誰もが社会課題解決の主役になれる世界へ。伏見氏が築く「共助共創」の仕組み

ICHI COMMONS株式会社 CEO / Founder 伏見 崇宏 氏

社会課題の解決には、志ある人や組織がそれぞれに動くだけでなく、立場を超えてつながるための仕組みが欠かせません。ICHI COMMONS株式会社は、「誰もが社会課題解決の主役になれる世界」を掲げ、企業、NPO、大学など多様な主体が連携するための土台づくりに取り組んでいます。社会課題と向き合う伏見氏の創業の背景から、経営の軸、組織づくり、今後の挑戦まで伺いました。

「共助共創」で社会課題解決の担い手をつなぐ

——現在の事業内容について教えてください。

「共助共創」をテーマに、「サステナNet」というプラットフォームを運営しています。54個の社会課題を公開していて、日本中のNPOや企業など、マルチセクターの方々が、課題軸や地域軸で繋がれるのが特徴です。

まだこの領域自体が十分に市場化されているわけではないので、オンラインだけでなく、オフラインでもエコシステムをつくる取り組みをしています。

——会社として掲げている理念やビジョンについて教えてください。

ビジョンとして掲げているのは、「誰もが社会課題解決の主役になれる世界」です。企業やNPO、個人に関わらず、それぞれが社会課題の解決における役割をきちんと果たせる世界をつくりたいと思っています。

また、ミッションは、「すべての社会課題解決をしようとしている人たちの共助、共創を支える」を掲げています。今後、日本は人口減少が進み、民間はビジネス、ソーシャルセクターは非営利、パブリックセクターは安全保障というように、それぞれが分かれて役割を果たしていればいい時代ではなくなると思っています。

会社で働きながら地域に関わったり、NPOを手伝ったりと、一人が一役、二役、三役を担うような社会になっていくはずです。そのときに、セクター同士がどう連携するのか。そのモデルをつくる必要があると思っています。

だからこそ、共に助け合う「共助」と、共に作り合う「共創」を掛け合わせた「共助共創」を支えること自体を、事業にしようとしています。

同じ想いを持っているのにうまく出会えない——起業の背景にあった課題意識

——会社を立ち上げた経緯について教えてください。

もともと学生時代に、教育系のソーシャルベンチャーをやっていました。その経験があり、社会人になってからも、社会課題に取り組むことがずっと自分の中に引っかかっていたんです。

この会社を立ち上げる前は、インパクト投資の領域にいました。社会課題の解決のために投資をするという新しい領域ですが、その市場もまだ十分に拡大しているわけではありませんでした。

本当にお金が必要な社会課題の現場を持っているNPOの皆さんや、CSRやサステナビリティに取り組みたい企業の皆さんが、同じ想いを持っているのに、うまく出会えていないという現実を見ました。

誰がどこで何をやっているのかが見えない。寄付や投資が、なぜ行われているのかという意図も見えにくい。そこにインフラが必要だと思ったのが、起業のきっかけです。

自分たちにしか提供できない価値を守ること——経営判断の軸としての考え

——経営判断の軸として、大切にしていることは何でしょうか。

自分たちにしか提供できない価値をちゃんと守ることを大事にしています。自分たちがこのインフラ・エコシステムをつくるという前提に立ったときに、今までなかった企業とNPOの連携のあり方や、今までなかったマルチセクターの連携を、自分自身が案件に入ってプロデュースして、企業やNPOと一緒に実装していく。そういうことができる人は、まだ世の中にそこまで多くないと思っています。

自分たちでなくてもできることがあるなら、その人たちに任せればいい。その先に、自分たちはどういうビジネスをつくっていくのかを考え続けることが必要だと思っています。

個性を認め合い、どう自己実現につなげるのか。伏見氏が見据える組織の在り方

——組織運営や、社員の皆さんとのコミュニケーションで意識していることを教えてください。

一人ひとりの個性をみんなが認め合える環境づくりを意識しています。起業したばかりの頃は、学生インターンも10人以上関わってくれていて、毎月1on1を実施していました。それぞれが、なぜICHI COMMONSに関わるのか、どう自己実現につなげていくのかを、一人ひとり確認していたこともあったんです。

関わる理由は、経済的な報酬かもしれませんし、やりがいかもしれませんし、社会的なインパクトかもしれません。でも、個人としても組織としても、「なぜこれをやるのか」が明確でないなら、逆にやらない方がいいと個人的には思っています。少人数でかなり多くのプロジェクトを同時並行で回しているからこそ、そこが実現できているかを確認するようにしています。

人々がどう関わり、会社としての持続可能性をどう形にするか。

——今後の展望について教えてください。

現在、うちの組織は社員が2名、役員が2名、その他業務委託やご協力くださる方々含め10名程度で動いています。その中で20個くらいのプロジェクトを同時並行で回しているので、まずはそれをちゃんと仕組み化して、複数のプロジェクトが回る状態をつくることが必要だと思っています。

そして、ICHI COMMONSに関わりたいと言ってくださる方が多い中で、その方々がどう関われるのかを設計したいです。社員になるという形だけではなく、その手前で、少しでも手伝いたいという人たちが関われる環境をつくりたいと思っています。

また、ビジネスの持続可能性としても考えていることがあります。株式会社として経営している以上、売り上げをちゃんとつくって、伸ばしていく必要があります。

一昨年くらいから、売り上げをしっかり伸ばしていこうという段階に入りましたが、将来的にインフラとして、誰もが社会課題解決に関われるためのプラットフォームをつくることを考えると、一般的なSaaSのようなビジネスモデルとは違うだろうと思っています。

プラットフォームで課金するのか、プラットフォームの外で、レポート作成や企業への伴走支援のようなソリューションで持続可能性を担保するのか。そのあたりはずっと検討を重ねています。

今につながる経験と、日々のリフレッシュ

——ご自身が影響を受けた人物はいますか。

尊敬する人物は、コモンズ投信の創業者である渋沢健さんです。金融をもっと社会課題の解決や世の中のために使うべきだという考え方で、ずっと取り組まれている先輩だと思っています。

また、印象的だった出来事としては、新卒で外資系のインフラ系企業に入社した際、日本の工場で働かせてほしいと希望し、新潟県刈羽村の工場にいた経験があります。地域の方々と交流する中で、自治体がどんどんなくなっていくという話や、生活のセーフティーネットがなくなっていくこと、地域の関係性が希薄化していくことを身近に感じました。

そこで、自分は大企業で働いている場合ではない、という危機感を強く持ったんです。その体験は、今でもICHI COMMONSをやらなければいけないという切迫感につながっています。

——リフレッシュ方法について教えてください。

リフレッシュは、今は2歳の娘と過ごす時間が中心です。休める時間はほとんど全部、娘と過ごしています。休みになっているのかどうかは分からないですが、確実にリフレッシュにはなっていると感じます。

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