包丁に宿る信頼を守り続ける――五代続く技と誠実な仕事

株式会社浅草本家かね惣 五代目 平野 惣一氏

創業1873年、150年以上にわたり浅草の地で商いを続けてきた株式会社浅草本家かね惣。老舗包丁専門店として培われた技術と信頼を、五代目の平野惣一氏は先代から受け継いだ技と精神を大切に守り続けています。観光地・浅草という立地から、国内外からの来店も多く、一人ひとりと丁寧に向き合う接客を重視しています。近年では海外発送にも取り組み、店舗での出会いをきっかけに世界へ広がるつながりも生まれています。「手を抜かない」というシンプルな信念のもと、一本一本の包丁に真摯に向き合い続ける姿勢は、長年の積み重ねが生んだ信頼そのものです。本記事では、事業の特徴や仕事へのこだわり、今後の展望について伺いました。

伝統を受け継ぎ、変わらぬ姿勢で向き合う仕事

――経営者になられた経緯について教えてください。

もともと父が社長を務めており、その流れで事業を受け継いできました。仕事自体は65年以上続いており、自身が引き継いでからも約30年が経ちます。学生の頃はやんちゃで、親には迷惑もかけました。ただ父としては、自然と私が継ぐものだという感覚があったようで、私も父の弟子として入り、この道に進みました。特別に「継ぐ」と決意したというよりも、気がつけばその道を歩んでいた、という感覚です。

――現在の事業の特徴や強みを教えてください。

当店の特徴は、お買い上げいただいた包丁をそのままお渡しするのではなく、必ず事前に検品し、研いで切れる状態に整えてからお渡しする点にあります。包丁は見ただけでは焼きの状態などが分からないため、状態が良くないものはそのまま販売せず、適切なものに替えています。

単に商品を右から左へ販売するのではなく、責任を持ってお客様に届けることを大切にしています。歴史ある店として、良くないものをお客様に渡すわけにはいかないという思いが根底にあります。一本一本に丁寧に向き合うことが、長年続けてきた仕事の基本です。

――経営判断の軸となっている信念や価値観はありますか。

最も大切にしているのは「手を抜かないこと」です。多少手間がかかっても、きちんとしたものをお客様に提供することを常に意識しています。新しいことを積極的に取り入れるというよりも、どんな包丁を持ち込まれても対応できる技術を維持することが重要だと考えています。

技術は先代から受け継いだものを大切に守り続けています。積み上げてきたものを確実に引き継ぐことが自分の役割です。派手さよりも、目の前の仕事に丁寧に向き合うこと。その姿勢は、30年経った今も変わりません。

コミュニケーションの工夫――言葉の壁を越える取り組み

――お客様とのコミュニケーションで特に大切にしていることはありますか。

浅草という土地柄、外国からのお客様が非常に多いため、言葉の壁を越える工夫は欠かせません。そこで「ポケトーク」を活用し、英語やフランス語、ドイツ語、スペイン語など、さまざまな言語に対応できるようにしています。

外国のお客様からは、包丁の使い方や研ぎ方、お手入れの方法などについて多くの質問をいただきます。そうした問いにきちんと答えられてこそ、安心して購入していただけると考えています。言葉が通じることで信頼関係も生まれ、喜んでいただけることも多いです。単に商品を販売するのではなく、使い方まで含めて伝えることが重要だと考えています。

少人数だからこそできる役割分担とチームワーク

――社員との関係や役割分担について教えてください。

現在は4人で運営しており、それぞれの得意分野で役割を分担しています。自分はパソコンなどが得意ではないため、その部分は他のスタッフに任せています。無理にすべてを自分でやろうとするのではなく、任せることで全体がうまく回るようにしています。

広がる海外との接点とこれからの取り組み

――今後の展望や新しい取り組みについて教えてください。

ここ数年で新しく取り組んでいるのが海外発送です。以前は行っていませんでしたが、海外からの注文に応じて商品を発送するようになりました。現在は関税の関係でアメリカへの発送は難しい状況ですが、ヨーロッパなどには対応しています。

一度ご購入いただいたお客様から再注文をいただくことも多く、リピーターにつながっています。店舗での販売が中心ではありますが、このような形で海外とのつながりが広がっているのは大きな変化です。

――現在の課題についてどのようにお考えですか。

大きな課題は特に感じていません。ただし、浅草という場所柄、海外からのお客様に来ていただけるかどうかは重要です。そのためにも、単なるお土産としてではなく、「また来たい」と思っていただける仕事を続けていく必要があります。

その一環として、店内にコルクボードを設置し、ご来店いただいたお客様の写真を掲示しています。その写真をきっかけに来店される方も多く、「日本に行ったらこの店に行ってみて」と紹介を受けて訪れるお客様もいらっしゃいます。口コミや紹介を通じて新たなお客様につながっている点は、大きな特徴です。また、Googleの口コミでも170件以上すべて星5の評価をいただいています。

仕事と日常の中にある喜び

――お休みの日の過ごし方について教えてください。

特別なことはせず、しっかり休むことを大切にしています。無理にどこかへ出かけるのではなく、銭湯に行くなどして体を休めることが一番のリフレッシュです。また、孫と過ごす時間も楽しみの一つです。

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