“人の時間”を生み出す専属ドライバーサービス――The Moving Roomが貫く「人に向かう」経営
株式会社The Moving Room 代表取締役 中静 淳氏
専属ドライバー派遣を通じて、経営者の移動時間を“価値ある時間”へと変える株式会社The Moving Room。単なる送迎にとどまらず、秘書業務まで含めたサポート体制を強みに、経営層の生産性向上に向き合っています。その背景には、「時間を拡張し、人生に余白を生む。」という中静氏の明確な価値観がありました。本記事では、創業の背景や経営における考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。
経営者の時間を支える専属ドライバー事業
――現在の事業内容や特徴、他社にはない強みについて教えてください。
当社では、専属ドライバーとして経営者様の送迎を行っています。しかし、ただ運転をするだけではなく、秘書業務まで含めてサポートしている点が特徴です。
具体的には、日々の雑務や書類管理など、いわゆる秘書業務もまるっと対応しています。単純に目的地までお送りするだけではなく、お客様が本来集中すべきことに時間を使えるよう支えることを大切にしています。
専属ドライバーとして常に近い距離で関わるからこそ、細かな部分まで柔軟に対応できる。この点が、当社ならではの強みだと考えています。
――会社として大切にしている理念やビジョンを教えてください。
「余白をつくる。」という価値観を大切にしています。
また、ビジョンとして「時間を拡張し、人生に余白を生む。」を掲げています。移動は本来、失われる時間と考えられがち。でも私たちは、運転も雑務もすべて引き受け、その時間を余白に変える。つくるのは移動手段ではなく、「余白という時間」です。その余白とは、何もしない時間ではなく、思考し、休み、自分を取り戻すための時間なんです。
つまり、経営者の時間的な余白、そして空間的な余白を生み出すことが、私たちの仕事です。
ただ、大切なのはそれだけではありません。同時に、私たちと一緒に働くメンバーに対しても、貢献することが重要であると考えています。単に専属ドライバーとして働いていただくだけではなく、将来のキャリアも見据えながら関わっていきたい。この仕事を通じて、選択肢が広がり、可能性が広がっていく。そういった環境をつくっていくことが大事だと思っています。
機会格差への問題意識から始まった起業
――起業に至った背景や経緯を教えてください。
もともとは専属運転手として修行しており、その経験を経て独立しました。
ただ、起業を考えるようになった一番の原点は、「機会格差を是正したい」という思いでした。大学時代、母子家庭で自分で学費を払うために日夜働いていた子と付き合ってたんです。あるときその彼女からこんなことを言われたんです。「経営者になりたいな、こういう場所住んでみたいなって数年後の未来を話しているの凄い。私は、半年後を考えるだけで精一杯だな。」と。
聞くことしかできない自分が本当に悔しかった。同じ大学生でも、自分は好きなことに挑戦できていた。その一方で、彼女は学費を稼ぐために働かなければならない。その違いを目の当たりにした時に、環境によって選択肢が制限されている現実に強い悔しさを感じました。
そんな中で、前澤さんが母子家庭に給付を行っている活動を知りました。その活動を見たとき、「まずは自分も富を獲得し、その後に分配することができれば、対処療法的ではあるが、何か貢献できるのではないか。」と考えたんです。それが起業を決断したきっかけでした。
――経営判断をする上で、大切にしている価値観は何でしょうか?
「人に向かう」と「事に向かう」という2つを大切にしています。
何か問題や課題が起きた時、本当に向き合うべきことは何なのかを考えるようにしています。同時に、目の前の相手と誠実に向き合うことも欠かせません。
この2つを徹底できるかどうかが、経営の意思決定において非常に重要だと感じています。
“人に向かう”ことを軸にした組織づくり
――社内コミュニケーションで意識していることを教えてください。
「人に向き合う」ということは、社内コミュニケーションの中で特に大切にしています。
例えば、何か課題が発生した時も、その場の結果だけで判断するのではなく、「その人が今後キャリアを歩んでいく上で、本当に最適な行動は何なのか」という視点で向き合うようにしています。
当社では、入社時に必ず数年後のキャリアを共に描いてから業務に入っていただいているんです。だからこそ、チーム内でのコミュニケーションや、クライアント対応の中で生まれた悩みについて相談を受けた際も、「数年後の目標から逆算した時に、今やるべき最適な選択は何だろうか」ということを一緒に考えるようにしています。
――どのような方と一緒に働きたいと考えていますか?
まずは、運転や車が好きな方ですね。職業柄、そこに楽しさや魅力を感じられることは、とても大事だと思っています。
加えて、ホスピタリティの業界で挑戦してみたい方。そして、起業家を志している方ともぜひ一緒に働きたいです。私自身、専属ドライバーとして経営者の近くで学ばせていただいた経験が、今の起業につながっています。
だからこそ、これから何かに挑戦したい方や、自分の目標に向かって進んでいきたい方には貢献したいという思いがあります。この2つに当てはまる方には、ぜひ来ていただきたいですね。
――今後の組織づくりにおける課題について教えてください。
採用戦略がガラリと変わるのが、やっぱり課題ですね。
これまでは『既に社会人スキルを持っている』『キャリアがある』という条件の方々が仲間になってくださいました。そのため、結果的に『育てやすい人材』が自動選別されていたんだと思うんです。
でも新卒は違う。素養が良くても、ゼロから教える必要がある。特に我々のサービスは『経営者の無言の要望を先読みする』『状態を瞬時に判断する』という、非言語的な部分を理解することが大事なんです。
ということは『組織として育てる仕組み』が必須になってくる。属人化を避けられない段階に入るということなんですよ。
ただし、これは課題であると同時に、『組織としての理念と方法論を言語化するチャンス』でもあるんです。そのプロセスを通じて、初めて「なぜそれをするのか」という問いが組織全体に浸透していく。新卒採用は、本来そういう局面だと思っています。
顧客満足に向き合い続ける今後の展望
――今後取り組みたいことや展望について教えてください。
私はもともと地味な性格なので、大きく何かを打ち出すというよりも、まずは目の前のお客様にしっかり向き合いたいと考えています。
その前提として、「時間を拡張し、人生に余白を生む。」というビジョンは今後も変わりません。その上で、顧客満足度を徹底的に高めていくことに集中したいですね。
一人ひとりのお客様に対して丁寧に向き合い、必要とされ続ける存在でありたいと思っています。
起業家から受け継いだ価値観
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
「サウナ、ランニング、ポーカーの3つが好きです。」っていつもは答えています。でも一番は、中華屋で餃子と共にビールを流し込むのが最高のリフレッシュになっているかも。
――尊敬している人物や、影響を受けた考え方などはありますか?
まず、裙本理人さんは、私の中で最もリスペクトしている存在です。もともと専属ドライバーとして付かせていただいていた社長なんです。知識や立場が全く違うにも関わらず、常に主語を揃えて会話してくださる方なんです。
「ゼロベース」という言葉をよく使われていて、立場を同じにして対話してくださる姿勢に、今でも強く感銘を受けています。人の可能性を最大化する上で、とても重要な考え方だと感じていますね。
もう一人は、南場智子さんです。「ことに向かう」という姿勢に大きな影響を受けました。
さまざまな事象に触れていく中で、何に焦点を合わせるべきか迷うこともあると思うんです。ただ、そこで考えることをやめず、何に集中すべきなのかを徹底的に考え抜く。その姿勢はいまでも自分の中に深く残っています。