本心と信頼を軸に築く「両想いビジネス」――お客様も自分も犠牲にしない経営のあり方
両想いビジネス研究所 所長 松山 智弘氏
マーケティングと聞くと、「売るための技術」というイメージを持つ人も少なくありません。しかし、両想いビジネス研究所の松山智弘氏が目指しているのは、売り込むことではなく、信頼によって自然と選ばれる状態をつくることです。今回は、創業の背景や理念、経営に対する考え方、今後の展望について伺いました。
独立後の挫折が生んだ「両想いビジネス」という考え方
――御社の立ち上げに至った経緯を教えてください。
もともとは個人事業主として、Webマーケティングのコンサルタントをしていました。独立当初はお客様もおらず、売上もゼロ。新規集客の見込みもない状態からのスタートでした。
まずは生活を成り立たせるために、売上をつくることばかりを考えていました。収入は順調に増えた一方で、「本当にお客様に貢献できているのだろうか」という疑問が常にありました。振り返ると、お客様を犠牲にして自分の収入を確保していたような状態だったと思います。
さらに、売上至上主義はお客様だけでなく、自分自身も犠牲にしてしまう考え方でした。本来やりたかったことや自分の本心を置き去りにして、ただ収入だけを追い続けていたんです。
そんな状態が続いたある時、原因不明の高熱が3カ月ほど続き、入院も経験しました。仕事ができなくなり、売上はゼロに。その時に初めて、「自分は本当は何のためにこの仕事をしているのか」「お客様にどうなってほしいのか」を真剣に考えるようになりました。
そこでたどり着いたのが、自分自身の本心を大切にしながら、お客様も犠牲にしない経営です。自分とも両想い、お客様とも両想い。そして社会にも貢献できる。そんな関係性の中でこそ、利益は自然とついてくるのではないかと考えるようになりました。その想いを形にしたのが「両想いビジネス研究所」です。
――事業の特徴や他社にはない強みを教えてください。
当社はマーケティングコンサルティングを行っていますが、一般的な「売るための技術」としてマーケティングを捉えていません。私たちはマーケティングを「選ばれる技術」「信頼される技術」と定義しています。
無理に売り込むのではなく、「この会社の商品を買いたい」と自然に思っていただける状態をどうつくるか。そのための支援を行っています。
お客様に喜んでいただくだけでなく、自社も適正な利益を確保することが大切です。誰かが犠牲になるビジネスではなく、双方が幸せになれる仕組みづくりを重視しています。
その考え方に合わないマーケティング手法は取り入れませんし、それを求めていないお客様とは最初からご縁がないと考えています。
信頼を基盤にした経営理念と判断軸
――理念やビジョンに込めた想いをお聞かせください。
「両想いビジネス」という言葉には、単なる相思相愛ではなく、信頼関係を基盤にした経営を実現したいという想いを込めています。
自分自身を信頼し、自社を信頼する。そしてお客様を信頼する。お客様もまた、自分自身や私たちを信頼している。
そうした相互の信頼関係の中で双方が幸せになり、その結果として社会もより良くなっていく。そんな状態を目指しています。
――経営判断の軸となっている価値観を教えてください。
私が最も重視しているのは「実行可能性」です。どれだけ素晴らしい戦略でも、実際に行動へ移せなければ意味がありません。机上の空論ではなく、現実に実行できるかどうかを常に考えています。
自社でもお客様への支援でも同じです。当社はマーケティング戦略全体の設計や改善、Web集客支援、リピートや紹介の仕組みづくりなどを得意としています。一方で、SNSでバズを狙うような施策は実体験が少ないため、得意分野とは言えません。
だからこそ、十分な価値を提供できない仕事はお引き受けしません。たとえ得意分野であっても、人員や時間などの制約によって実行できないこともあります。その場合は無理に進めるのではなく、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えるようにしています。
実行可能性がなければ何も始まりません。そこが私の経営判断の中心にあります。
任せる経営が人を育てる
――社員とのコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
一番大切にしているのは「任せること」です。トップダウンで指示を出せば組織は動かしやすくなります。しかし、それでは社員が「言われたからやる」という状態になってしまい、「両想いビジネス」の考え方が浸透しにくいと感じています。
当社には「両想いビジネス」の考え方をまとめた軸があります。その価値観を共有した上で、「どうすれば良いと思うか」をまず本人に考えてもらうんです。
もちろん結果に対してフィードバックは行います。ただし、頭ごなしに否定するのではなく、「どう修正すれば実行できるか」を一緒に考えます。任せることは不安もありますが、それも社員への信頼だと思っています。
――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
チャレンジ精神を持った人は素晴らしいと思います。ただ、それ以上に大切なのは現実をしっかり見る姿勢です。
夢や理想を持つことは大切ですが、現状を正しく把握できなければ前へ進むことはできません。数字などの客観的な事実を見ることも重要ですし、感覚的な部分から現状を捉えることも必要です。
今の自分、今の会社、お客様の状況を見つめながら、自分の想いと照らし合わせて実行可能な形に落とし込む。その姿勢を持てる人と一緒に働きたいですね。
日本発の「両想いビジネス」を世界へ
――今後取り組みたい挑戦について教えてください。
現在は国内事業者向けの支援が中心ですが、今後は日本企業が実践している「両想いビジネス」の事例を海外へ発信していきたいと考えています。
日本企業の事例を見ていると、意識しているかどうかは別として、お客様も自社も大切にする素晴らしい取り組みが本当にたくさんあります。
そうした事例を、自社やクライアント企業だけでなく、広く日本企業全体から集めて発信するメディアをつくりたいんです。
まずはYouTubeショートなどを活用しながら、「日本の両想いビジネス」に特化したマーケティングメディアとして発信していく構想があります。海外の企業にも「両想いビジネスって良い考え方だね」と感じてもらえるような活動につなげていきたいですね。
本心に向き合うための時間を大切にする
――休日のリフレッシュ方法を教えてください。
私は一人の時間がとても好きなんです。仕事ではどうしてもお客様や周囲の人のことを考える時間が多くなります。そのため休日は、できるだけ自分自身の心に集中する時間をつくるようにしています。
最近はボクシングジムに通っています。ミット打ちやサンドバッグに集中していると、自分だけの時間に没頭できるので良いリフレッシュになります。
一人カラオケもよく行きますし、おしゃれなカフェや飲食店でゆっくり過ごすのも好きです。お店の雰囲気や料理へのこだわりを感じながら過ごしていると、新しい発想が浮かぶこともあります。温泉施設へ一人で行くこともありますね。
そうした時間を通して、自分の本心と向き合いながら、これからも「両想いビジネス」の考え方を大切にしていきたいと思っています。