手仕事が「誰かの力」に変わる。主婦から経営者へ、PPバンドが繋ぐ笑顔の輪

一般社団法人スマイルPPバンド認定協会 代表理事 橋本三樹氏

「ただのパート主婦だった私が、まさか法人を立ち上げるなんて」。そう語る橋本三樹氏の瞳は、未来への希望に満ちています。梱包用の資材として馴染み深いPPバンドですが、手芸用に加工された色鮮やかなPPバンドを活用し、実用的で美しいかごやバッグ(プラカゴ)を編む。コロナ禍に趣味で始めたこの活動は、YouTubeを通じて同じ趣味を持つ方々へ瞬く間に共有され、現在では「教える側」の講師を育成する一般社団法人の設立に至りました。不器用だと悩む人を笑顔に変え、さらにその先の「自立」までを支援したいと願う橋本氏。編むことへの情熱が、どのように組織となり、多くの女性たちの可能性を広げているのか。その軌跡と展望を伺いました。

趣味の「楽しい」を価値に変え、教える喜びを全国へ

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは「手芸用PPバンド」という素材を使ったカゴの制作・指導、そして認定講師の育成を行っています。もともとは趣味でカゴを編んで販売していたのですが、身近な方から「作り方を教えてほしい」と言われたことがきっかけで教室を始めました。生徒の方から「認定講師資格が欲しい!」と言われ、現在は、対面での教室運営に加え、YouTubeでの編み方動画の配信、そして「自分も先生になりたい」という方のための認定講師資格の付与をメインに活動しています。

最近では、YouTubeの視聴者さんから「材料を揃えるのが大変」というお声をいただき、必要な長さのバンドや持ち手用のチューブをセットにした「制作キット」の販売も始めました。単に「モノ」を作るだけでなく、作るプロセスそのものの楽しさを提供し、さらにはそれを仕事にしたい方をサポートする仕組みを整えています。

――個人で活動されていたところから、なぜ「一般社団法人」という組織を選ばれたのでしょうか。

実は、最初から「法人化して大きくしよう!」という野心があったわけではないんです。きっかけは生徒さんたちからの「認定講師の資格がほしい」という熱い要望でした。当初は「私個人にそんな資格を出す権利なんてないですよ」とお断りしていたのですが、何度もお願いされるうちに、どうすれば信頼される資格として認められるかを真剣に考えるようになりました。

調べていくうちに、信頼を得るには「一般社団法人」として認定協会を立ち上げるのが最善だと分かり、決心しました。現在は、全国から課題を送っていただき、私自身が添削して認定証を発行しています。私が全国を飛び回るのには限界がありますが、認定講師が増えることで、日本中の「近くに教室がなくて困っている」という方々にこの楽しさを届けることができる。そのプラットフォームを作ることが、今の私の役割だと思っています。

幼稚園教諭の経験が活きる「教えるプロ」としての歩み

――経営者になられた経緯を教えてください。

以前は幼稚園教諭として働いていました。ですから、難しい言葉を使わずに分かりやすく説明したり、手取り足取り指導したりすることは、自分の性分に合っていたのだと思います。できないことができるようになった瞬間の笑顔を見るのが、何よりの喜びなんです。

本格的にカゴ編みを始めたのはコロナ禍でした。外出できない時期に、家で楽しめることを探して没頭したのがプラカゴ作りでした。気づけば家の中がカゴだらけになるほど編み続けていて。家族に「これどうするの?」と言われ、オンラインショップで販売を始めました。最初は「購入者さん」からの感謝が嬉しかったのですが、教え始めると「自分で編めるようになった!ありがとう」という、また別の形の深い感謝に出会いました。人の声を大切に、流れに身を任せてきた結果が、今の経営者という立場に繋がっています。

――YouTubeの登録者数が1万7000人を超えていると伺いました。成功の秘訣はどこにあったのでしょうか。

これも実は、時間内に終わらなかった生徒さんのために1本の動画を撮ったことが始まりなんです。レッスンが無事に終わり、もう誰も見ないだろうと思って消去しようとしたら、全く知らない方から「すごく分かりやすいです、次も楽しみにしてます」とコメントをいただいて。そこから「やめられなくなってしまった」というのが本音です。

今では、登録者数だけでなく、その裏側で9万人以上の視聴者さんが動画を見てくださっています。アナリティクスを見ると、日本中、さらには海外の方も見てくださっていることが分かります。この数字は、私にとって「これだけ多くの方が、何かを作って楽しむ時間を求めている」という確信に繋がっています。

一人だからこそ丁寧に――組織運営と生徒との関係

――組織運営やコミュニケーションで大切にしていることは何ですか。

現在は実質一人で運営しています。法人設立上、理事はいますが、日々の活動は私が中心です。

教室に来てくださる方は、家事や育児、介護などを抱えながら、自分の時間をつくって参加されています。皆さんとても真面目で、自分のことを後回しにしてきた方が多い印象です。その貴重な時間を「楽しい」と感じてもらえる場でありたいと思っています。

「安売り」をしないプライド。生徒を「稼げる講師」に導くために

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

今、最も力を入れたいと考えているのは、技術を教えることの「先」にある、マーケティングや商売の基本を伝える活動です。

また、販売について相談を受けることも増えました。その際にお伝えしているのは、「安く売らないこと」です。価格を決めるのは売る側ではなく、価値を感じる買い手です。価格競争に巻き込まれれば、売れるほど苦しくなります。せっかく好きなことで挑戦するのなら、自分もお客様も幸せになれる形であってほしい。私は生徒さんに、そんな「不幸な商売」をしてほしくないんです。そうした思いから、商売の基本もお伝えしています。

プロとして価値を認められ、適正な価格でお客さまとWin-Winの関係を築く。そのためのブランディングや利益の考え方を教える「ビジネス講座」のようなものを、カゴ編みの技術指導とは別に展開していきたいと考えています。

――生徒さんの「自立」までを見据えていらっしゃるのですね。

はい。カゴ編みを足がかりにして、普通の主婦でも自分の力で社会と繋がり、対価を得ることができる。その可能性に気づいてほしいんです。「一歩踏み出せば、見える景色が変わる」ということを、私自身の姿を通して伝えていきたい。3年後には今の3倍、5倍にして行きたいので組織を広げ、認定講師たちがそれぞれの地域で輝ける環境を作っていくことが目標です。

経営者としての原点回帰。消費者の心を忘れない

――最後に、この記事を読んでいる経営者や起業を目指す方へメッセージをお願いします。

経営者としての自覚を持ち始めると、つい効率や利益ばかりを考え、「消費者の気持ち」を忘れそうになる瞬間があります。私自身、一時期「どうすればお客さまは動くのか」とテクニックばかり考えてしまったことがありました。でも、それでは本末転倒なんです。

「自分が消費者だったら、どんなことに喜んでお金を払うのか」。そこに立ち戻ることで、本当の価値が見えてきます。価値を決めるのは売る側ではなく、買う側です。行き詰まったときこそ、一歩立ち止まって、自分をお客さまの視点から俯瞰して見てみてください。その「相手を想う心」こそが、どんな商売でも一番の土台になるのだと信じています。

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