器から、日本の心へ。人と人がつながる「美命mikoto」と「美命の会所mikoto no kaisho」が描く次のフェーズ

有限会社オフィスaKz 代表取締役 里平 明美氏

器のブランド「美命」を手がけ、東京・九段下でギャラリーサロン「美命の会所」を運営する里平明美氏。製造販売にとどまらず、講座やイベントを通じて「人がつながる場」を育んできました。編集者として長く培った経験を、どのように器づくりへ結びつけ、そして今、器の先にどんな世界を見据えているのか。言葉の端々から立ち上がる、里平氏の美意識とこれからの挑戦を伺いました。

「美命mikoto」と「美命の会所mikoto no kaisho」に込めた意味

――まず、御社の事業内容を簡単に教えてください。

「美命」というブランド名で、吉祥文様をデザインコンセプトにした、オリジナルの器の製造と販売をしています。とはいえ、私は土をこねたり、絵付けはしません。生地は京都や笠間の窯元さんに、上絵付けは岐阜の絵師に依頼し、私がデザインしイメージしたものをカタチにするというやり方で、器をつくっています。

器は主に、東京・九段下に創設した「美命の会所」というギャラリーサロンと、百貨店でのポップアップや、自社主催の展示会で販売しています。卸しをせず、私がお客様に直接お届けする、というスタイルを貫いております。このサロンでは、器の販売だけではなく、「日本を学び直す」というコンセプトを軸とした講座も主催しています。

――「美命」「美命の会所」という名前には、どんな意味が込められているのでしょうか。

人も動物も植物も・・・いまこの世で生きているすべての生きものは、他の命をいただいて生きています。つまり、無駄な命はひとつもなく、すべてが尊くて美しい。器はそんな「命の入れ物」だという思いから、「美命」と名付けました。

また、たとえば、日大国主命(おおくにぬしのみこと)といったように、使命を持った日本の神様には「命(みこと)」という言葉がつけられています。器を通して日本の心や美を伝えていきたいという想いも重ねています。

室町時代のころ、身分関係なく人々が集い、連歌(れんが)や茶の湯を楽しんでいた会所(かいしょ)は、人と文化の交流の場でした。このギャラリーサロンも、モノ・コト・ヒトがつながる場でありたい、という願いを込めてギャラリーサロンの名称を「美命の会所」としました。

「器の特徴」だけではない強み——感性で集う人たちの輪

――事業を続ける中で、御社の強みはどこにあると感じますか。

有田焼、九谷焼といったように、美命の器は「○○焼き」という伝統的な枠組みに属するものではありません。初めて見た方が異口同音「こんな器見たことない」と言われるほど、とても特徴的で印象的です。陶器に金や銀をふんだんに施し、牡丹や菊などの草花を大胆に描いたそのデザイン性、つまり「器そのものの特徴」が強みのひとつだと思っています。また、ひとつひとつ手作りのため、着物をあつらえるように、器を1点からオーダーし、唯一無二の器をつくることができる、他では買うことができない、という点も、大きな強みではないかと思っています。

実際に、これまでも多くのお客さまから、家族ごとにアレンジしたお皿やカップ、結婚記念日やお誕生日、大切な人への還暦や受賞のお祝いにと、オーダーをいただいて器をつくっています。

もうひとつの強みは、お客様! この器を「素敵」と思ってくださる方たちの感性や価値観には、共通するものがあると感じており、集ってくださるお客さまたちの上質なコミュ二ティが自然とつくられています。ここで出会ったお客さま同士が仲良くなって、友だちになっていくことも多々起きています。器をきっかけに「美命の会所」という場ができ、そこから素敵なつながりが生まれていく。それもうちの強みだと思っています。

――ギャラリーサロンで講座やイベントも行われています。そこにはどんな思いがあるのでしょうか。

美命の器に描くのは、「吉祥柄」と言われている文様です。医療が発達していなかった古の日本人は、邪を払い富を引き寄せるという意味を持つ牡丹の花に幸せを、不老長寿の花という意味を持つ菊の花に健康を願う・・・といったように、祈りや願いを託して、着物や器などの道具にそれらの文様を描いていました。

