誰もが働ける社会を、本気でつくる──“働く福祉”で常識を塗り替える挑戦

KEIPE株式会社 執行役員 風間祥吾 氏

山梨県を拠点に、障害者就労支援を軸としながら多角的な事業展開を行うKEIPE株式会社。人づくり・リーダーづくり・事業づくりという三つの経営戦略のもと、“働く福祉”という新しい在り方を追求しています。本記事では、障害者福祉事業を統括する執行役員・風間祥吾氏に、事業の原点や組織づくり、そして描く未来について伺いました。

人づくりから社会変革へ──三つの戦略で回す事業サイクル

――現在の事業内容について教えてください。

私たちKEIPE株式会社は、2017年10月にスタートしました。現在は障害者就労支援事業を中心に、BPO事業、飲食事業、地域商社事業、資源循環事業、そしてマッチング事業などを展開し、グループ全体で約150名が活動しています。

私が統括しているのは障害者福祉事業です。障害を持った方が働きに来て、雇用トレーニングを行い、企業へ就職していくという流れをつくっています。この事業が会社全体の根幹であり、全体の約半分近くを占めています。

特徴としては、福祉の中だけで完結させないことです。飲食事業や資源循環事業、地域商社事業など、他の事業部にも障害を持った方が関わっています。例えば飲食の現場や建物の内装、物件整理といった業務の中で一緒に働くなど、役割を持って社会に関わっています。分断された場所ではなく、同じフィールドで活躍できる環境をつくることを大切にしています。

また、グループ内ではマッチング事業も行っており、仕事が不足しがちな福祉事業所と、人手が必要な企業をつなぐ取り組みもしています。働く人と仕事を結びつけることも、私たちの重要な役割だと考えています。

――その根底にある理念について教えてください。

私たちの経営戦略は、「人づくり」「リーダーづくり」「事業づくり」という3つの柱で構成されています。まずは一人ひとりの可能性を信じて「人を育てる」こと。次に、その中から社会に変革をもたらす「リーダーを輩出する」こと。そして、その志を持った力で、次代に求められる「新しい事業を創造する」こと。このサイクルを力強く回し続けることが、私たちの目指す組織のあり方です。

福祉の領域において、社会貢献を重んじる「社会性」は不可欠な要素です。しかし、それを持続可能なものにするためには、自立した経営基盤である「経済性」との両立が欠かせません。そして、その両方を支える土台となるのが、個人の尊厳を尊ぶ「人間性」です。

私は、この「人間性・社会性・経済性」が三位一体となり、循環し続けることこそが重要だと考えています。

障害の有無や年齢に関わらず、誰もが尊厳(人間性)を持ち、社会の課題を解決する一翼を担い(社会性)、経済を回す主体(経済性)になれる。私たちは、その可能性を確信しています。だからこそ、単なる「守られる支援」にとどまらず、自立したプロフェッショナルとして歩むための「働く福祉」に徹底的にこだわってきました。

「人づくり」という起点から、社会の常識を変えていく。私たちはその覚悟を持ち、日々事業に向き合っています。

「運命の人」になるという原点──私がこの道を選んだ理由

――この事業に取り組まれたきっかけを教えてください。

創業のきっかけは、代表の兄が学生時代に障害を持ったことでした。その後、ある支援者の方と出会い、社会復帰を果たした姿を代表が目の当たりにしました。その支援者の存在が人生を大きく変えた。その姿を見た代表が、「自分たちも誰かの運命の人になる支援をしたい」と決意したことが、この会社の始まりです。

私も創業時から関わっています。人は出会いによって大きく変わる。その瞬間を何度も見てきました。障害があるかどうかではなく、誰と出会うか、どんな言葉をかけられるか、どんな機会を与えられるかで人生は動き出す。その事実を目の前で見てきたからこそ、私もこの事業に人生をかけたいと思いました。

私たちは「運命の人」という言葉をテーマにしています。それは特別な才能を持つ存在になるという意味ではなく、目の前の一人の人生に本気で向き合い、その人の可能性を信じ切る存在になるということです。その積み重ねが社会を変えていくと、私は本気で信じています。

――風間さんご自身の原体験についても教えてください。

私は18歳から社会で働いてきましたが、年齢や立場、資格によって役割が決まっていく社会に違和感を覚えていました。経験年数が長いからリーダーになる、資格があるから上に立つ。それが当たり前の構図でしたが、そこに息苦しさを感じていました。

その感覚は、障害を持った方が感じている「最初から線を引かれる感覚」と重なりました。できるかどうかを決める前に、可能性を閉ざしてしまう社会の構図を変えたいと強く思いました。

高齢者介護の現場で人の最期に立ち会った経験も、私にとって大きな転機です。命の終わりに触れるたびに、「自分は何のために働くのか」と問い直されました。また、「社会的には働けない」と言われていた方が、環境を変えただけで大きく活躍する姿を見たとき、人の可能性は評価ではなく機会で決まるのだと確信しました。

機会とチャンスがあれば、人は必ず変わる。その確信が、今の私の原動力になっています。

若手に任せる組織文化──チャンスが人を育てる

――組織づくりで大切にしていることは何ですか。

現在、正社員は約40名で、私の部署には約20名が所属しています。私が組織づくりで最も大切にしているのは、徹底的にチャンスを与えることです。年齢や経験年数、資格の有無では判断しません。「やりたい」という意志があるかどうか、その人がどれだけ挑戦したいと思っているかを基準にしています。

