精神科訪問看護に特化し、地域の暮らしを支える――Smileエイドが目指す“伴走する支援”のかたち

訪問看護ステーション「Smile(スマイル)エイド」 所長 山田高弘氏

京都市を拠点に、精神科領域に特化した訪問看護を提供する「Smileエイド」。

病院やクリニックだけでは拾いきれない生活上の不安や困りごとに寄り添い、本人が地域で暮らし続けるための支援を行っている。主治医の指示のもとで医療的な支援を行いながら、対話を重ね、生活の中の小さな変化を捉え、必要に応じて家族や関係機関ともつながっていく。

その支援は、単なる“在宅医療の延長”ではない。本人のペースを大切にしながら、「その人らしい暮らし」と「自立への歩み」を支える、伴走型のメンタルヘルスケアである。今回は、Smileエイドの事業の特徴や強み、組織づくり、今後の展望について話を伺った。

精神科訪問看護に特化した事業の特徴

――現在の事業内容について教えてください。

事業の中心は訪問看護ですが、当ステーションはその中でも医療保険による精神科訪問看護に特化しています。現在お受けしているご依頼も、ほぼ精神科領域が中心です。

きっかけはさまざまで、病院やクリニックから「退院後の生活を支えてほしい」とご相談いただくこともあれば、ホームページをご覧になった本人やご家族から直接お問い合わせをいただくこともあります。実際の支援では、看護師がご自宅を訪問し、30〜40分程度の対話や観察の中で、心身の状態だけでなく、生活リズム、服薬、家族関係、社会参加の状況などを丁寧に確認していきます。

精神科訪問看護は、症状だけを見る支援ではありません。本人が日々どのような不安を抱え、どこでつまずき、何なら少し前に進めそうかを、暮らしの場で一緒に見立てていく支援だと思っています。

――他社にはない強みはどこにあるのでしょうか。

一番の強みは、メンタル面にしっかり焦点を当てながら、生活の中で継続して関われることです。診察室では緊張してうまく話せない方でも、自宅という慣れた環境の中で、決まった曜日・時間に顔を合わせる関係性ができてくると、少しずつ本音や困りごとがこぼれてきます。その小さな言葉や反応を積み重ねながら支援を組み立てられるのは、訪問看護ならではだと思います。

また、医療的な正しさだけで支えるのではなく、その方がこれまでどう生きてきたか、どんなつまずきがあったか、いま何が負担になっているのかを踏まえたうえで、「今はどんな関わり方が合っているか」を一緒に考えることを大切にしています。

精神科領域は本当に幅が広く、在宅生活の継続が難しいケースも少なくありません。それでもSmileエイドでは、比較的難しいケースも含めて、地域で支える方法を考えながら受け入れてきました。最近では、「困ったときはSmileエイドに相談してみよう」と言っていただく機会も増えてきており、少しずつ地域の中で役割を担えている実感があります。

病院では支えきれない“生活の部分”を担う

――この事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

私はもともと看護師として病院で勤務していて、特に精神科病棟での経験が長くありました。その中で強く感じたのが、病院の中だけでは支えきれない困りごとが本当にたくさんあるということでした。

診察や入院治療はもちろん重要ですが、実際に本人が苦労するのは、その先の毎日の暮らしです。通院を続けること、薬を飲み続けること、人との距離感、家の中での過ごし方、家族との関係、社会とのつながり方。そういった生活の部分にこそ、その人のしんどさが濃く表れると感じていました。

病院で経験を積んだあと、「自分の強みを活かすならどこか」と考えたとき、在宅で本人の暮らしそのものに関わる訪問看護が一番しっくりきたんです。精神科看護の経験を、生活の場で役立てたい。それが立ち上げの原点です。

――訪問看護は、医療の中でどのような役割を担っているのでしょうか。

病院やクリニックの診察時間には限りがあります。限られた時間の中で、自分の状態や悩みを整理して伝えるだけでも大きなエネルギーが必要です。特に精神科では、「うまく話せなかった」「本当は別のことを相談したかった」ということが起こりやすいと思います。

その中で訪問看護は、先生が診察室だけでは把握しきれない生活情報を受け止め、本人やご家族がこぼしきれなかった思いを拾い上げていく役割を担っています。生活の場で見えてくる変化を整理し、必要に応じて主治医や関係機関に共有することで、医療と生活をつなぐことができる。そこに大きな価値があると思っています。

