倒産を越えて選んだ経営――地域と歩む注文住宅という責任
株式会社ホーメストホーム 代表取締役 藏所 敬造氏
大阪市東淀川区に事務所を構え、地域密着で注文住宅の設計施工販売を行う株式会社ホーメストホーム。顧客の多くが徒歩圏内という距離感の中で、土地探しから家づくりまでを一貫して支えてきました。その背景には、ハウスメーカー勤務時代の厳しい経験と、会社倒産という予期せぬ出来事から始まった創業の経緯があります。本記事では代表の蔵所敬造氏に、現在の事業の考え方やこれまでの歩み、組織との向き合い方について伺いました。
理想を叶える地域工務店
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
いわゆる個人のお客様向けの注文住宅の設計施工販売を行っています。事務所は大阪市東淀川区に構えており、お客様の8割ほどが同じ区内の方です。会社から歩いて行ける距離のお客様がほとんどですね。
土地を持っていない方も多いため、土地を売りたい人と買いたい人のマッチングも行っています。土地の売却査定サイトなどもありますが、私たちとしてはお客様と媒介契約を結びたいので、相場より高い査定を行います。そうしますと、実際に媒介を結んでも査定金額が高すぎるので売れません。価格を下げると残債や希望額との乖離が生まれ、結果として取引が成立しないこともあります。
そのため私たちは地域の相場を前提に、売り手と買い手双方にとって納得できる形で直接契約していただくことを大切にしています。目的は仲介ではなく、土地を買っていただいた方に設計させていただき、注文住宅をご依頼いただくことになります。仲介手数料を半額にすることもありますが、あくまでも新築の打合せをさせて欲しい、というのが主のお話となります。そのようなイメージでやっておりますので、近いエリアのお客様が多くなっていますね。
お客様が住まいに対してお持ちになっている理想やご要望をしっかりとお聞きし、可能な限りそれを実現させられるよう工夫を凝らしてプランニングいたします。
支店長として背負った覚悟
――経営者になられた経緯を教えてください。
創業は2003年になります。もともとは注文住宅のハウスメーカーに勤めていて、総合住宅展示場で営業をしていました。そこで20年ほど仕事をしていましたが、勤めていた会社が倒産してしまったのです。当時私は支店長という立場で、進行中の現場も多くありました。当然お客様も現場の職人さんも困ってしまいます。注文住宅ですから、「あなたにお願いする」というように契約するわけですから「会社がなくなったから辞めます」と言われたら、私たちはどうするの?という話なわけです。弁護士さんにも相談しながら、本当にやむを得ず、引き継ぐ形で会社を立ち上げることになりました。
――ハウスメーカー時代はどのような環境だったのでしょうか。
とても厳しい環境でした。全国に展示場や支店を持つ大企業でしたから、営業は非常にスパルタでした。月末の締め切りがあり、達成できなければ夜中まで反省会が続きます。半年間売上がゼロならクビという誓約書もありました。
住宅は高額な商品ですから簡単に売れるものではありません。それでも飛び込み営業をして展示場にお客様を呼び込み、契約につなげる仕事でした。精神的にも厳しい時代だったと思います。
信頼は身だしなみから
――組織体制について教えてください。
今は6名ほどの体制です。営業は私一人で行っています。ほかのスタッフは設計やインテリア、CADオペレーターなどの専門職です。以前は営業社員も多く抱えていました。モデルハウスを出して営業スタッフを常駐させる形もとりましたが、住宅営業は成果が出るまで時間がかかります。売れない状況が続くと本人も会社も厳しくなるため、結果的に営業職は私だけになりました。
業務委託営業も検討したことはありますが、教育や関係づくりに時間がかかる割に成果につながらず、難しいと感じました。
注文住宅は打ち合わせ期間も長く、お客様との関係性が重要になります。だからこそ自分自身が直接向き合う形を選んでいます。
――社員に求める姿勢はどのようなものですか。
明るさ、そして身なりが整っているかだと思います。服装が乱れている、髭が伸びている、髪がボサボサ、爪が長いなど不潔感のある方は、一般的にもわかると思います。お客様にとってはやはり高い買い物ですので、真っ当な格好をするとか、丁寧な言葉遣いをするというのは最低限必要だと思いますね。
責任の重さを知る経営
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
私は現在62歳で、70歳になったら会社を終えるつもりでいます。営業を一人で続けながら、車に乗って回るのも体力的に大変になりますし、注文住宅は打ち合わせも長く責任が大きい仕事です。
後継者として、息子に継がせるつもりもありません。この仕事は本当に心労が大きいので、同じ思いをさせたくないという気持ちがあります。社員に対しても同様で、私と同じ責任を背負わせるのは大変だと思っています。ですから、引き継いでやっていただける会社があればいいなとは思っています。
ただ、それまでは地域の中で必要としていただける限り、一つひとつの家づくりに向き合っていきたいと思っています。