中国向けAI×ビッグデータで「インバウンド&越境EC」を伸ばす――KENTOSHIが描く東アジア戦略と“海外顧客目線”のマーケティング
KENTOSHI株式会社 代表取締役 山本達郎氏
中国向けを中心に、AI・ビッグデータを活用したマーケティングを手がけるKENTOSHI株式会社は、主にインバウンドや越境EC領域で、中国SNSに関する知見を生かしながら、日本企業の海外向け施策を支援しています。
本記事では代表の山本達郎氏に、事業の特徴、起業の背景、組織運営、今後の展望について伺いました。
目次
中国向けマーケティングを“AIで標準装備”にする
――御社で取り組まれている事業の特徴を教えてください。
中国向けを中心に、AI&ビッグデータを使ったマーケティングを手掛けています。加えて、インバウンドおよび越境EC領域にも取り組んでいます。中国は、いわゆるGAFA系のサービスが使えず、その代わりに中国独自のECやSNSが普及しています。そういった中国側の動向を、日本の皆様に向けて書籍やニュース、新聞等で紹介してきたという経緯もあります。
我々は中国のSNSを中心にビッグデータを扱えるような体制を作り、WeiboやTikTokのバイトダンスなどともAPI連携をしながら、1,000億以上のデータを社内の管理画面で可視化しています。日本の会社が中国に向けて何か取り組みたい、中国の方を呼んでいきたいというときに、マーケティングの3Cや4Pに関する情報をデータから読み解けるため、それを基にサービスを提供しています。
――成果につながる運用のポイントはどこにありますか。
日本企業は几帳面に考えることが多く、会社紹介や商品紹介から始めてしまいがちなのですが、そこを顧客目線に変えるのが大切です。例えば「日本でしか売ってない限定版スニーカー」とか、「お花見の時期はこういうコーディネートが良い」といった、お客さんが知りたくなるような切り口の記事を作って出していきます。
そうすると閲覧数が伸びたり、店舗住所入りの記事がブックマークされたり、いいねが集まったり、そして1~2ヶ月目頃から毎週問い合わせが来て、取り置き依頼や「これありますか」「今度行きます」といった連絡が増えたケースもあります。飲食でも、和牛の特徴や部位ごとの食べ方や味の違いなどを含めて発信すると、ほぼ毎日のように予約が来るようになりました。
――SNS以外の領域では、どのような支援をされていますか。
直近で出したのが、越境EC、予約、デジタルメニューのサービスです。越境ECは物流・倉庫・通関まで含めて全体をサポートします。商品を出しただけでは売れないので、SNSで顧客を呼び込んで来るところまで含めて対応しています。
また、SNSでフォロワーやファンが増えてコメントが来るようになったら、予約フォームまで入れて顧客対応の手間を省くこともできます。来店後のデジタルメニューも、言語対応や画像メニューで満足度を上げつつ省力化につなげる狙いがあります。さらに春節など「力を入れたいタイミング」には、ビッグデータを使った細かなターゲティングでプロモーションをかけることも可能です。
中国の勢いに触れて「日本にもプラスを還元したい」と思った
――この事業を始められた背景や想いを教えてください。
最初に中国に行ったのは学生時代で、2002年頃です。当時はGDPでいうと日本の方が3倍くらい大きかったのですが、それでも非常に勢いがありました。中国の大学に行くと図書館の席が朝から晩まで全部埋まっていて、工場で働く方は1日14時間働くことも多く、ホワイトカラーも成果報酬で、頑張った分だけリターンがあるので必死に頑張る。貪欲に努力している人が14億人いると考えると、これは伸びるだろうという実感がありました。
その勢いを日本にも還元したい、プラスになるようにしたいと思って留学し、ビジネスを興そうと考えました。日本は少子化が進み、人口がこれから増えるわけでも、市場がすごく大きくなるわけでもない。せっかく隣に大きな市場があるので、一緒に発展していけるようにと考えて事業をスタートしました。
――経営の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。
もともと学生時代にベンチャーをやっていて、その時は学習塾を立ち上げて運営していました。自分たちで工夫してサービスを良くして、届けて満足していただいて、口コミも広がって規模が大きくなっていく。その手応えがすごくあり、楽しくて3〜4日徹夜しても眠くないような感覚でやっていました。そのようなところから、やりがいを見出して、大きく広げていきたいと思ったのが背景です。
「三方良し」を軸に、短期目線に流されない
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
