ヨガを「文化」にする――Lotus8が20年かけて築いた事業と哲学

株式会社Lotus8 代表取締役社長 橋村伸也氏

株式会社Lotus8は、「心と体を整える」という理念のもと、ヨガを中心としたメディア事業とスタジオ事業を展開してきました。ヨガがまだ日本で一般的ではなかった時代から、その普及と文化としての定着に取り組み、20年以上にわたり業界を牽引してきました。現在はアパレル分野にも領域を広げています。本記事では、代表取締役社長の橋村伸也氏に、事業の特徴や強み、これまでの転機、そして今後の展望について伺いました。

ヨガを「文化」として広げるための事業展開

――現在の事業内容と特徴について教えてください。

会社の理念として「心と体を整える」という考えがあります。メディアとリアルな場の両方を通じて、知識や経験、体験を提供していくことを軸としています。そうした取り組みを通じて、人に感動を与え、ストレスを取り除いていくことを目指しています。事業は大きく二つの柱で展開しています。

一つがメディア事業です。ヨガを中心に、女性向けのスポーツ、フィットネス、食事、オーガニック、自然療法といった分野の雑誌を企画・編集・出版しています。もともと「Yogini(ヨギーニ)」というヨガ雑誌を長年制作してきましたが、出版社の事情により終了し、現在は自社で「The yogis magazine」を出版しています。加えて、「RETRIEVER」という大型犬の専門誌の編集も手がけています。この媒体は、かつて出版社に在籍していた頃に関わっていたもので、10数年ぶりに再び携わることになりました。

もう一つがヨガスタジオ事業です。日常的に通えるレッスンに加え、ワークショップやインストラクター養成も担っています。最近では、ヨガをモチーフにしたTシャツの展開も始め、第三の事業の柱へと成長しつつあります。

――他社にはない強みについて教えてください。

ヨガがまだ日本で一般的ではなく、怪しいものと見られていた時代から、その普及に取り組み、単なる流行としてではなくカルチャーとして根づかせていくことを大切にしてきました。現在では業界の中心的な立場にあり、ヨガをさらに深く定着させていく役割を担っています。

メディア事業の編集においては、目に見えないものを表現する力に大きな強みがあります。エネルギーや心、身体の内側といった不可視の領域を可視化し続けてきた専門性は、20年以上にわたり積み重ねられてきました。この分野においては国内でも突出した存在であり、世界的に見ても有数の編集力を持つ編集部だと自負しています。

ヨガスタジオ事業においては、宗教的な印象や不安を取り除きながら、本質的なヨガを安心して学べる環境を20年以上提供してきました。長年の積み重ねによって築かれたこの場は、他にはない独自性を持つ、まさにオンリーワンの存在です。

「終わらせたくない」という思いが生んだ独立

――経営者になられたきっかけを教えてください。

もともと経営者を志していたわけではありません。出版社で雑誌制作に携わる中でヨガと出会い、その可能性を感じていました。30歳を迎える頃、自分の裁量で挑戦したいという思いが強まり、仲間とともに独立しました。声をかけた立場だったこともあり、結果的に代表を務めることになりました。

背景には、自分が関わってきたジャンルをより丁寧に育て続けたいという思いがありました。会社の中では制作終了と言われれば継続できないこともありますが、終わらせたくないものを自分の意思で続けていきたい。その考えが独立につながっています。

――これまでのキャリアにおける転機について教えてください。

大きな転機の一つは、長年お世話になっていた出版社が倒れたことです。その際、自社で出版を行うという大きな決断をしました。出版事業は簡単にできるものではありませんが、過去に別の会社と共同で出版社を立ち上げ、企画・編集・出版・販売・流通まで経験していました。その事業は3年ほどで終了しましたが、その経験があったからこそ、「The yogis magazine」を自社で立ち上げる決断ができたと感じています。

また、コロナ禍で実施したクラウドファンディングも大きな転機でした。支援を得るために取り組みの意義を言葉にして伝える経験は、大きな学びとなりました。

スタジオの記念パーティーをきっかけに始まったTシャツ事業も印象的です。試験的に制作したオリジナルTシャツが想定以上の反響を得たことで本格展開に至り、長年温めていたアイデアが形になりました。弊社のマーケットの理解と分析によって、新しいものを生み出し、それが売れていくことは、自信につながり、弊社の今後の展開を考える大きな気づきとなりました。

継続することの価値と、今だからこその役割

――今後の展望や取り組みについて教えてください。

これまで積み上げてきたものや、自分たちが関わって作り上げてきた業界やヨガの世界があるので、それらを大切にしていきたいという思いがあります。雑誌媒体やスタジオも含めて、いまや特別な存在になっているからこそ、「拡大する」というよりも、事業をしっかり守っていくという感覚に近いです。

現在のヨガ業界はブームが落ち着き、本質的な価値が問われる段階にあります。丁寧に正しく伝えていくことが重要であり、ヨガが日常に浸透した今だからこそ質を高めることが自分たちの役割です。また、ヨガに関わることで楽しい、前向きになれると感じてもらえるようなシーンを、業界全体として盛り上げていきたいと思っています。

具体的な取り組みとしては、指導者向けの300時間コースの展開があります。より専門的に学びたい人に向けたもので、業界の質を高めるためにも重要な施策です。加えて、ヨガのイラストをモチーフとしたTシャツの海外展開にも挑戦していきます。言語に依存しないプロダクトとして、Tシャツはグローバルに展開しやすいと考えています。

挑戦を支える組織づくりと人材への考え方

――組織運営で意識していることを教えてください。

コロナ禍で売り上げが大きく落ちた際、スタッフとともにリブランディングに本気で取り組み、細かな打ち合わせを重ねながら人材を育ててきました。現在のスタジオの売り上げは、創業以来最も良い状態にあります。

前向きな取り組みは基本的に受け入れ、トライアンドエラーを大切にしています。自分自身が業界に長くいる分、固定観念にとらわれてしまう可能性もあるため、明らかに難しいケースを除いては判断をスタッフに委ねています。最終的な責任は自分が持つ前提で、現場の感覚や挑戦を尊重しています。

――どのような人材を求めていますか。

自分の目標をきちんと持ち、やりたいことを描いたうえで、環境をうまく活用しながら主体的に挑戦できる人を大切にしたいと考えています。また、報告・連絡・相談といった基本的なコミュニケーションができることも重視しています。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、実際にはこれができない人も多いと感じています。

固定観念にとらわれず、本質を見続ける

――影響を受けた考え方について教えてください。

創作の分野では、芸術家から大きな影響を受けています。パッションや発想、クリエイティブの技術といった表現の核となる部分だけでなく、人間としての在り方や価値に向き合う姿勢にも強く感銘を受けました。

座右の銘は、シェイクスピアの『ハムレット』に出てくる「To be or not to be」という言葉です。「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」と捉え、物事を表面だけで決めつけず、常に別の解釈や可能性を持ち続けています。その言葉は、師匠と呼べる方から教わったものであり、今も自分を支え続けている大切な言葉となっています。

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