挑戦と“ワクワク”で進化する100年企業――多産業を支える精密加工メーカーの成長戦略
株式会社三谷製作所 代表取締役社長 三谷晋一郎氏
株式会社三谷製作所は、広島県尾道市に拠点を置く精密機械加工メーカーです。長尺シャフトや大型ネジなど高難度の加工技術を武器に、発電所や鉄鋼など多様な産業を支えています。100年以上の歴史で培ってきたノウハウを活かしながら、若い職人が育つ環境づくりにも注力。2025年度SMBグロース企業賞を受賞するなど、成長を続ける老舗企業です。本記事では、代表取締役社長・三谷氏に、ものづくりへの想いと今後の展望について伺いました。
多様な産業を支える精密加工メーカーとして
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
金属の精密部品加工を中心に、さまざまな産業向けの部品を製造しています。本当に幅広い領域のお客様からご依頼をいただいている状況です。
中でも隣町にある鉄鋼会社とは50年以上の取引があり、売上の3割弱を占めています。ただ、一つの業界に依存しすぎるリスクを避けるため、10年以上かけて業種分散を進めてきました。
特定の大手メーカーに依存するのではなく、小ロットや数年に1度のご注文でもお引き受けしているのが特徴です。結果として、毎年10~20社ほど新規のお客様とつながりが生まれており、「三谷製作所にしかできない加工」を求めて声をかけていただけることが増えています。
――強みや評価されている点はどこにありますか。
長尺物とネジ加工の技術力は特に高く評価されています。大型旋盤を扱える職人が減少する中、一貫して対応できる点は強みです。旋盤からマシニング、研磨まで社内で完結させられるため、品質管理や秘密保持の面でも信頼いただいています。
また、工場の責任者を30代に世代交代するなど、若手が中心になって技術を継承している点も安心材料になっています。「10年後もお願いできる会社か」という視点は重要なので、その期待に応え続けたいですね。
5代目として挑んだ改革とV字回復
――経営者になられた背景を教えてください。
創業100年以上の会社で、私は5代目です。生まれたときから跡継ぎとして育てられ、「自分が継ぐものだ」と言われ続けてきました。ただ、大学卒業後に社会に出ると、敷かれたレールにそのまま乗ることへ違和感を持つようになり、一度は家業から距離を置いたんです。
しかし、弟も後を継ぐつもりがなく、歴史ある会社が途絶える状況を想像したとき、改めて家業と向き合う決心がつきました。
帰ってみると当時は赤字が続き、事業存続への危機感が高まっていたタイミング。だからこそ「自分がやるしかない」という気持ちが強くなり、がむしゃらに経営改善に取り組む道を選びました。
――事業再建の中で大きな転機となった出来事はありますか。
とにかく「変えられるものは全部変える」と腹を括り、昔ながらの慣習や固定観念を一つずつ壊しながら効率化や新規顧客開拓にも踏み込みました。その積み重ねが成果につながり、翌年には黒字化を実現。売上も利益もV字回復を果たしています。
ただ、新型コロナでは想定以上の影響を受け、まだまだ強い会社とは言えないと痛感しました。そこから再び改善の手を緩めず続けてきたことで、今に繋がっていると思っています。
“ワクワク”を軸にした事業戦略
――今後の展望や挑戦したい分野はありますか。
業種の拡大以上に、「面白いものづくり」ができる案件に挑戦したいですね。他社が断るような難加工品に対して、「どうすればできるか」を考えるのが本当に楽しいんです。社内でも「ワクワクものづくり企業」という言葉を掲げ、仕事選びの基準にしています。
何でも請けるのではなく、自社の強みが発揮できる仕事に集中すること。その方が双方にとって価値ある成果につながりますし、技術者の成長にも良い循環が生まれます。
――採用や育成において意識していることはありますか。
採用に関しては、常に課題を抱えています。毎年新卒は採れているものの、応募自体が1~2名という綱渡り状態です。今後は5~10名の応募から選べる状態を目指しています。
当社は、社員育成には自信があります。中途で入社して活躍する社員や、出戻りの社員が複数いるのは、環境が良いからです。辞める人が少ないからこそ、技術が蓄積し続け、組織力が高まっていく。人が成長し続けられる会社でありたいと考えています。
想いを持って人と向き合う
――仕事以外のリフレッシュ方法について教えてください。
映画を観るのが好きですが、最近は週末も仕事をしています。会社に一人でこもって、平日にできなかったことを一気に片付ける時間が心地良いんです。自分のペースで集中できるので、成果が目に見えて進むのが嬉しくて。これが今のストレス発散になっています。
――中小企業経営者・起業家へメッセージをお願いします。
まずは自分自身をしっかり理解することが大切だと思っています。強みも弱みも把握した上で、自分をどう動かすべきか考える。私は怠け者な一面もあるので、人前で宣言して自分を追い込むようにしています。完璧でなくていい。ただ、自分を知り、仲間の力を信じ、未来へ踏み出せば道は開ける。そう信じています。