地域に根を張り、食で心を豊かにする──天庵株式会社が描く“天に輝く一つ星”
天庵株式会社 代表取締役 児嶋 尚憲氏
宮崎県高千穂町という観光地に拠点を置き、そば専門店と焼き鳥専門店の二店舗を展開する天庵株式会社。個人事業から法人化を経て、地域に支えられながら事業を育ててきました。代表・児嶋尚憲は、「食を通じて人の心を豊かにする」ことを軸に、地域還元や働きやすい環境づくりにも力を注いでいます。飲食業の枠にとらわれない挑戦と、地域とともに歩む経営の姿勢について伺いました。
目次
観光地・高千穂で育てる二つの店──事業の現状と大切にしている理念
――現在の事業内容と、その特徴について教えてください。
会社としては設立2年目の、まだ若い会社です。もともとは、母が個人事業主として飲食店を創業したことが始まりです。その後、事業を引き継ぎながら運営を続け、売上の拡大を機に、店舗としての信頼性を高める目的で法人化しました。
現在は、そば専門店と焼き鳥専門店の2店舗を経営しています。
そば専門店は昼営業が中心で、7〜8割が観光のお客様、残りが地元の方です。一方、焼き鳥専門店は夜営業が中心で、7〜8割が地元のお客様、残りが観光の方となっています。
――会社として大切にしている理念や想いは何でしょうか。
社名の「天庵」には、地域の中で“天に輝く一つ星”のような存在になりたいという想いを込めています。企業理念は、「豊かな職場、豊かな心を創造し、次世代につないでいくこと」と社会貢献です。日々しっかりと利益を上げながら、その成果を地域へ還元する。夏休み期間中の子ども食堂の開催や、学校・伝統文化を支える団体への支援など、地域とともに歩む姿勢を大切にしています。
デザイン、公務員、そして経営へ──児嶋尚憲のキャリアと転機
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
若い頃はグラフィックデザイナーとして、イベント企画やディレクション、飲食店のロゴやコンセプト設計に携わってきました。その後、地元が災害に遭ったことをきっかけに、地域のために何かできないかと考え、役場職員として働くようになりました。
総合政策や事業企画を担当する中で、最終的には主体的に地域と関わりたいという想いが強まり、役場を辞めて経営の道へ進みました。
――その経験は今の経営にどう生きていますか。
役場時代には、企画観光課や農林振興課、総合政策課などを経験しました。まちづくりの取り組みや新規事業の企画立案、農業法人の設立支援、地域商社の設立などに関わる一方で、すべてがうまくいったわけではなく、失敗や試行錯誤を繰り返してきました。そうした成功も失敗も含めた経験を通じて、「事業を形にすることの難しさ」や「続けていくために何が必要か」を現場で学ぶことができました。これらの経験が、現在の店舗運営や新規事業を考える際の判断軸となり、地域とともに事業を育てていく今の経営スタイルの基盤になっています。
無理なく、長く働ける職場を目指して──組織づくりとスタッフとの向き合い方
――組織づくりで意識していることは何でしょうか。
地域性もあり、従業員同士に何らかのつながりがある環境です。高校生から80歳近い方まで幅広い年齢層が働いており、9割が女性スタッフ。家庭環境もみんな様々なので、厳しいルールで縛るのではなく、事情を尊重する働き方を心がけています。たとえば、柔軟な出退勤に対応できるように余裕を持ち、可能な限り業務を単純にしています。
――働きやすさへの具体的な工夫はありますか。
子どもの行事や体調不良など、家庭の事情にも柔軟に対応できるようにしています。有給取得についても、形式的な申請や細かな手続きは設けていません。また、売上目標を達成した際には、アルバイトを含めて手当を支給するなど、日々の頑張りが実感できる仕組みを取り入れています。飲み会についても必要以上に行わず、それぞれが無理なく働ける距離感を保つことを心がけています。
属人化から仕組み化へ──次の成長を見据えた挑戦と展望
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
まずは3店舗目の展開を考えています。そば店での多店舗化も検討しましたが、技術面を踏まえ、焼き鳥という別業態を選びました。今後は飲食事業に限らず、別業種への展開も視野に入れています。
――会社としての成長イメージはありますか。
現在の課題は業務の属人化です。今後はマニュアル整備や人事評価制度の構築を進め、誰が担っても一定の品質を保てる体制を整えていきたいと考えています。
バイク、マラソン、家族の時間──代表を支えるリフレッシュのひととき
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
バイクでのツーリングやキャンプが好きで、九州各地を中心によく出かけます。ハーレーに乗る時間は良い気分転換です。また、マラソンや登山も好きで、健康維持のため毎年フルマラソンの大会に出場しています。
――プライベートの時間はどんな意味を持っていますか。
仕事とは異なる環境で体を動かし、趣味や米づくりなどで自然に触れること、伝統文化である「高千穂の夜神楽」で舞うことでも気持ちをリセットできます。子どもたちが日々練習に励んでいる空手やバスケ、サッカーの試合を観る時間も、大切なひとときです。
これからも高千穂という地に根を張り、地域に還元し続ける経営を通じて、次の世代へとつながる価値を生み出していきます。