20年前、美命を立ち上げる際、デザインコンセプトを考えていたときに、その「吉祥柄」のことを知りました。日本人の感性や叡智に感動したと同時に、日本のことを知らない自分が恥ずかしくなり、日本を学び直したいという思いが強まりました。そして、同じように感じている方がいるのなら、ともに学べる場をつくりたい、という思いもあり、いつか、とそのタイミングを見計らっていました。

ギャラリーサロンのコンセプトは「モノ コト ヒト つなげる つながる」です。器を販売する単なる店舗ではなく、上質な大人の学びの場、集いの場でありたい、そこで生まれた輪は、一人ではできないことも、輪としてなら世の中のために何かできるかもしれない。そんな思いの基に、講座やイベントを企画し主催しています。でも、学びだけではつまらない。そこには、「楽しい」「美味しい」がなくては! そこははずせません(笑)。

「編集と同じやり方で器が作れる」と知った瞬間

――里平さんがこの道に進まれたきっかけを教えてください。

以前は、リクルートという会社で営業を、25歳からは情報誌の編集部で編集の仕事をしていました。30歳で会社を辞め、その後はフリーランスでライターや編集の仕事を続けてきました。

40歳を直前に、これからもこのスタイルで続けられるだろうか? と未来に不安を覚えていたころ、「編集の仕事と同じ方法で器を作ることができる」ということを知りました。

それまでは、陶芸家にならなければ器は作れないと思い込んでいましたが、生地は窯元さんに、絵付けは絵師さんにお願いし、自分はコンセプトやデザインを考える。この手法なら「自分の器」が作れる。これは、今まで自分がやってきた書籍や雑誌の作り方と同じ! そう、私の中では「紙が土に変わっただけ」だったのです。それなら私にもできる! と始めてしまいました。

在庫を持つ必要がなく売れても売れなくてもペイバックがあったこれまでの仕事と、在庫を持ち売れなければペイバックがない商売は違う、私は商売未経験者だったと、始めてから気づくのです(笑)。とにかく、当たって砕けろ精神で、当たって砕けて砕けて、また当って砕けてと、そんな道のりでした。それは今も(笑)。

――始めるタイミングとして「今だ」と思えた理由は何でしょうか。

新しいことにチャレンジするなら、60歳まで走るとして20年ある。20年あればカタチにできるのでは、新しいことにチャレンジするなら今だと思って始めました。40歳のときでした。

ちょうどその頃、欲しい器になかなか出会えないという思いもありました。陶器市などにも買う気まんまんで(笑)行くのですが、「買いたい」と思えない・・・そんな感覚がずっとありました。

自宅を建てたこともあり、友人を招く機会が多く、気のおけない友人たちと、テーブルを囲んで語らう時間が好きだったのもあります。料理がすごく得意なわけではないので、それをリカバーするのは器! という気持ちも少しありました(笑)

器の先へ——プロデュースと「日本の心」を伝える活動

――将来的に実現したいこと、夢や目標はありますか。

美命を始めて20年になります。自分もお客さまも20年分歳を重ねています。世の中も大きく変わりました。正直、今までと同じやり方で「器だけに特化してやっていく」時代ではないと感じています。器やサロンでの活動を通して、「美命」または「里平明美」という世界観をつくることができました。

モノでもコトでも、誰かに喜んでいただくことが私の喜びであり、仕事を続けていくいちばんの原動力です。「こんなの欲しかった」「こんな体験したかった」と思っていただけるモノやコト・場をこれからも提供していきたいと思っています。

――講座を主催する理由のひとつに「日本を学び直す」という言葉がありました。そこに込めた思いを教えてください。

「日本の心」「日本の美」という言葉をよく見聞きしますが、「日本の心って何?」「日本の美って何?」と問われたとき、答えられる日本人はどれくらいいるでしょう? 私も20年前までは答えられませんでした。

その問いに答えられる日本人になりたい、同じように感じている方たちやお客さまと一緒に学びたい、という思いから、サロンを創設した当初から、年中行事のルーツを紐解く歳時記講座を、それ以外にも、お茶、生け花、書、墨絵、金継ぎ、落語・・・・と、さまざまな講座やワークショップ、イベントを主催し、私自身も学び続けてきました。いまやっと、その根底にある「日本の心」の美しさや清らかさ、日本人の精神性や感性の素晴らしさを、私なりに理解できるようになりました。

私は日本文化のすべてに精通しているわけではありませんから、日本の文化を語ることはできません。でも、その根底にある「日本の心」は伝えられるとやっと思えるようになりました。実際に、2年前から、NHKカルチャー青山で講師をしたり、高校の授業の特別授業で年中行事の話をしたりと、少しずつですが、伝える活動もしてきました。そういう活動を、これからも、いろいろな角度から増やしていきたいと思っています。

――書家としての活動について考えていることはありますか?

