現場と経営の両方を知るからこそ。「必要な看護を、必要な人へ」――開業・運営サポートから組織を整える支援
Supportia 代表 金田 奈央 氏
訪問看護の開業・運営サポートを軸に、看護師のキャリア支援やコミュニティ運営、チームサポートまで幅広く手がける金田奈央さん。約10年にわたる病院勤務を経て、訪問看護ステーションの立ち上げ・管理者を経験。さらに企業での訪問看護支援事業や、介護福祉士として現場に立った経験もあります。現場経験者として「制度に則って、必要な人に必要な看護を届ける」ことを大前提に、組織が整って数字も上がる状態を目指して支援を続ける金田氏にお話を伺いました。
目次
理念は「病む人も働く人も安心して生きられる社会」――いまの事業と現状
——現在の事業の全体像を教えてください。
訪問看護の運営や開業のサポートを中心に行っています。ポストとしては大きく3つあり、そのうちの一つがメインでもある「開業・運営サポート」です。
その他、看護師さんのキャリアサポート、コミュニティ運営やチームサポーターのような役割も担っています。
——業務の比重や、具体的な支援内容はどのようなものですか。
訪問看護の開業・運営のサポートが全体の8割くらいを占めています。その中でも、開業そのものが半分、運営面のご相談が半分くらいのイメージで入らせてもらっています。
加えて、研修動画作成に関わったり、看護師のキャリアを活かすようなサポートとしてキャリア相談を受けたり、人材紹介をしたりもしています。
テーマとしては、「病む人も働く人も安心して生きられる社会を作る」というところを軸にして活動しています。今年は直営の訪問看護開業するかどうか、という話も出てきているところです。
現場経験者としての強み――経営と現場の“両方がわかる”支援
——同じ医療・福祉領域の中で、ご自身の強みはどこにありますか。
訪問看護の立ち上げで管理者を経験し、企業で訪問看護支援事業にも携わってきた経験もあります。看護師としては急性期病院を中心に約13年の臨床経験があります。
さらに、介護福祉士の資格を持ち、実際に2年間、介護福祉士として現場で働いていました。医療と福祉の両方に深く関わってきたことに加えて、現場目線と経営目線の両方を行き来できる立場で支援できることが、自分の強みだと思っています。
——経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
第一前提として、看護師さんの心がすり減っていくようなことはしたくないと思っています。ルールや制度に則ったうえで、きちんと必要な人に必要な看護を届ける。そのためのサポートをする、というのが私の軸です。
とある訪問看護の現場で不正請求疑惑による監査が入ったりしているニュースなどを見ることもありますが、そうした出来事が起きると、看護師さんの心が本当にすり減ってしまいます。だからこそ私は、きちんと「必要な人に必要な看護を届ける」っていうサポートをさせていただきたいです。
ルールや制度に則ってサポートしていくことができない事業主さんもいるので、そういった現場を改善させてもらって、整えていく。そして数字が上がるように整えていくことが、自分の主軸だと思っています。
経営者になったきっかけと、価値観が形づくられた転機
——経営の道に進むきっかけは何だったのでしょうか。
もともと、本社が花屋を営んでいる会社の社長さんが、保育園も運営していて。さらに、訪問看護もやりたいということで、任せられる人を探していたことでした。
知人を通じてその話を耳にしたタイミングと、私自身の転職を考えていたタイミングが重なったんです。在宅の看護には以前から興味があったので、未経験で飛び込んだ形です。もう病院の看護には限界があるな、という想いもありましたので。これが経営の道に進む大きな一歩でした。
——その経験の中で、何を学びましたか。
運営や採用なども含めて、基本的には全部自分で考えて動いて決めてやっていたような感じでした。適宜相談はしていましたが、数字が上がっていれば細かく口を出さないタイプの社長さんで、自分で事業を作っていくとか、自ら仕事をしていくことをそこで初めて経験しました。
それまでは、与えられた業務をこなすことが多かったのですが、このとき初めて「自ら事業を作っていく」とか、「仕事を作っていく」ということを経験しました。「これなら自分でもできるかもしれない」と思えたのは、この経験が大きかったと思います。
——キャリアの中でのターニングポイントを挙げるとしたら?
