五島列島の不便を価値に変える。地域に根ざし、世界へ発信する挑戦
Mitake合同会社 代表 橋本 賢太氏
長崎県・五島列島を拠点に、パソコンショップからフリーペーパー、ゲストハウス、シェアオフィスまで多角的に事業を展開するMitake合同会社。すべての取り組みに通底するのは、「五島列島の不便を解消し、島の魅力を世界に伝えたい」という強い思いでした。
代表の橋本賢太氏に、事業の歩みと未来への展望をうかがいました。
五島列島の不便を解消するために生まれた事業
――現在の事業内容と、会社として大切にしている考え方を教えてください。
もともとは個人事業としてパソコンショップを始めました。五島列島には当時、個人向けのパソコン販売や修理を行う店がなく、知人から相談を受けることが多かったことがきっかけです。
その後、フリーペーパー「fully」を事業承継する形で引き継ぎ、法人化しました。法人化を機に移転したのですが、移転先のビルごと買い取り、そこでパソコンショップを軸に、フリーペーパーの発行、ゲストハウス、シェアオフィス、コワーキングスペースなどを少しずつ作って運営しています。
根底にある理念は、五島列島の中にある不便を一つずつ解消していくことです。暮らしやすさを高め、外から人が訪れやすい環境をつくることが、地域の未来につながると考えています。
キャリアの原点は、故郷を想う気持ち
――これまでのご経歴と、経営者になられたきっかけを教えてください。
私は五島列島で生まれ育ち、大学進学を機に福岡へ出ました。そのまま福岡のIT系の会社で働いた後、退職してオーストラリアへワーキングホリデーに行き、約1年間旅をしました。
その経験を経て故郷に戻った際、人口減少の現実を強く意識しました。将来的に島の人口が半減し、社会が成り立たなくなる可能性があると知りました。五島列島で生まれ育ち、外での経験値もある程度積んできた自分に何かできることはないかと考えたのです。
自分の経験を生かせる分野として選んだのが、パソコン事業でした。そこから事業を広げていきましたが、すべては「五島列島で暮らし続けられる環境をつくりたい」という思いが原点です。
最初は実家の一部屋を使ってパソコンショップをやっていたのですが、実家をお店として集客をするのは難しい。やはり、店舗を構えたほうが良いと思うようになり、そこから個人事業としてオープンした形です。
現在、引き継いで運営しておりますが、以前は広告主としてフリーペーパーに広告を掲載し、少しずつ知名度を高めていきました。最初は告知も十分ではなく、なかなかお客様が来ませんでしたが、徐々に反応が増え、来店につながるようになりました。
情報発信と人のつながりを支える組織づくり
――組織運営や、社員・スタッフとの関係で意識していることはありますか。
事業が増える中で、スタッフにはそれぞれ役割を任せています。ただ、自分が関わらなければ進まない部分も多く、そこは課題だと感じています。
フリーペーパーの取材先選定や内容の調整、新規顧客の開拓などは、今も自分が深く関わっています。今後は右腕となる人材を育て、少しずつ任せていきたいと考えています。
雰囲気としては、地域に根ざした仕事が多いため、人とのつながりを大切にすることを常に意識しています。
五島列島全体を盛り上げるための次の挑戦
――今後の展望について教えてください。
将来的には、福江島だけでなく、人口がさらに少ない他の島にも目を向けたいと考えています。このままですと、近い将来無人島になりかねないような島がたくさんあるので、五島列島全体で考えて盛り上げていきたいと思っています。
すでに人口約2000人規模の島にある空き家を購入し、新たな宿の構想を進めています。
インターネットの力を使い、さまざまな海外の方が来られる場所にしていきたいです。小さい島ですけど、また別の楽しみ方があるということを知ってほしいと思っています。
小さな島でも事業が成り立つモデルをつくり、それを他の島にも広げていくことが目標です。最終的には、五島列島すべての島に宿を作り、全体の島を巡れるような流れをつくり、島々の魅力を一体として発信していきたいと考えています。
家族との時間が、次の原動力になる
――お仕事以外の時間は、どのように過ごされていますか。
休みは作ろうと思えば作れるのですが、やはり仕事が好きなので仕事を優先してしまいます。しかし、休日が取れるときは家族と過ごす時間を大切にしています。二人の娘と一緒に過ごすことが、自然とリフレッシュになっています。