数字よりも、誰を喜ばせたいか――杉山氏が貫くロードサイド開発の本質
株式会社アットプレイス 代表取締役 杉山 理拓氏
株式会社アットプレイスは、総合不動産事業と建設事業を中心に、ロードサイドの店舗開発や土地活用を手がける企業です。建築の知見を掛け合わせながら、地域に根ざした開発を進めています。本記事では、代表の杉山氏に、独立の経緯や経営に対する考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
地域に価値を生むロードサイド開発とは
――現在の事業内容を教えてください。
一言で言えば不動産業ですが、中心にあるのはロードサイドの店舗開発です。交通量の多い道路沿いに、ドラッグストアやカーディーラー、スーパー、スポーツ施設などを作っていく不動産デベロッパーの仕事をしています。
前職で建築やM&Aに携わってきたこともあり、単に土地を動かすのではなく、建築のコーディネートまで含めて土地活用を組み立てていくのが特徴です。
土地の売買だけでなく、地主さんから土地を借りて活用する事業用定期借地も含め、幅広い形で案件を進めています。建築のコンサルティングと土地活用を掛け合わせた仕事が全体の大半を占めています。
一方で、一部では飲食店の運営や、空き店舗を活用した学習塾にも取り組んでいます。
――事業に込めているビジョンについて教えてください。
個人で経営しているからこそ、売上や利益だけに引っ張られすぎず、自分自身が「やりたい」と思える仕事を選びたいと考えています。
特に意識しているのは、街づくりや地域貢献につながる店舗開発です。地域のためになる仕事であれば、数字だけでは測れない価値があると思っています。
大きな組織では利益を優先せざるを得ない場面もありますが、個人でやっているからこそ、売上利益だけではない選択ができる。その自由さ自体が、自分にとってのビジョンであり、強みでもあると感じています。
上場企業の役員経験を経て、独立を選んだ理由
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
社会人になって最初に就いたのは現場監督でした。ただ、現場監督の仕事は、与えられた業務をきちんとこなして完成させることが求められる一方で、加点よりも減点で見られる感覚が強く、受け身になりやすい仕事だと感じていました。
そこから、雇われる立場であっても、より経営に近いところで仕事をしたいと思い、上場会社の役員を経験しました。その中で強く感じたのが、数字に追われ続ける苦しさです。
四半期ごとの決算を意識しながら、やりたいかどうかに関係なく数字を取りにいく。その重圧には大きなストレスがありました。さらに、人材面でも自分の意思だけでは判断できず、育成も整理も含めて、会社の都合に合わせた対応を求められる場面が多くあったんです。
そうした経験を通じて、小さくても自分の思いと責任、負担と権限を一致させて働ける形のほうが、自分には合っていると考え、独立を選びました。
――経営判断の軸になっている価値観や信条について教えてください。
仕事を選ぶときは、利益の大きさだけでは判断しません。「この人を喜ばせたい」「この人と一緒に取り組みたい」と思える相手かどうかを大切にしています。
たとえば、利益だけを見ればより大きい案件を選ぶ場面でも、お互いに喜びを感じられる仕事であれば、あえて別の案件を選ぶこともあります。数字以外の部分にやりがいを求めている感覚が近いかもしれません。
また、自社の社員やパートだけでなく、名刺を持って動いてくれる業務委託のメンバーや協力業者も含めて、関わる人たち全体が喜べる仕事にしたいという思いがあります。
外注先も単なる発注先ではなく、信頼する仲間として見ているので、みんなで喜びを共有できる形を常に意識しています。
情報を開示し、同じ温度感で動く組織づくり
――社内コミュニケーションで意識していることを教えてください。
小さな会社だからこそ、細かい情報まで共有するようにしています。なぜこの仕事をやるのか、どういう組み立てで進めているのか、相手にはどんな事情があるのかといった背景まで、できる限り伝えます。
大きな会社では、経営判断が現場まで届かないこともありますが、当社では理念や目的を同じ温度感で共有したいと思っています。そのため、隠し事をしない開示型の組織に近い形を取っています。周囲の給料や利益、決算書も見られるようにしているのは、その一環です。
規模としては家族のような会社なので、経営者だけが情報を持つのではなく、みんなが同じ方向を向ける状態を大切にしています。
――採用や育成で重視していることは何でしょうか?
人の出入りが多い会社ではないため、明確な採用基準を設けているわけではありません。実際に長く働いていた人が退職した際に新しい人を迎えたくらいで、頻繁に採用を行っている状況ではないです。
だからこそ、重視しているのは条件よりも相性です。実際に会って話をしてみて、感覚が合えば「まずやってみてください」というスタンスに近いと思います。
前職では採用面接を数多く経験しましたが、今はその頃とはまったく違う感覚で人と向き合っています。
借り入れも活用しながら、安定収益をつくる次の挑戦
――今後取り組んでいきたい挑戦や展望について教えてください。
ここ1年ほどで、大きく方針を切り替えました。
以前は借り入れを極力使わず、自己資金の範囲で土地を買ったり、仲介やコンサルティングを中心に進めたりしていましたが、現在は決算書を整え、銀行からの借り入れも活用しながら事業を広げています。
狙っているのは、億単位の物件を取得して販売したり、収益物件を土地から組み立てたりする動きです。その先で重視しているのは、キャピタルゲインだけでなくインカムゲインを増やすことです。
いるところです。自分が動かなくても経費をカバーできるくらいの賃料収入を得られる体制をつくりたいと考えています。年齢を重ねる中で、将来も見据えながら、安定的な収益基盤を築いていこうと
――その実現に向けて、どのような課題や施策がありますか?
物件を買う立場になると、これまでとは付き合い方が変わってきます。以前は仲介の立場だったため、同業他社は競合でした。ただ、良い物件を仕入れるには、良い情報を持っている不動産会社との関係が重要になります。
そのため今は、かつてはライバルだった相手とも仲間として組めるような動きを進めています。これまで自分が受け取る側だった情報に対して、今度は自分がフィーを支払う立場にもなりながら、良い案件が集まる流れをつくろうとしているところです。
開発の物語に惹かれ、仕事そのものを楽しむ
――尊敬している方や影響を受けた出来事について教えてください。
印象に残っているのは、「エスコンフィールド」ができるまでのプロセスです。ゼロから山を開拓し、あれだけ大きなテーマパークのような空間をつくり上げていく物語に強く惹かれました。
また、開発という意味では、「ジャングリア沖縄」の創業や「ユニバーサルスタジオジャパン」の再建で知られる森岡毅さんにも大きな影響を受けています。新しい挑戦に向かう人や、その背景にあるストーリーが好きなのだと思います。
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
自分の場合、仕事と休みの境目があまりありません。オンとオフをきっぱり切り替えるというより、仕事を土台にして、その上に遊びやプライベートが乗っている感覚です。
ゴルフや食事、スキー、ロードバイク、オートバイなど、色々なことをやりますが、どれもどこかで仕事とつながっています。旅行に行くとしても、不動産の延長で街並みを見ていますし、遊びの中にも仕事の視点が自然と入ってきます。
だから特別なリフレッシュ方法があるわけではなく、仕事をしていること自体が自分にとってはリフレッシュになっています。