「よく落ちる」だけでは終わらせない――洗浄剤OEMで広がる三宝ケミカルの可能性
三宝ケミカル株式会社 代表取締役 宇陀 武司氏
三宝ケミカル株式会社は、洗浄剤・除菌剤の開発・製造に重点を置き、OEMを中心にサンプル作成から製品評価まで丁寧に取り組む企業です。小ロットや短納期にも対応し、カビ取り剤をはじめ多様な製品を扱っています。代表の宇陀氏は、食品衛生管理の経験を起点に洗浄の知見を深め、現在は「よく落ちる」現業スペックと一般家庭での使いやすさの両立を模索しています。本記事では、事業の強みや組織運営の課題、環境配慮への展望について伺いました。
洗浄剤OEMで「何でも相談」を受け止める事業づくり
――事業内容を教えてください。
主に洗浄剤のOEM提案と、請負業務、洗浄剤に関するさまざまな相談を受けています。
法人化して4年目ですが、新規顧客を増やす過程では間口を広く取ることが重要だと考え、「何でもご相談ください」という姿勢で向き合ってきました。
一方で、できること・できないことはありますから、今後は提供価値を少しずつ整理していく必要も感じています。
――カビ取り剤をはじめ、製品づくりで意識している点は何ですか?
扱う製品の中では、カビ取り剤が「よく落ちる」と評価されることが多いです。
現業スペックを一般家庭でも使えるようにすることがコンセプトですが、匂いがきついという声が出ることもあります。
強さだけを追うのではなく、使い勝手や受け止められ方も含めて検討します。現場で通用する仕様を、どう落とし込むか。その調整こそがOEMの価値だと捉えています。
酸性洗浄剤の「断られる領域」に応えてきた強み
――御社の強みはどこにあるとお考えですか?
以前は自社工場を持っていましたが、現在は協力会社の工場に設備を移設、委託しています。
工場を運営していた当時、酸性洗浄剤の製造や充填に対応していた点が大きな特徴でした。酸性は錆びやすく、嫌がられるケースが多いのですが、古民家を改装した小さな工場だったため、ラインを樹脂で整え、酸性でも問題なく扱えたのです。
個人事業として始めた頃は、他社で断られた酸性洗浄剤の充填加工を引き受けるところからスタートしました。結果として、同様の相談が多く集まり、強みとして認識されるようになりました。
――少量多品種や容器充填など、対応範囲の特徴を教えてください。
小さいもので50ml、大きいものでは20kgのバッグインボックスまで対応可能です。少量多品種にも応じられる体制が評価され、充填のみの依頼も含めて幅広く受けています。
必要なところに、必要な分だけ。そうした柔軟さを大切にしています。
空手から独立へ――現場課題が導いた経営の原点
――この仕事に進まれたきっかけを教えてください。
大学卒業後、新卒で総合小売企業に就職しました。大学時代は空手部に所属していたのですが、当時の商品研究所の専務が大学の先輩だったこともあり、声をかけていただいたのがきっかけです。
文系出身ではありましたが、空手の実業団に所属するという形で採用され、入社後は子会社で食品の衛生管理を担当。厨房や食品工場の衛生管理、洗浄方法や洗剤選定などに携わり、洗浄剤の知識を一から学んでいきました。
その後、会社の倒産をきっかけに独立しますが、若く経験も浅いため仕事は簡単に得られません。そこで洗浄の知識を車のクリーニングやコーティングに応用し、食品衛生管理コンサルと洗車業を並行しました。現場で手を動かし続けた経験が、今の基盤になっています。
――衛生管理の現場で印象に残っていることはありますか?
大手ベーカリーチェーンの衛生チェックで、パンにハエが止まる場面を目の当たりにしました。
店長から機会損失の話を聞き、忌避剤で解決できないかと試みます。結果的に採用には至りませんでしたが、課題が多く、改善余地も大きい分野だと実感しました。
衛生管理、化成品をビジネスとして捉える視点が生まれた瞬間です。
環境配慮とリーダー育成――次の展開に向けた課題と挑戦
――今後実現していきたい目標や、挑戦したいことは何ですか?
洗浄剤は環境や安全にどう影響するのか、改めて考えるようになりました。性能を維持しつつ、環境負荷の少ないものを目指しています。
ご縁から、界面活性剤を使わない洗濯用洗剤のOEMや、バイオケミカルの取り扱いも始まりました。排水処理の分野では、課題解決をつなぐ役割を果たせた事例もあり、広がりを感じています。
日本の中小企業やベンチャーには、まだまだ市場に広く知られていない、優れた技術や商材が数多く埋もれており、仕様や用途を工夫したり、それらを組み合わせることで、イノベーションとなるような商材、サービスとなることがあることを経験し、その領域を広げていきたいと考えています。
――組織運営で向き合っている課題と、取り組みを教えてください。
現在は私とパートナー、業務委託1名の体制です。近しい関係だからこそ、意見が出にくい、摩擦が生じるといった難しさがあります。
営業職を雇用していた時期もありましたが、そこでも失敗を経験しました。今後はリーダー育成が重要だと考えています。
私一人で抱え込まず、共に考えて動ける人材をどう育てるか。その点は大きな課題です。
――最後に、仕事以外のリフレッシュ方法や情熱を注いでいることは何ですか?
母校大学空手道部の監督と空手道場を運営し、幼稚園児から60歳前後まで指導しています。厳しさは必要ですが、言われないと動けない人をつくらないことを意識します。自ら考え、行動できる力を育てたい。経営にも通じる考え方です。
もうひとつの楽しみは銭湯巡りです。日帰り温泉も含め、頭を切り替える時間が次の仕事への活力になっています。
湯船で突然アイデアがひらめき、思わず声をあげてしまい、周囲の人を驚かせてしまうこともあります。(笑)