日本の産業界の力を世界へ届ける――循環型経済時代の新たな挑戦
合同会社YEJapan 代表 山本英治氏
合同会社YEJapanは、スタートアップ支援、海外支援、そしてサーキュラーエコノミー領域の支援を軸に事業を展開しています。本記事では代表の山本英治氏に、事業の現在地からこれまでの歩み、組織づくり、そしてこれから描く未来までお話を伺いました。
循環型社会への挑戦
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
欧州を拠点に事業は三つあります。一つ目がスタートアップ支援、二つ目が海外支援、三つ目がサーキュラーエコノミーという新しい経済価値への転換を支援する事業です。スタートアップ支援と海外支援はつながっている部分も多く、日本から海外へ挑戦していく支援もあれば、海外から日本市場に入ってくる文脈での支援もあります。サーキュラーエコノミーについても、実際には欧州で議論が進んでいるため、海外支援とつながる領域として取り組んでいます。
――現在の主力事業と、今後注力していきたい領域を教えてください。
今はこれまでのキャリアを活かしてスタートアップ支援を中心に活動しています。これからは欧州でのムーブメントもあり、またグローバルで近い未来に移行していくであろうサーキュラーエコノミー支援にシフトしています。今後、より注力していきたい事業もサーキュラーエコノミーを中心にスタートアップ支援、企業や自治体の支援をしていきたいと考えています。
製造業への危機感から
――経営者になられた経緯を教えてください。
長年、キーエンスという製造業の会社で仕事をしてきた中で、日本の産業界、とくに製造業を中心とした世界でのプレゼンスの低下を、私自身強く感じてきました。約30年前、私が入社した当時は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と賞賛されてきた業界でしたが、そこから存在感が低下していくのを間近で見てきました。それを何とかしたいという思いが強くありました。前職時代から日本のプレゼンスを上げたい思いで海外に出たいという気持ちも強く、グローバルの仕事にも携わり、「グローバルアカウントマネージャー」として、日本の製造業の海外事業拡大のお手伝いをしてきました。しかしそこには個人として会社の中で出来ることにも限界がありました。そこで自分が独立し、日本の技術や日本から世界に挑戦したいスタートアップ企業を支援したいという思いに変わり、自らも海外に拠点を移して会社を立ち上げました。
――これまでのキャリアについて教えてください。
前職では入社3年目で、当時の入社3年目の最年少で営業所責任者という役職を任され、国内の複数の拠点をまとめておりました。その後は、キーエンスタイランドにて当時海外市場の拡大フェーズの中、事業立ち上げ責任者を任されて、責任者として組織づくりや採用、育成、事業計画、予実管理までASEAN諸国の市場までを幅広く担当しました。
2016年に帰国し、その後は本社販売促進部 重点顧客チームに所属し、大手グローバル企業を担当しながら、世界中の拠点や営業メンバーと連携し、顧客へのトータル提案や本社開発へのフィードバック、営業拠点の育成につながる役割を担ってきました。
――サーキュラーエコノミーに関心を持った背景についても教えてください。
製造業の現場で大量生産や生産性向上に極限まで向き合う一方で、その先にある未来に疑問を感じることがありました。大量消費や大量廃棄の問題をたどっていく中で、欧州にあるサーキュラーエコノミーという新しい概念や政策に出会い、これこそ自分のキャリアの延長線上にあるテーマであり、ライフワークとしても自身のミッションのように感じました。欧州に足を運ぶ中で循環型社会の考え方に触れ、これはぜひ日本の産業界へも取り組みたいと思うようになりました。
共創で広げる組織戦略
――現在の組織体制について教えてください。
現在二つの会社を動かしておりまして、東京を拠点とするYEJapanは従業員が二名の会社です。私自身が顧問やアドバイザーの仕事を中心に行っているため、会社としては私のワンマンオペレーションに近い形です。
二つ目の会社はオランダで設立しておりまして、こちらはサーキュラーエコノミーの欧州ハブとしての位置づけです。業務委託を含めて三名体制で、日本人二名と私で進めています。今後は、現地の欧州にて日本やアジアとの連携支援をサポートするチームや独立系コンサルタントとも連携しながら、グローバルにパートナーシップを広げていこうとしています。
そして今は三つ目として、日本の地域創生事業を行う会社を設立する計画もあります。こちらは、共同創業として今準備中のところです。欧州でのサーキュラーエコノミーの概念や事例も取り入れながら、日本発の循環型ビジネスモデルを創生する事業となります。
考え方としては、サーキュラーエコノミーでは循環型モデルを築くうえで「共創」というビジネススタイルを大事にしており、これまでのキャリアや知見を生かしながら産官学共創や国を跨いだ連携をグローバルに広げていくビジネス視点が大切となります。
産業の新たな道を拓く
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
引き続き海外進出支援を行っていきたいと思っております。スタートアップ支援もより多くの業界へ広げていきたいと思っています。その上でサーキュラーエコノミーは、大きな国家間プロジェクトであり、世界的な課題です。欧州、とくに循環型経済の先進的なオランダの現地から情報を発信し、日本との橋渡しをしていきたいと考えています。
そして私たちの次のつぎの世代へ、正しい道を作りたい、社会貢献していきたいという思いがあります。製造業、ものづくりにおいてはサーキュラーエコノミーを取り入れていくべきであり、日本発のモデルを作りたいと思っています。欧州で最先端を学んでいるのも、日本の産業界のプレゼンスをあげ、世界に発信したいという思いからです。大量生産ではなく、次世代を見据えた循環型のものづくりを、日本から世界へ届けられるような企業になりたいと考えています。
――現在の課題はどのような点にありますか。
日本のスタートアップ企業は、まず日本で実績を作り、時間をかけて組織を大きくして海外展開するという、2ステップを踏むことが多いのですが、私は最初からグローバルスタンダードで物事を進めましょうとお伝えしています。
日本は規制、言語、商習慣など世界でも非常にユニークな市場環境です。良くも悪くも海外企業が入りにくい市場と言われています。
逆にいうと、日本市場向けにビジネスモデルを設計すると海外に進出する際に大幅な設計変更が必要となり、その頃にはグローバルプレイヤーには周回遅れになっているケースが多いのです。
しかし、ジャパニーズスタンダードを作りたいという方が多く、すぐ海外へ出たい!という企業さんはあまり多くはいません。これからのビジネスモデルを考える際はぜひはじめからグローバル市場を狙い、多くの市場機会に挑戦してほしいと考えています。
あと、もうひとつの課題は同業との差別化です。私たちを選んでもらえる理由、そこの付加価値提案を追求すべきだと思っています。事業の中心であるサーキュラーエコノミーは、まだ周囲への理解や浸透が十分とは言えません。必要性や価値、事業性をどう伝えていくか、そこには大きな壁があり時間もかかると感じています。
欧州でもサーキュラーエコノミーへの移行は経済パラダイムシフトと捉えられています。
そのため、ホームページやブログ、海外のビジネスサイトでの発信に加え、欧州のイベントや会議への参加、日本での営業活動、登壇などを通じて認知を広げています。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
日本を離れて1年弱経ちますが、今は立ち上げ時期でもあり、ほとんど休んではいません。
前職時代は、家族と離れていることが多く、週末も一緒にいる時間がもてませんでした。現在は欧州スタイルでもありホームワークが中心ですので、毎日家族と会話し、一緒にご飯が食べられます。私の中ではそれが大変幸せなひと時となります。
以前は長年の趣味でもありましたが、月に2、3回はビーチに入って、海でサーフィンをしてリフレッシュをしていました。