ビジュアルを整え、企業の価値を磨き続ける――アトリエ周波数が貫く“デザイン道”
アトリエ周波数 代表 藤木 亮一氏
アトリエ周波数は、Webとグラフィックの両領域を軸に、企業のデザイン制作を手がけるクリエイティブ事業者です。2005年の創業以来、Webサイト制作やグラフィックデザインを中心に、多様な案件に携わりながら企業ごとの課題に応じた表現づくりを支えてきました。近年では、UI(ユーザーインターフェース)設計や大型案件のディレクションにも領域を広げ、単なる制作にとどまらない総合的なビジュアルコンサルティングを展開しています。本記事では、代表の藤木亮一氏に、現在の取り組みや仕事に対する考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。
Webとグラフィックを両軸に、企業の課題を形にする
――現在取り組まれている事業内容について教えてください。
事業の中心は、デザイン全般です。もともと当社は、WEBとグラフィック、その両方のデザインを手がけることを軸にスタートしました。現在もそこは変わりませんが、近年では単に制作物をつくるだけでなく、案件全体のディレクションまで担うことが増えています。
大型のWeb案件では、デザインだけで完結することはほとんどありません。システム開発が必要になることもありますし、案件によっては複数の専門スタッフとの連携が欠かせません。そのため、必要な人材のアサインや進行管理、公開まで含めて、全体の進行を見ながらディレクションしています。デザイン相談として始まった案件が、最終的には案件全体の進行設計まで行うケースもあります。
また、最近特に増えているのが、WEBサイトやWEBアプリのUI設計です。最初は「デザインを整えたい」という相談でも、話を聞いていくと実際には操作性や導線設計に課題があるケースが多くあります。
画面が美しくても、使いにくければ利用者は離れてしまいます。せっかく商品やサービスに興味を持っても、途中で使いづらさを感じれば、その時点で離脱につながります。そのため、見た目だけではなく、実際に使う人の動きまで想定しながら設計することを重視しています。
――御社ならではの強みはどこにありますか。
すべてを否定してゼロから作り直すのではなく、今ある資産を活かしながら整えていく柔軟性がある点です。
当社が一番大切にしているのは、ていねいにお客様のお話しを伺うことです。今はAIをはじめ便利なツールが増え、デザイン自体も手軽につくれる時代になっていますが、それでも最終的に必要なのは、相手が本当に抱えている課題を整理し、見極めることだと思っています。
また、当社は個人事業として始めた背景があるからこそ、案件ごとに最適なチームを編成できる点も強みです。固定の組織ではなく、案件内容に応じて外部クリエイターやプログラマーと連携しながら進めるため、必要な技術を必要な形で組み合わせることが可能で、その結果、質と費用感のバランスを取りやすく、柔軟な提案が可能になります。
美大生時代から始まった“デザイン道”という考え方
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
原点は、子どもの頃から絵を描くことが好きだったことにあります。その延長で美術大学へ進み、そこで学ぶなかで、グラフィックデザインや広告に興味を持つようになりました。大学ではアドバタイジング(企業や組織がテレビやWEB、SNS、新聞などのメディアを通じて、商品やサービス、ブランドなどを広く世間に知らしめ、購買や行動を促す広告・宣伝活動)分野を学び、その流れでグラフィックデザインの仕事に入りました。
その後、インターネット時代が本格化し、仕事の中心は徐々にWEBへと広がっていきました。グラフィックだけでは対応しきれない相談が増え、自然とWEB分野に取り組むようになったんです。当時は、WEBとグラフィックの両方を担える人材はまだ多くありませんでした。その両軸を持ちながら続けてきたことが、現在のアトリエ周波数の土台になっています。
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
20年以上この仕事を続けるなかで強く感じているのは、デザインは単なる作業ではなく、“道”だということです。デザインには職人的な側面があり、技術だけではなく、感覚や経験、積み重ねが必要です。これは、一朝一夕で身につくものではありません。
AIが進化し、効率化できることは増えていますが、「何を残し、何を変えるべきか」「その企業らしさをどう表現するか」といった判断は、まだ人の感覚が必要です。便利なツールが増えれば増えるほど、最後に人が判断する価値はむしろ高まるのではないかと思っています。
だからこそ、自分の仕事は単にデザインを納品することではなく、“人に相談したくなる存在であること”だと考えています。依頼されたものを形にするだけではなく、その背景にある課題を理解し、一緒に考えながら最適な形を探る――それが、自分の役割だと思っています。
信頼を支えるコミュニケーションとチームづくり
――組織運営や連携で意識していることはありますか。
現在は、長年協力してくれているリモートスタッフ1名のほか、案件ごとに外部のクリエイターやプログラマーと連携しながら仕事を進めています。そのなかで特に意識しているのは、「文章化」と「スピード感」です。
必要以上に長い打ち合わせを増やすのではなく、案件内容はできるだけ端的に整理し、明確に伝えるようにしています。チャットツールなどを活用し、必要な情報を簡潔に共有することで、認識のズレを防いでいますが、そのうえでは、あいまいな表現は後々の誤解につながります。だからこそ、伝わる形に整理することを大切にしているのです。
――この事業を長く続けてこられた理由は何でしょうか。
ありがたいことに、多くの仕事が過去につくったものから次の紹介へとつながってきました。一つひとつていねいに向き合ってきた結果、ご縁が積み重なり、今があります。
また、優秀な人ほどレスポンスが早く、判断も明快です。そうした方々と仕事をするなかで学んだ姿勢を、自分の仕事にも取り入れてきました。遠隔でも良好なチームワークを築くには、感覚ではなく、言葉で共有することが不可欠だと感じています。
企業全体を支える「ビジュアルディレクション」への挑戦
――現在向き合っている課題はありますか。
これまで多くの仕事は紹介やご縁でつながってきたため、新規営業を本格的に行ってきた経験は多くありません。営業はもともと得意分野ではありませんが、今の時代は待っているだけでは届かない部分もあります。そのなかで今考えているのは、SNSの活用です。これまでは趣味的に使っていた面もありますが、今後は仕事として、自分たちの取り組みや考え方を発信していきたいと思っています。
――今後取り組みたい挑戦を教えてください。
今後さらに力を入れていきたいのは、企業全体のビジュアルディレクションです。これまでは単発案件も多くありましたが、今後は会社の印象を形づくる業務全般――ロゴなどを起点に、WEBサイトや会社案内、各種制作物までを一貫して整えるような大きなプロジェクトを増やしていきたいと考えています。