社会課題を新規事業で解く。「共創」で挑む、事業創出の新しいかたち
+81株式会社 代表取締役 鈴木 貴人 氏
社会課題や産業課題を、新規事業の創出によって解決していく。そうした考えのもと、事業を生み続ける仕組みづくりに取り組んでいる鈴木氏。資金を投じるだけではなく、人を迎え入れ、事業計画を一緒に立て、採用や経営、組織づくりまで伴走する。その姿勢を「事業共創」と表現し、独自の立ち位置を築いています。今回は、会社の理念や特徴、大切にしている価値観、今後の展望について伺いました。
目次
社会課題を解くために、新規事業を生み続ける会社でありたい
――まず、会社の理念や現在の事業について教えてください。
社会課題や産業課題を解く新規事業を創出し、それを通じて世の中に価値を返していくことを目的にしています。世の中は良くなってきている一方で、まだ解決されていない課題が数多く残っています。
産業が成熟した今だからこそ、個別の課題に向き合い、変革を起こしていくことが重要だと考えています。その一つの形が、新規事業の創出です。
私たちが目指しているのは、単発で事業をつくることではありません。新規事業を創出し続けること自体を事業の目的にしています。事業を生み続ける仕組み、いわばエコシステムをどうつくるかを重視しており、そのための器や環境を整えることが大切だと考えています。
現在は、ソフトウェア事業を一つの基盤としながら、学童事業や、シニア向けの家賃保証事業、訪日前の海外旅行客が日本の美容室を予約しやすくするためのサービスなど、多様なテーマに取り組んでいます。
分野はさまざまですが、共通しているのは、事業オーナーが当事者として課題を捉え、それを形にしようとしていることです。
――他社にはない強みはどこにあるのでしょうか。
大きな特徴は、資金を出すだけで終わらないことです。一般的なベンチャーキャピタルとの違いとして、私たちは事業に「人」としても入ります。社員として入ってきてもらった事業オーナーと一緒に事業計画を立て、一緒に経営をし、一緒に採用をし、一緒に組織をつくっていきます。私たちはこれを「事業共創」と呼んでいます。
また、会社として大切にしている考え方の一つに、「1 + 1は 、2 じゃないかもしれない。」という言葉があります。常識を否定したいわけではありませんが、人とは違う視点で課題を捉えられる人こそ、新しい事業を生み出せると考えています。
何か問題があると感じるその感覚自体が、事業の出発点になるからです。そうした感覚を持つ人が集まり、挑戦しやすい環境をつくることも、私たちの強みだと思っています。
経営者を目指したというより、やりたいことを形にした先に今がありました
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
経営者になりたいという思いが先にあったというよりは、社会課題や産業課題を新規事業で解きたいという思いが先にありました。もともとは金融業界にいたのですが、そのときに、自分が本当にお客さまの役に立てているのかという違和感がありました。
産業の育成や企業の成長に貢献したいと思って入った一方で、実際にはそう感じられない場面もありました。そこから、やはり役に立つことをやりたいという思いが強くなって、事業会社に移り、今の取り組みにつながっています。
もちろん、経営という立場への憧れがまったくなかったわけではありません。MBAを取得したり、中小企業診断士の資格を取ったりもしています。ただ、それは経営者になるためだけに積み重ねてきたというより、やりたいことを実現するために必要なことを学んできた結果だと思っています。
――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。
本当に課題を解決しているのかという一点に尽きると思っています。本人がやりたいと思っていることかどうかも大事です。誰かに言われたからではなく、当事者として自分がやりたいと思えていること。それが出発点になっているかは、とても重視しています。
ただ、そのうえで、その事業やサービスが本当に課題に向き合っているのかを見失わないようにしなければならないと思っています。私は金融業界の経験もあり、新しいことに挑戦するときのリスクや、マイナス面で何が起こり得るかも考えます。
だからこそ、ただ挑戦を後押しするだけではなく、踏み込みすぎる前に止めることや、方向を修正することも必要だと考えています。その判断の基準になるのが、課題に向き合った事業になっているかどうかです。
人を主役に据えるからこそ、言いすぎないコミュニケーションを大切にする
――組織運営や社内コミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
私たちの会社は、新規事業を創出する会社です。つまり、事業オーナーが新しい事業を考え、立ち上げていくことそのものが中心にあります。だからこそ、最も大切なのは人です。事業オーナーとして動く人たちが、主役です。
その前提があるので、コミュニケーションでは「こうしなさい」と言いすぎないことを意識しています。もちろん、本当に止めなければいけない場面では責任を持って言いますが、基本的には、自分に火をつけて自分で動かしていく状態を大切にしたいと考えています。
肩書がある立場の人間が話すと、それだけで相手が無意識に汲み取ろうとしてしまうことがあります。そうならないように、かなり気をつけています。
また、バリューとして定めている、「冒険心と誠実さで社会と向き合いながら、持続可能な未来を築く」という考え方を大切にしています。挑戦することと、誠実であること。その両方があって初めて、誰かの役に立つ事業や組織になるのだと思います。
守りに入らず、バッターボックスに立ち続ける
――今後の展望や、これから挑戦していきたいことを教えてください。
目標として掲げているのは、2033年までに30の事業会社と500億円規模の事業群を創出することです。グループ全体としても大きな目標がありますが、その中で自分たちは半分を担うくらいのインパクトを出したいと考えています。
根拠がきれいにそろっていたわけではありませんが、それくらいの挑戦をしなければ意味がないと思ってきました。今後も、どんどん新しい会社を立ち上げ、挑戦を重ねていきたいです。
新規事業は、既に正解があるものをなぞる仕事ではありません。みんながまだ気づいていないことに挑む営みです。だからこそ、決まった型はありませんし、挑戦し続けること自体に価値があります。
新しいことを学び、表現の幅を広げる時間が、次の挑戦につながる
――仕事以外で続けていることや、リフレッシュ方法について教えてください。
土日はほぼテニスをしています。大学時代もテニスをしていて、最近もクラブやレッスンに通い、シングルスの試合にも出ています。区の大会で優勝したこともあり、かなりしっかり取り組んでいます。
もう一つ、最近は週に一回ほど油絵も描いています。もともと新しいことを学ぶのが好きで、以前にはプログラミング教室で140時間のチャレンジをしたこともありました。表現の方法は、パワーポイントで説明することだけではないと思っています。
あとは、小説や哲学など、さまざまなジャンルの本を読むのも好きです。面白いと思うことに触れ続けること、その気持ちを大事にすることが、自分にとっては次の挑戦につながっているのだと思います。