実際に、入社3年目の社員が事業部長を務めたり、1年目のスタッフがリーダーを担ったりしています。社会では年功序列が当たり前ですが、私はそこにずっと違和感を持っていました。長くいるから上、資格があるからリーダーという構図ではなく、挑戦する人が前に立つ組織にしたいと思っています。

もちろん簡単なことではありません。責任も伴いますし、プレッシャーもかかります。それでも、機会があれば人は成長するという前提に立っています。挑戦の機会を奪わないこと、それが私の中での組織づくりの軸です。

また、主体性を持てるように役割と権限を見える化しています。どこまで任されているのか、何を決められるのかを明確にすることで、自分の仕事にオーナーシップが生まれます。与えられた業務をこなすのではなく、「自分の役割」として向き合ってほしい。その意識づくりを大切にしています。

――人材育成や今後の目標について教えてください。

人事考課では、本人がどこを目指したいのかを自分で決めてもらいます。マネージャーになりたくない人を無理に昇格させることはありません。目指す方向を共有し、そのために必要な経験を積み上げていく。そのプロセスを支えるのが私の役割だと思っています。

定期的な面談も行っていますし、役員や幹部が集まる場で各事業部の状況を共有しています。事業部間の配置転換や役割の見直しも行いながら、その人にとって最適な成長環境を探っています。

私の目標は、ここ数年で10名の幹部人材を育てることです。ただ役職者を増やすのではなく、経営を担える人材を社会に残したい。私の部署から、社会に影響を与えられるリーダーを生み出す。それが今の私の責任だと思っています。

チャンスを与え、挑戦を支え、成長を信じる。その積み重ねが強い組織をつくると信じています。

「守る支援」から「可能性を開く支援」へ

――今後のビジョンについて教えてください。

私が目指しているのは、「守られる支援」から「可能性を切り開く支援」への転換です。これまでの支援は、どうしても守ることが中心になりがちでした。でも私は、その人が本来持っている力を引き出し、社会の中で役割を持てる状態をつくることこそ、本当の支援だと思っています。

誰もが自然に混じり合い、当たり前に働ける社会をつくりたい。障害があるかないかに関係なく、高齢者も、引きこもりの方も、児童養護施設を出た若者も、それぞれが社会の一員として経済を回していける。そんな構図をつくりたいと思っています。

だからこそ、多様な事業を展開しています。就労支援の中だけで完結するのではなく、実際の事業の中で一緒に働く場を広げていく。支援の枠を超え、産業の中に入っていくことが重要だと考えています。働く福祉に徹底的にこだわり、社会性・経済性・人間性のサイクルを回していく。その実践を続けたいと思っています。

――その実現に向けて、課題と取り組みを教えてください。

一方で、企業側とのギャップも感じています。法定雇用率を満たすための雇用という考え方がまだ残っていることも事実です。制度のための雇用ではなく、共に働き、共に成長する関係を築くことが本質だと私は思っています。

そのために、企業向けの研修を行い、現場の理解を深める取り組みをしています。ただ制度を説明するのではなく、実際にどう関われば力を発揮できるのかを共有していく。橋渡し役としての役割も担っています。

最終的には、自分たちが証明するしかないと思っています。実際に成果を出し、「こういう社会はつくれる」と示し続けること。それが一番の説得力になります。小さな成功事例を積み重ね、その姿を社会に届けていく。その積み重ねが、未来を変えていくと信じています。

命をどう使うかを考える日々

――影響を受けた方について教えてください。

一番身近で大きな影響を受けているのは代表の存在です。代表は私より二つ上なのですが、常に自己変容し続けている姿を目の前で見てきました。立場や役割に甘んじることなく、「自分の命をどう社会のために使うのか」を本気で考え続けている。その姿勢に、私は何度も刺激を受けてきました。

私利私欲ではなく、社会のために何ができるのかを問い続ける姿は、言葉以上に説得力があります。経営者としてだけでなく、一人の人間としてどう在るか。その背中を見ているからこそ、私自身も挑戦をやめたくないと思えるのです。

また、「誰でもどこからでも可能性がある」という考え方にも強く影響を受けました。どんな背景があっても、人は変わることができる。環境や出会いによって可能性は広がる。その信念は、私たちが取り組んでいる福祉の現場とも深く重なります。私自身もその言葉に勇気をもらい、今度はそれを社会に届ける側でありたいと思っています。

――リフレッシュ方法について教えてください。

休日は神社やお寺に行くのが好きです。子どもと一緒に神社やお寺を巡り、公園で遊び、温泉に入って帰る。特別なことをするわけではありませんが、その時間が自分にとって大切なリセットの時間になっています。

神社やお寺に足を運ぶと、不思議と心が整います。日々の忙しさの中で見失いがちな原点に立ち返ることができる。家族と過ごす穏やかな時間の中で、「何のために頑張るのか」を改めて確認できるのです。

そうやって心を整え、また次の挑戦へ向かうエネルギーを蓄えています。働く福祉を本気で追求し、誰もが自然に働ける社会をつくる。その挑戦はこれからも続きますし、続けていきたいと思っています。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。