もちろん、訪問看護だけで完結するものではありません。主治医の指示が前提にあり、クリニックや相談員、ヘルパー、就労支援、学校など、さまざまな支援者と連携しながら支える必要があります。その中で私たちは、生活全体を見渡しながら支援をつなぐ役割「ハブ(中継地点)」を担っているのだと思います。

役割と責任が、人と組織を育てる

――スタッフが自分の考えで動けるように、どのような工夫をされていますか。

現在は正社員12名、パート2〜3名ほどの体制ですが、私自身は「人は役割によって育つ」と考えています。責任のないところには主体性は生まれにくいので、段階を踏みながら担当を持ってもらうことを大切にしています。

最初は同行やサポートを受けながら現場を学び、その後は利用者さんの担当として看護計画を立て、主治医や関係機関と連携しながら支援を進めていく。

訪問看護は一人で完結する仕事ではなく、多職種をつなぎながら支える仕事です。その中で自然と、考える力や判断する力、動く力が育っていくと感じています。

ただし、任せることは放任とは違います。記録やチャットツールを活用しながら、状況共有や相談が日常的に行える体制を整えています。スタッフが一人で抱え込まずに済むこと、安心して主体性を発揮できることが、結果として支援の質につながると思っています。

この考え方は、利用者さんへの関わりにも通じています。私たちは何かを“してあげる”存在ではなく、あくまで伴走者です。主役は本人であり、どうすれば自分の生活を自分で引き受けていけるかを、一緒に考えていく。その距離感を大事にしています。

質を落とさず広げるための挑戦

――今後の展望や課題について教えてください。

この1年ほどで依頼は増え、スタッフも増やしてきました。一方で、人が増えるほど支援の質にばらつきが出やすくなるのも事実です。

今の大きなテーマは、「Smileエイドとして、どんな支援を大事にするのか」をどう組織全体に浸透させていくかです。

規模を大きくすること自体が目的ではありません。サービスの質を保ちながら、必要としている人にきちんと届く体制をどう作るか。

そのために教育制度や評価、フィードバックの仕組みを整えながら、組織としての土台を強くしていきたいと考えています。

――課題に対して、具体的に取り組んでいることはありますか。

一つは記録業務の効率化です。精神科訪問看護は、状態や言葉のニュアンスを丁寧に残す必要があり、記録の負担がどうしても大きくなりがちです。

だからこそ、個人情報の取り扱いに配慮したうえで、AIや音声文字化の仕組みを取り入れ、記録整理を支援しています。

これは単なる業務効率化ではなく、看護師が記録に追われすぎず、本人に向き合う時間や、振り返りに使う時間を確保するための工夫でもあります。

結果として、対応の質の振り返りや教育にもつながっており、組織全体の学びにも役立っています。

未知の疾患や複雑なケースに出会ったときも、個人の経験だけに頼らず、情報を調べ、チームで検討しながら支援を組み立てていく。

そうした積み重ねが、Smileエイドらしい実践につながっていると感じます。

家族との時間と、自分を整える習慣

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

休日は家族との時間を最優先にしていますが、自分を整える習慣として「ランニング」と「サウナ」は欠かせません。

毎朝のランニングは週4〜5回ほど続けており、年に一度はフルマラソンにも挑戦しています。黙々と走り、サウナで汗を流す。

この「無」になる時間が、経営者として、また一人の看護師として、気持ちをリセットする大切な儀式になっています。

最後に、読者に伝えたいこと

――最後に、読者に伝えたいことを教えてください。

この業界はどうしても紹介が中心になりがちですが、本当は利用者さん自身が「ここに相談したい」「ここなら話せそう」と選べることが大事だと思っています。

ただ、実際には問い合わせをするだけでも大きなエネルギーが必要です。精神的にしんどいときほど、その一歩は重い。

それでも、もし何か少しでも動いてみようと思えたなら、そのタイミングを逃さず支えられる存在でありたいと思っています。

必要としている方が、自分で選び、つながり、少しずつ自分の生活を取り戻していく。そのプロセスを、地域の中で支え続けること。

それがSmileエイドの目指している支援のかたちです。

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