幼少のころから続けてきた「書」の作品がNYの書道展で入賞し、この1月、NYで書家デビューも果たしました(笑)。とはいえ、私は書家として、とか、好きな言葉や詩を書く、というより、「日本の心」を編集し言葉にして、「日本の心」を伝えるツールとして、「書」や書家活動を「これから」に加えていきたいと思っています。

アーティストとして作品作りもしていきたいのはやまやまですが、今はそれより新たな事業構築を優先しなくては、というのが本音ですが(笑)。

――今後の展開として、場の使い方も変えていくのでしょうか。

今までは、この場で器を販売し、講座を開催してきましたが、これからはここに居ることにこだわらず、いろんなところに出向いて話をしたりと、ここから外へ向かっていく、ということもしていきたいと思っています。

それとはやや矛盾はしますが(笑)、新たな取り組みとして、インバウンドの方たち向けの、日本文化体験講座の仕組みを今、構築しているところです。4月ごろから開始したいと思っています。ゆくゆくは、外国人、日本人関係なく、一緒に体験できる「場」にしたいと思っています。あれ、結局私は、「場づくりの人」なのかもしれないですね(笑)。

暮らしの中の器、そしてリフレッシュの時間

――「おさら花びん©︎」という商品があるそうですね。

「おさら花びん©︎」は、セパレートになっているものの、お皿と花びんがセットになった器です。たとえば、桃の花を一輪挿してそこに菱餅を、菖蒲の花を一輪挿してそこに折り紙兜を飾るだけで、桃の節供や端午の節供のしつらえになります。季節の行事を誰でも簡単に、テーブル上で表現できたら、という発想から生まれた器です。

それだけでなく、誰でもたった一輪挿すだけでサマになり、生け花のワザがいらないため、1年中、部屋に好きな花を飾ることができます。花に癒され、生き物の命のエネルギーを感じていたいから、私は生の花をできるだけで欠かさないようにしてます。とはいえ、夏はすぐ枯れるし、お花だってそれなりの経費がかかる・・・という生活者の視点もこの器には反映されています。

当初Makuakeで販売し、おかげさまで目標達成しましたが、この「おさら花びん©︎」をもっと広めるには? が課題のひとつです。

――お休みの日の過ごし方や、リフレッシュ方法はありますか。

休日に限らず、1日の終わりにオットとお酒を飲むことです(笑)。オットに限らず、友人や仲間と、おいしいものを食べ飲み笑う! サロンでも、お客さまや友人たちと持ち寄りパーティをよくしていますし、主催するイベントでもおいしいお酒と料理はつきものですので、いつも、リフレッシュしながら仕事をしている感じです(笑)。

経営者の贈り物の悩みに応える——「その方のためだけ」の一品を

――最後に、読者の方へ伝えたいことはありますか。

経営者の方たちから、海外の特別な方へのお土産や贈り物を探すのに、すごく困っている、という声をよく聞きます。アメリカのVIPの方に贈る「日本のもの」を探すのがとても大変だった、もっと早く美命を知っていたら・・・と言われたこともありました。VIPの方は、いいものは大抵お持ちですし、どこかで目にしたものでは満足いただけないのではと思うと、特別な方への贈り物選びは確かに難題だと思います。

美命の器は手作りのため、贈られる方の性別や生年月日などがわかれば、その方が誕生した季節の花をモチーフにしたり、守護神や名前を入れたりと、「その方のためだけの唯一無二のもの」をおつくりすることができます。制作に時間を要しますので、1〜2カ月前にはご連絡をいただく必要がありますが、電話やメールでご相談しながら心を込めておつくりいたします。

つい先日も、大事な商談の際の手土産に特別なものをと、器をオーダーいただいたところです。

その方のためだけの、贈る方の心が宿った特別な贈り物をつくることができる場所がここにある、ということを知っていただき、ラインナップに加えてていただけたらとても嬉しいです。

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