画中です。

また、神戸市は部活動の地域移行を進めていますが、受け皿が十分でない現状もあります。私たちが中心となり、研修や派遣の仕組みを整えることで、先生方と地域の力を両方支えていきたいと考えています。

余裕を持って楽しむ姿勢を大切に

――影響を受けた尊敬する方や、リフレッシュ方法について教えてください。

影響を受けたのは、お二人の管理職の先生方です。一人は、挑戦を任せてくれた先生。もう一人は、新しいことへ柔軟に取り組む先生です。お二人に共通していたのは「余裕を持って働く姿勢」で、私の理想像にもなっています。

リフレッシュは、長く続けているバレーボールです。最近は育ててもらったチームの運営にも携わり、次の世代が成長できる環境づくりにも力を入れています。

子どもたちの成長や幸せを大切にしながら、これからも情熱をもって活動を続けていきたいと思います。

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