畑を「日常」に取り戻す──収穫購入を通じて生産者と消費者をつなぐ挑戦

株式会社あぐりどあ 代表取締役 庵原 尊司氏

生産者と消費者の距離が広がる中、畑を「特別な体験」ではなく「日常」に戻したい。そんな思いから、収穫購入を軸としたマッチングプラットフォームを立ち上げた株式会社あぐりどあ。本記事では、生産者と消費者の立場に立った仕組みづくりについて、代表の庵原氏に話を伺いました。

生産者の立場に立ち、利益と時間効率を高める仕組み

━━ 現在の事業内容と、経営方針について教えてください。

農業生産者と消費者をつなぐ、収穫購入型のマッチングプラットフォームを運営しています。生産者が会員登録した畑であれば、会員登録した消費者は、どこの畑でも、収穫した分だけを購入できる仕組みです。

畑で繋がる事で、固定客、集客にも繋がります。

日本全国の会員登録された畑で収穫購入出来ますが、遠方の畑に収穫購入に行くのは難しいので、生産者のページから、お取り寄せも可能です。

経営方針として重視しているのは、生産者と消費者の立場に立つことです。生産者の側に立って考えたとき、手数料を多く取られる仕組みでは、利益率も時間効率も合わない為、畑が続けられないし、耕作面積が広がらない、と感じてきました。

一般的には、収穫して、洗浄をして、傷んだ部分を取り除き、袋詰めをして、卸先へ運んで登録してシールを貼ったり、並べたり、等の出荷調整の、工程が発生します。実際にやってみると、この作業には想像以上に時間と手間がかかり、作物によっては割に合わないと感じることも少なくありません。

栽培するのと売るのは別物で、畑でレジャー兼買い物として、直接収穫・購入してもらう形であれば、そうした工程を省くことができ、生産者の負担を大きく減らせます。生産者の利益率と時間効率の両方を守るために、この仕組みに辿り着きました。

━━ 他にはない強みはどこにありますか。

生産者と消費者が直接やり取りできる点です。2ヶ月単位の月額会費は発生しますが、生産者は販売額に対する決済手数料のみなので、売れば売るほど、生産者の手元に利益が残る設計になっています。

一般的な流通では、販売額の半分程度を差し引かれるケースもありますが、この仕組みでは、会費分を除けばほぼそのまま生産者の収益になります。この差は、生産者にとって非常に大きいと感じています。

生産者も消費者も2ヶ月単位の会費で、使いたい期間で使用できるので、会費を負担と感じる事が少ないです。

消費者に作物を購入してもらう事が目的でもありますので、プラットフォームを利用して作物を購入する事で、会費が割安にもなる仕組みも備えています。

消費者にとって、どのような環境で、どのような栽培方法で、どのような生産者かを、直接に知ることが出来るので、これ以上の安心安全は無いです。

歩いて行ける畑での収穫購入が、一番のSDGsな販売方法です。これを、システムとして可能としています。

畑での実体験から生まれた事業アイデア

━━ この事業を始めたきっかけを教えてください。

会社員として働きながら、生産者として畑に関わるようになったことが、大きな転機でした。平日の仕事量が増え、残業や徹夜や休日出勤が続く中でも、週に一度は畑に足を運び、気持ちを整えていました。

作ること自体は楽しい一方で、売ることはまったく別の難しさがありました。安く売ることはできても、適正な価格で売るのは非常に難しく、そこに大きな壁を感じたのです。

そんな中で気づいたのが、消費者にとって収穫は「楽しい体験」だということでした。収穫そのものを楽しんでもらいながら購入につなげることができれば、生産者と消費者の双方にとってメリットのある形が実現できるのではないかと考えるようになりました。

━━ 大切にしている価値観は何でしょうか。

多くの人に畑に土に触れてほしいと思っています。畑には、ストレス発散、リフレッシュ、癒し、セラピー、アーシング、免疫力向上といった、側面的な健康も得られます。

最初から「大切だから」「大事だから」と伝えても、行動にはつながりにくいものです。まずは「楽しい」という入り口から畑に関わってもらい、その先で食や農や環境の大切さを感じてもらえたら嬉しいです。

「伝える」と「伝わる」は違う

━━ 組織運営やコミュニケーションで意識していることはありますか。

現在は一人で運営していますが、相手の話にしっかり耳を傾けることを大切にしています。自分の考えを一方的に伝えるだけでは、関係性は深まりません。「伝える」と「伝わる」は別ものだと、常に意識しています。

話す量が増えれば相手の理解が深まる、というわけではないと感じています。相手に関心を持ち、丁寧に話を聞くことではじめて、共感や信頼が生まれると考えています。

畑が身近にある社会を目指して

━━ 今後の展望について教えてください。

集約されて大規模化も必要ですが、数の力も馬鹿に出来なくて、色々な意味で、皆さんが、畑をやった方が良いと思っています。あぐりどあ のサービスは、都市圏の街中や住宅街の中にある畑、多品目の畑、小規模や中規模の畑、有機系の畑、中山間地の畑、新規就農者の畑、との相性が良いです。住宅街の中にある耕作されていない畑も耕作される事を目指しています。

場所と規模によって、販売する順番は有って良いと考えています。先ずは、都市圏の街中や住宅街の中に在る畑での収穫購入。次に周りの方々への直接販売。そして、卸しや、直売所や、お取り寄せ、の順番が有っても良いと思っています。

あぐりどあ のサービスが全国に広がり、畑が日常生活の一部になり、関係人口が増えて、生産者が増えていくことを目指しています。

個人に限らず、法人や団体が畑をイベントで利用する形も考えられます。学習塾が畑で課外学習や、法人が畑で研修も考えられます。

関係人口が増え、生産者と消費者の価値観の隔たりの解消のキッカケになり得ればと思っています。そこから、食料や農業に対する意識も、少しずつ変わっていくのではないかと考えています。

畑が心を整える時間

━━ リフレッシュ方法について教えてください。

平日は会社員としての業務に向き合い、週末や空いた時間は畑作業を行う生活を続けています。天候によって作業内容が限られる日や、どうしても畑に足を運べない日もありますが、それでも畑に関わる時間そのものに価値があると感じています。

畑で作業する時間は、私にとって精神的な安定につながるものです。決して楽なことばかりではありませんが、それでも続けてこられた理由の一つだと思います。

今後も、生産者と消費者の立場に立った仕組みづくりを通じて、畑が日常の中に自然と存在する社会の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

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