短期的に考えるよりも、ちゃんと皆さんが良くなるように、というのを意識しています。海外向けビジネスでも「外人を呼びつけて儲けてやろう」とか「型落ち商品を売りつけて稼いでやろう」とか、そのような姿勢は相手に伝わってしまいうまくいきません。中国の方に合った良いものを届ける。必要なら中国向けにカスタマイズもして、喜んでいただいて、リピートにつなげる。こうした考えを大切にしています。
政治的な問題もあってぶつかりがちな隣国同士ですが、短期的な視点ではなく、双方が良くなる形でビジネスも発展させていければと思っています。
――ターニングポイントになった出来事はありますか。
北京に8年ほどいた間に、尖閣諸島問題などが起きて、北京でも大使館周辺で2万人規模のデモ行進がありました。日中間は、良い波と悪い波が周期的に来るので、一時的なものに動揺せず、長期的な目線で物事を進めるのが大事だと思っています。
ビジネスが上手くいかず、中国の悪口を言いながら帰国する方もいましたが、逆にどうすれば全体としてうまく行くかを考えました。中国では転職が多く、給料が高いところに1〜2年ですぐに移ってしまうのが当たり前の市場です。社員との関係を築くために、大型連休のタイミングでは家庭訪問をしました。地方出身の社員も多いので、一番遠いところでは、電車の椅子席で27時間かけて湖南省まで行ったこともあります。親御さんに「いつも彼はすごく頑張ってくれています」と挨拶して一緒にご飯を食べる。そうすると、2倍の給料で引き抜かれそうになった時でも、家族から「いい社長だからもう少し頑張りなさい」と言われて残ってくれたこともありました。
波があっても、人を大事にして周りに良かれと思ってやっていくことが大切だと感じています。
「現地の価値観」を尊重して動く
――組織を運営するうえで、どのような工夫をされていますか。
日本側の情報だけで物事を考えたり判断したりするのは限界があり、偏ってしまいますので、中国側で出ている情報や現地で進んでいるITの最新情報、新しいビジネスモデル等をどんどん教えてもらっています。全体が良くなるよう、日々コミュニケーションを取っています。中国は家族や親族との繋がりも強く、旧正月(春節)の時期にはしっかり時間を取ってもらうなど、現地の文化を大事にしながら関係を築いています。
2030年6,000万人に向けて、中国を深掘りし東アジアを面で支える
――今後の展望や、取り組みたい挑戦を教えてください。
まずは中国向けをベースに深掘りしていきます。そして、先月には東アジア向けのサービスを出したので、香港・台湾・韓国にも広げていきます。2025年の訪日観光客が4,200万人超で、日本政府の目標が2030年までに6,000万人というものがあります。そこまで到達するためには、中国大陸から約1/3となる2,000万人を呼ばないといけないという見立てもあります。人口規模の面で、韓国・台湾・香港は今から2倍3倍とはなりにくい一方、大陸は伸びしろがまだまだあるので、そこに貢献していきたいです。そして、東アジアを合計すると全体の2/3を占めるという状況にもなっています。
その中では、「中国向けマーケティングのユニクロさん」のような存在になれたらと思っています。安いだけでなく、機能性も高く、例えばAIやビッグデータもしっかり入っていて、成果が出る。そういう「持っているのが当然」「当たり前の基盤」というような存在として、役に立てるようになりたいと考えています。
――その実現に向けて、今向き合っている課題と対策はありますか。
政治の問題は少し心配しています。昨年の終わり頃から国同士がぎくしゃくしている部分もあり、春節(2月)では団体客が減っているという話もあります。ただ、個人客は変わっていないという事業者も多く、ホテルへの調査でも個人客が増えているというニュースも出ていました。
団体客と個人客で見ると、昔は団体の方が多くを占めていましたが、今は個人が9対1で多いというデータもあり、実際に弊社へのお申込みも逆に増えているのが現状です。まず状況を見極めた上で、個人客にしっかりアプローチして呼んでくる。満足していただく、喜んでいただくことを進めたいと思っています。
加えて、来月またリリースを出す予定です。中国側にもフォロワーが多い著名人の方との取り組みも通じて、トラフィックも含めて輪を広げ、貢献の幅をさらに広げていきたいと考えています。
サッカーで整えるリズム
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
小学生の子どもが2人いるのですが、そのサッカーチームの監督をやっています。毎週練習や試合があり、先日は区の大会で50チームぐらい参加する中で優勝することができました。選手や保護者の皆さんにもとても喜んでもらえて、子供達にも貴重な成功体験になったと思っています。うまくリフレッシュしながら、楽しんでやっています。