IPコラボどら焼きで原宿から世界へ——マール株式会社が描く新たな展開
マール株式会社 代表取締役 村井 智建氏
原宿・竹下通りを拠点に、IPコラボレーションを軸としたどら焼き専門店を展開するマール株式会社。テイクアウトを中心とした独自のビジネスモデルで、多くの人に商品を届けてきました。今回、代表の村井智建氏に、事業の特徴やこれまでの経緯、経営観、そして今後の展望について伺いました。
原宿発・IPコラボどら焼きというビジネスモデル
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
マール株式会社は、原宿でどら焼き屋さんを運営している会社です。特徴としては、IPコラボレーションを非常に多く手がけている点が挙げられます。近年では「推し活」の流行もあり、コラボカフェ業態は増加していますが、多くは座席数を持つ店舗型の運営です。
一方で当社は、竹下通りという立地を活かし、テイクアウトを中心に展開しています。席数やキャパシティに縛られることなく、多くの来街者に商品を手に取ってもらえる点が大きな特徴です。流行の発信地である原宿において、より広い層にリーチできるビジネスモデルになっています。
――どら焼きとIPコラボの発想はどのように生まれたのでしょうか。
現在の店舗は約5年前にオープンし、当初はフルーツ大福なども扱う和菓子店としてスタートしました。その中でどら焼きは一商品に過ぎませんでしたが、IPとのコラボレーションを考えた際に、どら焼きの表面を“キャンバス”として捉える発想が生まれました。
キャラクターを焼き印として表現し、中身にはその世界観や好みに合わせた具材を挟むことで、商品としての完成度が高まり、非常に好評を得ました。その結果、約1年後にはどら焼きに特化する決断をし、現在は専門店として展開しています。
偶然から始まった経営の道と価値観
――経営者になられたきっかけを教えてください。
経営自体は20年ほど携わっていますが、もともと経営者を目指していたわけではありません。18歳のときに、ガイアックスという会社に入社したことがきっかけです。当時はITの知識もなく、ただ働きたいという思いで飛び込んだ会社でした。
その会社は社内ベンチャーが活発で、若いうちから事業づくりやPL・BSの管理まで任される環境でした。そこでの経験が、結果的に経営へとつながっていきました。上場のタイミングでは営業責任者を務め、その後も子会社設立や事業の独立などを経験しています。
――経営判断の軸となる価値観は何でしょうか。
基本的には「楽をしたい」という考えがあります。遊びながらでも会社が利益を出し、社員にも負荷がかからない状態が理想です。気づいたら利益が残っているような、そんな会社にしたいと思っています。
ただ現実はそう簡単ではなく、自身はかなり働いています。働くこと自体は好きなので問題はありませんが、社員には過度な負担をかけたくないという思いがあります。全体としては、楽しく、笑いながら商売ができる環境を大切にしています。
任せる経営と現場への配慮
――組織運営で大切にしていることは何ですか。
基本は「任せること」と「干渉しないこと」です。権限を委譲したら、そのまま任せる。もちろん判断に必要な情報として、会社の状況や数字は透明性を持って共有しますが、最終的な意思決定は各責任者に委ねています。
――社内コミュニケーションで意識している点を教えてください。
強く言わないことを意識しています。自分の発言は影響力が大きく、受け取り方によっては過剰に捉えられてしまう可能性があります。特にSNS時代においては、些細な言動が拡散されるリスクもあるため、慎重に対応しています。
また、原宿という場所柄、若い世代のスタッフも多く働いています。彼らの感性や価値観を尊重することも重要です。いわゆる“パワフルな経営者”のようなスタイルではなく、むしろ引きながら現場と向き合っています。
――採用や育成で重視しているポイントは何でしょうか。
面接段階では、明るさや受け答えの素直さといった基本的な部分を見ています。一方で、長期的に一緒に働く人材については、スキルよりも「伸びしろ」を重視しています。
言われたことができるようになり、次に何をするかを自発的に考えられるか。そうした日々の積み重ねの中で成長が感じられる人を評価しています。能力やスキルは後から身につくものだと考えています。
海外展開とパートナー戦略による成長
――今後の展望について教えてください。
昨年、アメリカでジョイントベンチャーを設立し、ロサンゼルスでの出店を予定しています。まずは2店舗を目標に展開し、海外では積極的に店舗数を拡大していく方針です。
一方で国内では、これまで直営中心で展開してきましたが、今後はフランチャイズ的な形での店舗展開も検討しています。また、通販事業にも力を入れていきたいと考えています。店舗に来られない全国のお客様に商品を届けることが重要だと捉えています。
――事業拡大における課題や取り組みについて教えてください。
大きな課題というよりは、パートナーとの連携が重要になります。当社はすべてを自社で完結させる考えではなく、外部と協力しながら広げていくスタイルです。
飲食は利益率が低く、品質管理も重要なため、急激な拡大はリスクが伴います。そのため、価値観を共有できるパートナーとともに、着実に広げていくことを重視しています。短期間で急成長するよりも、持続的な成長を目指しています。
影響を受けた考え方と経営観
――影響を受けた人物や出来事を教えてください。
スタジオジブリの鈴木敏夫氏のプロデュース手法には強く影響を受けています。作品づくりの裏側でどのように意思決定が行われているのか、そのプロセスが非常に興味深かったです。
また、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションからは、「体験」を伝える重要性を学びました。一方で、より共感しているのはスティーブ・バルマーのような泥臭いスタイルです。日本の環境においては、現実的で実行可能なアプローチだと感じています。
――最後に、休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
基本的には一人で静かにお酒を飲むことが多いです。大勢でにぎやかに過ごすよりも、落ち着いた時間を好みます。日常的に仕事をしている分、そうした静かな時間がリフレッシュにつながっています。