正直に言うと、社長と喧嘩をして会社を出た、という出来事です。ただ、その半年前くらいから、どこか仕事に違和感を感じていて、くすぶっていた時にきっかけとなる出来事があり、退社するという選択をとる形になりました。ただ、会社を離れてから気付いたことも本当に多くて、自分が甘えていた部分もあったな、と振り返ることもあります。
いろいろな気付きはありましたが、ターニングポイントとして一番大きいのは、やはりその出来事だったと思います。
ゴールを共有し、過程は任せる――業務委託チームとの関係づくり
——現在、一緒に働く体制はどのようになっていますか。
社員という形ではなく、すべて業務委託という形で、一緒に動いています。コアでかかわってくださっている方は、ある程度固定されています。
基本的には、判断基準や持って行ってほしいゴールはお伝えして、そこに至るまでの過程はお任せすることがほとんどです。
私自身、言葉が足りない部分もある自覚があるので、「足りないところがあれば、遠慮なく聞いてほしい」ということは、最初にお伝えしています。
——方向性をそろえるために工夫していることはありますか。
お客さまの組織に、マネージャーのような立ち位置で入ることもあるので、スタッフさんとも「自分にとっての当たり前」で物事を進めないように意識しています。この理解で合っているか、というすり合わせは常に大事にしています。
また、会話の中で「この人にはここが少し足りてないかもしれない」と感じたときも、ダイレクトに指摘することはあまりしません。
資料を共有したり、「全体として、こういう部分が弱いように見えるけれど強化できるだろうか」と投げかけたりして、考えてもらう形をとるようにしています。
看護の世界を変えるために――キャリア教育の展望
——今後、新しく挑戦していきたいことを教えてください。
看護学校にキャリア教育を取り入れていきたいと考えています。国家試験が終わってからキャリアを考える、という流れもありますが、そもそもキャリアを考えないまま辞めてしまう人が本当に多いんです。
だからこそ、そうならない看護の世界が作れたらいいなと思っています。
——その挑戦に向けて、今見えている課題はありますか。
管理者経験や臨床経験も、教壇に立てるほど十分かと言われると、まだ足りないと感じています。今サポートさせてもらっている仕事や、直営を持ちたいという構想も含めて、もう少し自分自身の人としての幅、教育者としての幅、看護師としての幅を、もう一段広げていく必要があると思っています。
経験を積見続けることが、結果的に次のステップにつながると思っています。
考え方が変われば、人生が変わる――高校バスケの恩師からの言葉
——尊敬している方や、影響を受けた出来事はありますか。
高校時代、バスケットボール部の先生の言葉が、いまでも 強く残っています。中学校時代、身長があり左利きだったこともあって、「鍛えたら将来良い選手になる」と期待されることが多かったんですけど、高校に入ってからは調子に乗っていて、走る練習も嫌いで、真面目に取り組めていない時期がありました。
そのときに先生から、「考えが変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。」と言われたんです。
確かにその通りだと思いましたし、物事の見方や向き合い方を変えることが、結局は自分の行動を変えていくんだと感じました。
今の仕事でも、何かを良くしていくには、まず前提となる考え方を揃えることが大事だと思っているので、その原点に近い出来事だと思っています。
——最後に、仕事以外で気持ちを整える方法を教えてください。
バスケです。今は5人制は辞めて、3人制を続けています。大会に出たり、週1回はトレーニングしたりしています。
あとは、おいしい日本酒とお魚を食べることもリフレッシュになります。こうした時間で整えながら「必要な看護が必要な人に届く環境づくり」にこれからも取り組んでいきたいです。