地域に根ざした“看取りのケア”を未来へつなぐために
特定非営利活動法人 コミュニティケアリンク東京 理事長 山崎章郎氏
特定非営利活動法人コミュニティケアリンク東京は、「人が最期を迎える場所は本人の望む場所で」という思いのもと、在宅での看取りを中心とした地域緩和ケアの仕組みづくりに取り組んでいます。ホスピス医(緩和ケア医)として第一線で長年経験を積み、数多くの患者とその家族に寄り添ってきた山崎章郎氏は、人生の最終段階を“医療”だけでなく“地域”が支える社会の必要性を強く感じてきました。
本記事では、同法人が生まれた背景、地域での実践、スタッフとの関わり、そして未来への展望についてお話を伺いました。
住み慣れた地域で最期を迎えるために
――事業の概要と、取り組みを始められた背景を教えてください。
私たちの事業がスタートしたのは2005年です。当時、一緒に活動を始めた仲間の多くは、私と同じようにホスピス(緩和ケア病棟)で働いていた人たちでした。病院という専門的な場で質の高いケアを受けた事に対する感謝の声の一方で、「本当は最後まで住み慣れた家にいたかった」という声も少なくなかった。その願いに応えられなかった悔しさや、病院という環境が持つ限界に、私たちは強い課題意識を持っていました。
そこで、「地域をホスピスにする」ことを目指し、訪問診療・訪問看護を中心に、デイサービス、ケアマネジメントなどを組み合わせた在宅緩和ケアのネットワークをつくり始めました。24時間365日、利用者さんやご家族が不安を感じたときにすぐ連絡できる体制を整え、医療・看護・介護が一体となって支えることで、たとえ一人暮らしであっても自宅で最期まで過ごすことが可能になるよう取り組んできました。
――NPO法人を選ばれた理由は何ですか。
営利を目的としない組織形態にすることで、活動に地域の方々が参加しやすくなるという考えがありました。看取りは医療従事者だけで完結するものではありません。むしろ、地域のつながりや見守りという“人の力”が大きな支えになります。
寄付という形で応援してくださる方、ボランティアとしてデイサービスやイベントを手伝ってくださる方など、地域の多様な人の力が活動の基盤になっています。看取りに関わることで、地域の人々自身も命の尊さや人とのつながりを考えるきっかけになり、コミュニティ全体の温度が上がっていくように感じています。
山崎章郎氏の歩みと思い
――経営者となった経緯や印象に残っている出来事を教えてください。
以前はホスピス病棟の部長を務めていました。その頃の仲間と「地域でホスピスケアを実践したい」と話し合い、この法人を立ち上げました。自然な流れで理事長という立場を務めることになりました。
印象に残っているのは、ボランティアを募集すると少なからぬご遺族が参加してくださることです。「自分たちが受けたケアがよかったから」と支援してくださることは大きな励みです。地域社会に必要とされ、共に支え合う関係が築けていると感じます。
迷い猫“ますお”が教えてくれた、つながりのかたち
――組織の雰囲気やスタッフとの関係について教えてください。
現在、訪問看護、デイサービス、ケアマネジメントなどを合わせて約30名が働いています。専門職が多く在籍していますが、ピリピリした空気はありません。むしろ、互いを尊重し、困ったときは自然に助け合う、温かい組織文化が根付いています。
その雰囲気を象徴する出来事として、迷い猫“ますお”の話があります。ある日ふらりとデイサービスに迷い込んできた猫で、気づけばスタッフや利用者さんに寄り添う存在になり、10年以上の間、その場所をともにしてきました。
利用者さんが散歩をするときは一緒についてきたり、落ち込んでいる人のそばでじっとしていたり、言葉はなくとも場を和ませてくれる不思議な存在でした。
ますおが亡くなったとき、スタッフだけでなく利用者さんや地域の方も深く悲しみ、その後、散歩していた場所にみんなで散骨をしました。この出来事は、私たちが“一緒に時間を過ごす場”を共有している仲間であることを再認識させてくれました。
これからの展望と課題
――今後の展望と、現在の課題について教えてください。
課題はスタッフの高齢化で、若い人材の参加が必要です。また、地域には在宅ケアに取り組む事業者が増えており、利用者さんに選んでいただくためにも広報を強化したいと思っています。
年2回発行しているニュースレター「ケアタウン小平だより」では、各スタッフが活動や思いを綴り、支援者の方々に私たちの取り組みをお伝えしています。
仕事を支える“好きな時間”
――リフレッシュ方法やプライベートについて教えてください。
私は現在、進行がんを抱えながら活動を続けています。体力的に制約はありますが、それでも、これまで好きだった時間のことを思い返すと心が軽くなります。
映画、とくにSF作品が好きでした。現実ではありえない世界に没頭し、想像力を刺激されるあの時間がたまらなく好きでした。また、仕事仲間と飲みに行ったりカラオケで思い切り歌ったりすることも、大きなリフレッシュになっていました。
今は体調のこともあり飲酒を控えていますが、それでも仲間の存在や好きだった時間の記憶が、日々の励みになっています。