茶文化を未来へつなぐ挑戦――WMATCHA&CO.が描く「価値の再定義」と世界への架け橋
WMATCHA&CO.合同会社 代表 竹谷 俊哉氏
日本の伝統文化である茶――その価値が揺らぎつつある現代において、生産者としての視点と社会的使命を掛け合わせ、新たな市場の創出に挑んでいるのがWMATCHA&CO.合同会社です。祖業として受け継がれてきた茶業を起点に、国内外の市場と生産者を直接つなぐ仕組みづくりを進める同社は、単なる流通の革新にとどまらず、日本茶という文化そのものの再定義を目指しています。本記事では、代表の竹谷俊哉氏に、創業の背景から経営の軸、そして未来への構想などについて伺いました。
社会性を軸にした事業づくり
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社では、日本茶の生産と流通の両方に関わりながら、海外のバイヤーと国内の生産者を直接つなぐダイレクトトレードのプラットフォームを構築し、展開を進めています。従来は仲卸や問屋を介して流通することが一般的でしたが、その中間構造を見直し、生産者が直接海外に販売できる仕組みを構築しているのが大きな特徴です。
この仕組みによって、生産者はこれまでよりも高い収益を得られる可能性があり、設備投資や品質向上に再投資できるようになります。そしてその結果、産業全体の持続性を高めることにもつながると期待できます。
また、生産者でありながらソーシャルインパクトビジネスを同時に展開している点も特徴です。多くのスタートアップがカフェや卸売を中心とするなか、当社は地方創生や生産者支援といった社会性のある領域に軸足を置いています。
単なる商品の売買ではなく、「誰がどのように作ったのか」という背景やストーリーまで含めて価値として届ける点が、他社にはない強みです。
模索の先に見つけた「使命」
――事業を立ち上げた経緯について教えてください。
事業の立ち上げには、大きく2つの背景があります。1つは、自身のルーツである茶業の存在です。祖父の代まで続いていた家業としてのお茶づくりがあり、その歴史や価値を見つめ直すことが出発点となりました。もう1つは、起業を志すなかで「衰退している産業を再生したい」と思ったことです。単なる新規事業ではなく、社会的意義のある領域で挑戦したいという考えが重なり、現在の事業へとつながっています。
――経営の道に進まれた経緯もお聞かせください。
当初から茶業に取り組むと決めていたわけではなく、起業を志したあとは海外での就業やさまざまな挑戦を重ねるなど、自身の進む道を模索する期間がありました。そのあいだは試行錯誤の連続で、決して順調とは言えない時期でもありました。
しかし、その過程で「何のために働くのか」「どのように生きたいのか」といった問いに向き合い続けた結果、最終的に現在の事業へとたどり着きました。結果として、その経験が現在の価値観や意思決定の軸になっています。
――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。
短期的な利益や金銭的な成果よりも、社会的価値を優先することです。例えば生産者の課題を解決するために設備投資や仕組みづくりを行うなど、すぐに利益につながらない取り組みも積極的に選択しています。
効率だけを追えば別の選択肢もありますが、それでは長く続く産業にはならないでしょう。長期的な視点で文化や産業を守ることが重要だと捉えています。
本音と責任が生む組織の力
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
本音でのコミュニケーションを重視しています。立場に関係なく率直に意見を交わすことで、組織全体の意思決定の質が高まると考えています。
また、最終的な責任は自分が取るという姿勢を徹底しています。成果が出なかった場合も「自身の判断や設計に原因があったのではないか」と振り返るようにしており、この姿勢が、メンバーが安心して挑戦できる環境づくりにつながっています。
――コミュニケーションで意識している点はありますか。
レスポンスの速さです。海外とのやり取りでは時差があるため、限られた時間の中で円滑にコミュニケーションを取ることが重要になります。迅速な対応が信頼関係の構築にもつながっています。
――どのような人材と働きたいと考えていますか。
純粋性とオーナーシップを持っている人です。スタートアップという環境においては、主体性が特に重要だと考えているため、スキル以上に、自分ごととして課題に向き合い、自ら動ける姿勢を重視しています。
茶文化の再定義と新たな価値創出
――現在の課題について教えてください。
日本の茶文化が衰退してしまうおそれがあることが大きな課題です。その背景には、海外資本の流入や市場構造の変化があります。
この課題に対して、当社ではダイレクトトレードのオンラインプラットフォームを構築し、中間流通を省くことで生産者に利益が還元される仕組みを整えています。これにより、持続可能な産業の実現を目指しています。
さらに、ビジネスコンテストやアワードへの参加、新聞掲載などを通じて認知拡大にも取り組んでいます。加えてオフラインでの体験提供にも力を入れており、ヘルスケアやデータ解析と組み合わせながら、日本茶の成分や特性をもとにしたレコメンド体験の開発にも取り組んでいます。
――今後の展望についてはどのように考えていますか。
日本茶を単なる商品ではなく、文化として世界に届けていきたいと考えています。その先には、お茶を芸術や新しい価値として再定義する取り組みも視野に入れています。
現在の市場では量が重視される傾向がありますが、それによって本来の品質や個性が十分に評価されていない側面があると感じています。そこで、生産者のストーリーや製品のスペックを軸にした新たな評価基準を構築し、日本茶の新しいポジショニングを確立していければと考えています。
個人を超えた使命に生きる
――リフレッシュ方法について教えてください。
温泉に行くことです。日常から離れることで思考が整理され、新しい発想が生まれることもあります。普段とは異なる環境に身を置くことが、よいリフレッシュになっています。
――最後に、経営において譲れない想いをお聞かせください。
個人の利益ではなく、より大きな使命に対して生きることです。地域や日本、さらには社会全体に価値を生み出すことを重視しています。
過去に日本代表として競技に参加した経験から、自分を超えた存在のために行動することの意義を強く実感しました。その価値観が現在の経営にもつながっています。