道具ではなく技術を届ける、パター専門店の現在地
株式会社ヒューマンアンドスポーツ 代表取締役 原田 英明氏
ゴルフにおいて、スコアの約3分の1を左右すると言われる“パター”には、日常的に練習できる場所も文化もまだ十分に整っていません。株式会社ヒューマンアンドスポーツでは、クラブのカスタマイズ・組み立て販売を軸にしながら、パターに特化した24時間会員制の練習スタジオとフィッティングを展開しています。なぜパターに可能性を見出し、どんな価値を届けようとしているのか、代表の原田英明氏にお話を伺い、現状と考え方、そしてこれからの展望までを伺いました。
パターは道具より技術だ
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
ゴルフクラブをカスタマイズして、組み立て販売を行っています。2014年から経営している「ゴルフマイスター」はかれこれ10年を超えています。
ゴルフクラブは14本までバッグに入れられますが、そのうちの13本は「ゴルフマイスター」で販売し、残りの1本であるパターだけは、近隣に構える別の店舗「PUTTING BASE NAGAKUTE」にて販売、というよりもフィッティングを中心に行っています。
背景としては、ショットを打つ場所はあっても、パターを練習する場所が、どこのショップにもないことが大きいです。そもそも打ちっぱなしのような大きな練習場が徐々になくなって、都心ではシミュレーションゴルフでの練習が増えてきました。しかし、そこでもショットの練習が中心で、パター練習の環境は置き去りになっている。そこに課題があると感じています。
――パターにここまで注目するようになった理由を、もう少し具体的に教えてください。
例えば、ゴルフのスコアが100の方だとパットの数はだいたい35回前後、70台の人でも27〜28回ほど、120の初心者で40ちょっとくらい、というイメージで、どのレベルでもスコアの3分の1がグリーン上でのパットなんです。つまり、ゴルフバックの中に入れて良い14本のうち1本の役割が30%近い。なのに、普段からパターを練習する習慣がないし、練習する場所もない。ほとんどの方がコースに出る前にパター練習場で練習するくらいです。2〜3メートルのパターマットを買って自宅で練習をする方もいますが、それが一般的な文化として根付いているかというと、まだまだだと思います。
さらに言うと、パターを教えるレッスンコーチもほとんどいないのが現状です。プロゴルファーの多くはアマチュア向けレッスンが収入源ですが、それでもパターのレッスンはあまりやらない。それは教えるノウハウも場所も揃っていないからです。
私自身も過去にパターを販売してきた経緯はありますが、パターを変えればパットが入るようになるほど単純ではありません。気分転換でパターを変える人もいますが、実際は何を使っても大きく変わらないことが多い。むしろ技術的な部分が8割くらい占めるんじゃないかと見ています。
ドライバーなら、データを見て「これくらいスライスしているから、こういうヘッドやシャフトにすると軽減できる」と道筋を立てやすい。OBが4〜5発だった人が1〜2発に減る、みたいな改善がクラブを変えることで起きることもあります。ところがパターは、構え方、狙っている方向、目線、ボール位置など、打つ側の問題が結果に直結します。ショットは“だいたい”でよくても、パターはカップという小さなターゲットに入れなきゃいけない。だからこそ「道具の売り方」だけでは理論構築が難しいし、「技術に踏み込む店」が必要だと感じました。パターを販売しますが、基本的にはフィッティングです。その方の癖がどんな感じで、ここは直した方が良いとか、どういう練習をすると良いとか、そんなアプローチをしています。
もう一つ大きいのは、業界全体として“飛ぶドライバー”の差別化が難しくなってきたことです。ルールの規制がある以上、メーカーが違っても劇的な差を説明しにくい。新しいクラブが出たから価格訴求で勝負する、といった方向は利益率を下げて自分の首を締めることにもなりかねない。僕はそれが嫌で、「あなたに合った1本を提供します」という価値に振り切っていく。その延長線上で、ハードではなくソフト、つまり技術を含めた提供に舵を切り、パターの店を始めました。パター専門店はちょうど2年ほどになります。
――業界内での強みはどのような点にありますか。
パター店に関しては、おそらくですがこういう形でやっているところは日本ではまだ多くないんじゃないかなと思っています。お店の特徴は、約100平米(30坪くらい)の敷地に人工芝を敷いて、アンジュレーション(上り・下りや曲がるライン)を作り、カップをいくつか置いています。会員制となっていまして、24時間いつでも入退室して練習を行える仕組みにしています。
広げていきたい、練習の場
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
将来的には、フランチャイズ化は行っていきたいです。ただ「パターを売る」ことが目的というより、パターを練習できるスタジオを各地に作って、会員制にして、会員さんが自由に出入りできる形にする。そこでフィッティングして、アドバイザーがいればアドバイスもする。そういう、今まであまりなかったビジネスモデルを広げていきたいと考えています。
この2年間やってきて、どうにか利益が出ている程度ではあるんですけど、まだ「これはいいビジネスだから、ぜひやってみてよ」と他の方に強く勧められるところまでは来ていません。もう少し時間がかかるのかな、と思っています。
もし場所があって、スタジオマネージャーのような常駐できる人がいる、などの条件が整えばビジネスモデルとしては面白くなるのではないかと思います。パターの練習文化や環境が当たり前になっていく流れの中で、ちゃんと価値が伝わる形を作っていければと思っています。